草彅剛&香取慎吾にインタビュー! 
三谷幸喜書き下ろしの二人芝居『bur
st!~危険なふたり~』が7年ぶりに
上演へ

作・演出 三谷幸喜、出演 草彅剛香取慎吾の3人による競演が実現した奇跡の舞台『burst!~危険なふたり~』が2022年10月1日(土)~26日(水)日本青年館ホールにて再演される。
7年ぶりの再演となる今回、どんな進化を見せてくれるのだろう。開幕を前に、草彅と香取の両名が取材会に出席して思いを語った。
草彅剛「二人の歴史が詰まった、特別な作品」
ーーお稽古が進んでいます。『brust!』の感覚は取り戻してきましたか? 7年分大人になった『brust!』は前回とどのような点で異なる仕上がりになりそうですか?
草彅剛(以下、草彅):やっぱり時間も経っているし、同じようにやっても同じようにならない。前回やった感覚も思い出してくる部分もあるし、もう全く忘れてしまって、毎日「あれどうだったっけな?」とまた新しく作り上げてるところもあるので。僕、今までの舞台の再演の経験でも思うんですけど、面白いことに、再演があって完成するところがあるんですよね。今回もそんな感じがしてます。
よりバージョンアップというかね。2人芝居なので、ちょっとした間やテンポで毎日芝居変わってくる。毎日楽しく、手応えを感じながらやっている感じですかね。
香取慎吾(以下、香取):僕は再演の経験や舞台の経験がつよぽん(※草彅の愛称)よりは少ないんですけど。今回僕もみんなさんもびっくりしているのは、映像とか何も残っていないこと。本当にみんなの記憶だけで、なんとかやっている。こんなこと、なかなかないんでしょ?
草彅:そうだね。
香取:唯一あったのが、音声さんが何かの記録で撮っておいた音声データ。でもそれでは、動きは分からない。三谷さんも含めて、実際にやってみて、思い出して、思い出したことにびっくりして、みんなで拍手したりしながらやっています(笑)。面白いです、楽しく進んでます。
ーー改めて、最初に再演の話を聞いたときにどう思いましたか?
草彅:ナチュラルな感じ。やるんだね、みたいな。
香取:つよぽんは、ずっと言い続けてたもんね。
草彅:そうなんですよ。僕は、自分がやったドラマも映画も、台本って終わったらすぐ処分しちゃうんですよ。連続ドラマとかかさ張るじゃないですか。ありがとうと思いながら、すぐに台本を処分するんですけど、この『brust!』の台本だけとっていたの! なんか捨てられなくて。そういうことは珍しく。僕が台本をとっていたから再演になったんじゃないかなと思って(笑)。
もともと慎吾ちゃんとラジオをやっていて、そのフリートークで、舞台で二人芝居をやりたいよねと話していた。それが三谷さんのお耳に入って、本を書いてくれた。そんなこともあって特別な作品なんです。(慎吾とは)小さい時からいて、いろいろカメラ回っていないところでコントみたいなことをしながら、妄想を働かせて2人で遊んだりもしてきて。2人の要素や歴史が詰まっているような作品で、再再演もあるんじゃないかな。
香取:気が早いよ(笑)。つよぽんはずっと「いつかやりたい」と言い続けていて。じわじわ再演への動きはあったけど、決定打は、コロナ禍が始まって、三谷さんが「2人芝居なのに顔を合わせるシーンがない珍しい作品で、ソーシャルディスタンスな舞台だ」と言い始めたことだと思います。
ーー再演にあたって、三谷さんからは具体的にはどのようなオーダーやお話があるのでしょうか?
草彅:僕は、とにかくこの脚本がもうすごく好き。三谷さんの作品を全部見ているわけではないんですけど、僕は三谷さんの作品が好きなので、結構たくさん見ています。『笑いの大学』もそうですけど、密室劇が三谷さんならではの部分かなと思っていて。稽古場では、セリフのテンポやトーンを細かく「こうしてくれ」と言われますね。三谷さんもより良い方向を探しているし、全く自分が考えていないことを時々おっしゃるので、いつも発見がありますね。
草彅剛(右)
香取:自分たちでもやりながらなんとなく感じてたところで、三谷さんも言ってくれたんですけど、前回よりも少し大人に作っています。走り抜ける作品で、セリフを食ってくって、どんどん休む間もない作品だったんですけど、その根幹は変わらないんだけど、どこか7年経っての落ち着きというか、じっくりもうちょっとよく噛み締めて、この本を演じてみたらどうなのか。そんな感じに今、作っていってますね。
ーー稽古で印象に残っていることはありますか?
草彅:本当にこの舞台って、ネタバレになっちゃうから、内容はあんまり言わないんだけど……すごく特殊な舞台。三谷さん、いつそういうことを考えたのかな? と思います。それから、2人芝居ってありそうでなくて、僕もそんなに経験がなくて。慎吾ちゃんとだからできるし、この2人だからこそできるような設定だなと思うところがあって。ならではの作品だなと思っております。
香取:この舞台をもう一度やろうのきっかけは先ほども話しましたが、つよぽんはずっと「いつかまたやりたい」と言っていて。コロナ禍になってから、三谷さんが「この作品ほどソーシャルディスタンスな作品はないんじゃないか」と。2人芝居なのに2人なかなか顔を合わせる時間がない、変わった作品なので、そういう意味でも、まさに今なんじゃないかとやることにもなったんです。
稽古で一緒にいるんですけど、顔を合わせる時間がほとんどない。セリフも交わしてるのに、顔はほぼ見ない。改めて変わった作品で、楽しいですよね。家でセリフを思い起こすときにも、つよぽんの顔は見えないけど、声だけが聞こえてきてるみたいな感覚。そこが面白いなと思いながらやっています。
1日20ページも進む“めちゃくちゃ順調”な稽古
ーー7年前と比べて2人もいろいろ経験されて、いろいろ進化されていると思うんですが、稽古の中でお互いに何か進化しているなと感じていることを教えてください。
草彅:進化ですか。そうですね……特にないかな(笑)。変わってないというかね。大人にもなっていない気もするし、いい意味で変わってない。もちろん成長はしていると思うんですけど、何か変わらず2人でこの空気が楽しめていて、それが素晴らしいなと思っています。進化は……本番で進化するんじゃないでしょうか。だから、本番を見届けてください。進化する2人を! ……はい、うまくまとめましたね(笑)。
香取:僕は三谷さんとご一緒する機会が多いんですけど、前回、稽古が始まるときのことがすごく印象的で。つよぽんがすごく緊張していて。本当に三谷さんのいちファンとして「三谷さんの演出を受けられるのは初めてだから、すごく嬉しいです!」みたいな始まりで。いや、そんな緊張しているの? みたいな感じがあったんですけど(笑)。
今回は2回目でそういうことがないし、つよぽんはこの7年でいろいろな舞台を積んできたから、舞台が好きで、稽古も好きという思いがあふれ出ている。そこが進化したというか、あのときとは違うなと感じますね。
草彅:うん、この7年は、すごく濃厚な舞台を踏んだのでね。もともと舞台は好きなんですけど、やっぱりコロナ禍で、舞台って毎日1回できるだけでスペシャルなことだなと思うようになったし、舞台の上に立つことが自分にとってすごく大事なことなんだって改めて感じたので。そういうとこは、もしかしてあるのかもしれませんねぇ〜。
『burst!~危険なふたり~』
ーーでは、お2人の空気感とかコンビネーションで何か進化したところや、絆が強まったと感じることとは?
草彅:一緒にいる時間が長いですからね。人生においてここまで定期的に会う人間っていないんじゃないかな? いないっすよね? 何年? 30年?
香取:35年以上だね。
草彅:やばくない? 35年間、定期的に会う人間っていますか? いないっすよね?
香取:「定期的に会う」って、その言い方なんだよ(笑)。
草彅:僕、学生時代の友達とかもいないですから。唯一ですよね。
香取:初演のときから7年での変化、というよりかは、もう35年ぐらいの関係があるから。あんまりこの7年での変化は……ありますか?
草彅:35年一緒にいるけど、7年間の間にもじわじわ生まれるものもきっとあって。7年前の舞台を再演するって、これまたちょっとした奇跡だなと思うんですよ。それだけ好きでいてくれる人がいるからできるし、自分たちも好きだし、そこに集まってくれる方もいないといけないじゃない。
7年の間に深まった絆もあるだろうし、また新鮮な部分もあるよ。だから、毎日、元気だし、楽しいし、ワクワクが止まらない。とてもいい舞台になると思いますよ。空気感がいいから。それがやっぱ作品にも出ちゃうんじゃないかな。
香取:その空気感の良さというのが僕には分からないんですよ。
草彅:それはね、まだ素人だからね(笑)。
香取:でも他の周りのスタッフからはすごく静かだとか言われるよね。二人芝居で2人しかいないから。いいの? そんな静かで。
草彅:それは問題が起きてないから、静かなんだよ。
香取:え、稽古中に問題が起きるの?
草彅:起きる起きる。ここはどうなってんの? みたいな。監督さんと話し合っちゃって進まなかったりね。進まないよ、稽古って。
香取:今、稽古1日20ページずつぐらい進む。
草彅:めちゃくちゃ順調だよ!
香取:毎日20ページずつガンガンいく。僕はゆっくりやる方なんで、ついていけないですよ。
草彅:そうでしょう? 順調すぎちゃって。止めるところがないから。だいたい何かあるんだよ。本をちょっと書き直そうとかね。だから、三谷さんの本ってすごいんだよ。
香取慎吾「こんなに近くなのに、好きな俳優」
ーーこの作品の稽古を通じて、お互いに再発見した俳優としての魅力を教えてください。
草彅:やっぱり華がありますよね、俳優として、慎吾ちゃんはね。僕もいろいろな方とお芝居させてもらって、いろいろな方を見てきたんですけど、その中でも本当に華がある。これ、舞台人にとってめちゃくちゃ大事なことなんですよ。
僕は持ってない華があって、もう単純に立ち姿とかがいい。だから何もしないでも絵になっちゃう。悔しいっすよね。何もしないでも、そこの空気や空間を埋められる。もっと舞台とかやってほしいですよね。勿体ないですよね。
香取:(首を横に振る)
草彅:だから僕にはない部分だなあと思って、感心してますよね。だからそこで自分はどうすればいいのかなと思ったり。もう今に始まったことじゃないですけど、そんな感じは思います。
香取:昔から好きな俳優さんではあるんですけど、近年さらに『ミッドナイトスワン』を見たときに、自分はもう俳優というお仕事は辞めようかなと思うぐらい、素敵な俳優さんだなと思った。『サバカン SABAKAN』もそうですし、舞台も見させてもらって、すごいなって。僕、あんまり「この人!」という人はいないんですけど、こんな近くなのに、好きな俳優さんなんですね。
でも、映像なり舞台なり見てると、すごくストイックで完璧な姿をいつも見せてくれるのに、いざ今回久々に二人芝居をやってみて、今の稽古の段階だと全然できていないんですよ(笑)。それがね、びっくりしてますね。ここからどういう感じでいくんだろうって。こんなに好きな俳優さんになる前、本当に若い頃に一緒に仕事していた感じを思い出します。日々何か迷いながら、どうやってやればいいんだろう? どうすればいいんだろう? っていうあの頃。
本当に「大丈夫?」という感じもするけど、いつも見ている舞台でも映像でも、稽古を経て、あの姿が作られていくんだということにびっくりしてます。
香取慎吾
草彅:稽古で練り上げていきますからね。
ーーお二人が俳優として舞台に立つことに対する面白さはどんなところですか?
香取:俳優として舞台に立つ面白さ。やっぱり生の緊張感ですかね。そこが難しくて、そこが舞台を苦手とするひとつでもあるんだけど。いざやるとなると、生の緊張感の中、ずっと稽古で積み重ねたものをやるけれど、いつもと違う空気になって軌道修正したり、修正せずにその空気で進んだり。同じことを繰り返しつつも、日々の変化があるというところですかね。
草彅:演技をする上で、映画とドラマ、舞台と分けるとしたら、映画とドラマは失敗の部分は見られないんですよ。編集したり、「もう1回やらせて!」と監督に言ったりしてね。でも、舞台の場合は始まったら、全部見えてしまう。非常に緊張感があって、僕は好きなんですよね。
俳優の全てが見えてしまうようなところだと思うので、そんなところを楽しんでくれれば。悪い意味じゃないけれど、お客さんも結構失敗することを期待しているようなところもある(笑)。面白いですよね。本当に一期一会だなと思う。それ故に全身全霊をもって挑んでいます。もちろん他のドラマも映画もそうなんですけど、特にそんなことを僕は舞台に対して思っています。
ーーこれからお二人でやってみたいことは?
草彅:再再演ですかね!
香取:早いな、気持ちが(笑)。SingTuyoとして「KISS is my life.」という歌があるんですけど、しばらく二人ではやっていないね。僕はひとりで歌もいっぱいやらせてもらっているけど、SingTuyoとして2曲目みたいなのがあったら面白いんじゃないかな?
草彅:いいですね。私も同意したいと思います。
ーータイトルの「危険な2人」にかけて、お互いの「ここは危険だよね」と思うようなところがあったら教えてもらえますか?
草彅:慎吾ちゃんは絵を描いて、たくさん個展をやっているじゃないですか。慎吾の作品を見ていると、もちろん明るい彼の部分もあるんですけど、その作品の中にちょっとドキッとさせるような狂気を絵から感じるときがあります。普段穏やかでにこやかなのに、心のどこかに何か危険な香りのするものがあるのかな。それらが絵に投影されることがあって、それはちょっと“危険”だなと思います。
香取:「やってみりゃいいんだよ」みたいな「理由なんて要らない」みたいなところがあるんです。僕は、結構アドリブ的な雰囲気なんですけど、あくまでも雰囲気で、実はすごい考えているんですね。でもつよぽんはアドリブ的なことが苦手だと言いながらも、いざやると「やりゃいいんだよ! 関係ねぇ!」みたいなところがあって、危ないやつですよ(笑)。
取材・文=五月女菜穂

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