今井寿&藤井麻輝、
星野英彦ら参加の
『DANCE 2 NOISE 001』
当時のニューカマー、
M-AGE、Paint in watercolourも収録

“日本初のシューゲイザーバンド”が
復活!

SCHAFTやHAMLET MACHINE辺りは参加メンバーが超有名だし、M-AGEやBRAIN DRIVEらも当時結構注目されていたので、その詳細をあまり調べる必要もなかったのだけれど、その他のバンド、ユニットに関してはWikipedia先生に頼るだけでは収録アーティストのプロフィールが簡単に判明せず、正直言って原稿作成には難儀した。よくよく調べてみると、活動休止を余儀なくされた人たちも結構いたようだし、その後の動きがよく分からないアーティストも少なくない。31年も前の作品である。それも止む無し…というか、当然とも言える。歳月をしみじみと噛みしめたところではある。そんな中にあって、2021年のM-AGEの再結成は明るい話題であったとは言えるだろう。M-AGEに関しては、彼らのデビューアルバム『MUSTARD』を2021年2月の当コーナーで取り上げており、そこでも少し『DANCE 2 NOISE 001』について触れているので、そちらもご参照いただければ幸いに思う。また、再結成後のインタビューも1990年代のシーンを偲ばせる内容でもあるので、こちらもぜひ。
■『MUSTARD』('92)/M-AGE
https://okmusic.jp/news/413260/
■M-AGE インタビュー
https://okmusic.jp/news/413204/
吉報(?)をもうひとつ。本作参加のPaint in watercolourも1993年の2ndアルバム『VELOCITY』リリースを境に音沙汰がなく、傍目にも活動を休止していたと考えられていたと思うが、彼らもまた活動を再開したようだ。2019年に自身のYoutubeチャンネルを開設。かつてのライヴ映像などをアップし、今年2022年には同チャンネルで新曲を2曲発表している。今回、縁あって新潟市内某所においてメンバーのひとり、関口賢一(Gu)に話を訊くことができた。

再結成の経緯をストレートに尋ねると、“単純に面白いなと思って”との返答。“自分もそろそろ還暦。還暦のシューゲイザーって面白いでしょ?(笑) そういうことですよ”と笑う。関口、布川正人(Vo&Gu)のオリジナルの面子に、3人の新規メンバーを加えた布陣でのリスタートである。“(新メンバーは)3人とも、自分の息子みたいな年齢でね。時に親子喧嘩しながら作ってる(笑)”という。

音楽ファンの一部でPaint in watercolour が“日本初のシューゲイザーバンド”と評価されていることについて訊くと、“当時はシューゲイザーなんて言葉はなくて、My Bloody Valentineとかもほんの一部の間で流行ってただけで、そんなにメジャーではなかった。“ゴミみたいなロック”って言われることもあったと思うよ”と振り返りつつ、“オンタイムでそんなレコードを買ってすぐにそれを真似してたんだから、当然そうなる(=サウンドがシューゲイザーになる)よね”と自己分析する。音楽の取り込み方、その構造は“渋谷系”に近いものであったようだ。“輸入盤で知った当時のロックの旬をそのままやっていただけ。音楽に敏感な若者たちがやっていたのが渋谷系だとすると、その意味では同じだよね。自分たちも(Paint in watercolourを結成する)直前までは東京にいて、CISCO(※註:レコード店)とか頻繁に行ってたしね”と続けた。

My Bloody Valentineのヒットアルバムで“シューゲイザーの金字塔的作品”と言われる『Loveless』が日本でチャートインしたのが1992年5月。Paint in watercolourのメジャーデビューは同年6月である。彼らが“早すぎたバンド”と指摘されることも分からなくもない。下北沢辺りのライヴハウスを中心に日本のシューゲイザーシーンが形成されたのが1990年代半ば頃と見る向きもあるが、それよりも数年早いデビューであった。関口も“自分でも(日本でシューゲイザーをやったのは)だいぶ早かったと思うし、早すぎたとも思うよ。でも、そこを(もう少しあとから…と)調整するのは無理。とにかく早く早く…だから(笑)。人生に2度目があっても同じことをやっていると思う。元来、天邪鬼だからね(笑)”と振り返る。

また、こんな思い出話もしてくれた。“俺ら、M-AGEとBRAIN DRIVEと同じレーベルだったんで、一緒にイベントもやったよ。渋谷公会堂だったかな。でも、俺たちには違和感があったし、実際すごく浮いてたと思う。普段着でやってたしね。“何でここに入れられてんだろう?”みたいな感じだった。もしかすると、M-AGEみたいなルックスだったら、もうちょっと売れてたかもね(笑)”。その発言からも彼が天邪鬼マインドの持ち主であることが分かる。

『DANCE 2 NOISE 001』収録曲「heaven」についても、今聴いてもポップな印象であることを告げると、“うん、ポップですよね。でも、当時のポップさとも今のポップさとも違う”と語ってくれたのも印象的であった。実際に改めて音源を聴いてもらうと、“(「heaven」は)もうちょっといい音で録れてれば…とは思うよね。新潟で録ったやつを東京でマスタリングしたんだけど、東京で録れてれば…ね。そこがちょっと恥ずかしい。カッコ良いだけど、もう少しやりようがあった。今思うと、もったいなかったよね”と少し残念がっていたが、今回の再結成によって、“還暦のシューゲイザー”から1990年代以上に満足度の高い作品が創り出されることを、当コラムとしてもお祈りする。(ご多忙のところ、取材に応えていただき、ありがとうございました)
前述したPaint in watercolourのYouTubeチャンネルは以下の通り。当時のリスナーはもちろんのこと、このコラムで少しでも興味を持った方はぜひ覗いてみてほしい。

■Paint in watercolour オフィシャルYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC8L3fekPn5kWHcDn9-KSywA/videos

TEXT:帆苅智之

アルバム『DANCE 2 NOISE 001』/V.A.1991年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. Jarring Voice
    • 2. CALL ME
    • 3. Think Of Making Love
    • 4. Domingo Express
    • 5.讃美歌
    • 6. Planet!!
    • 7. Flame Of Illusion
    • 8.びっくり
    • 9. Little Bit Cool
    • 10. heaven
    • 11. MACRO-MUTOS
    • 12. VIOLATOR(MAZZ+PMX)
    • 13. VISION OF LOVE
    • 14. nicht-title

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