ブロードウェイミュージカル『ピピン
』日本語版、初日直前会見レポート~
奇跡のひとときが待っている

ブロードウェイミュージカル『ピピン』日本語版が、2022年8月30日(火)より、東急シアターオーブにて再演される。主人公ピピン王子役は、今回新たに森崎ウィンが演じる。
ボブ・フォッシー(ミュージカル『シカゴ』、映画版『キャバレー』)による演出と振付で1972年にブロードウェイで初演された本作は、紀元8世紀後半のローマ帝国を舞台に、若き王子ピピンが、父・カール大帝(この物語内での呼称はチャールズ大帝)の圧政や戦争とは異なる「特別な何か(extraordinary)」を探し求めて、自身の人生を模索する時間を描く。後年にミュージカル『ウィキッド』を生んだスティーヴン・シュワルツが作詞・作曲を担当。ジャクソン5がカバーした「Corner of the Sky」、マイケル・ジャクソンがカバーした「Morning Glow」などの名曲揃いの人気作品である。
2013年には、ダイアン・パウルスによる斬新な新演出によってブロードウェイで上演された。ボブ・フォッシーのスタイルを踏襲したダンスと、シルク・ドゥ・ソレイユ出身アーティストが手掛けたサーカスアクロバットなどが観客を魅了し、同年のトニー賞ではミュージカル部門・最優秀リバイバル作品賞を含む4部門を受賞した。また、日本でも2015年に来日公演が上演され、1972年ブロードウェイ初演時に主人公ピピン王子役を演じたジョン・ルービンスタインが、ピピン王子の父・チャールズ大帝役で出演した。
このダイアン・パウルスによる新演出プロダクションの日本語版は2019年に初上演され、ピピン王子役を城田優が務めたことは記憶に新しい。今回の上演ではピピン役に森崎ウィン、ピピンの人生に大きな影響を与えるシングルマザー・キャサリン役に愛加あゆ、という新たなキャストを迎えて再演される。他キャストは、日本語版オリジナルキャストとしてリーディングプレイヤー役を演じ、2019年読売演劇大賞優秀女優賞を受賞したCrystal Kay(クリスタル ケイ)をはじめ、今井清隆、霧矢大夢、岡田亮介、中尾ミエ、前田美波里らが続投する。さらに、2013年の『ピピン』ブロードウェイ公演に参加した、アクロバット/サーカス界のスタープレイヤー、オライオン・グリフィスも出演。世界中のサーカスフェスティバルやスポーツイベントで活躍し、アメリカ・サンフランシスコでは自らサーカスショーを手掛ける彼が、ダイナミックなアクロバットパフォーマンスで盛り上げる。
初日を控えた8月29日(月)、ピピン王子役の森崎ウィンと、リーディングプレイヤー役のCrystal Kay(クリスタル ケイ)が囲み取材に応じ、公演にかける意気込みを語った。
3年ぶりに再演される今作について、観客をマジックの世界に誘うリーディングプレイヤー役のクリスタルは、「すごく楽しみでドキドキしている。コロナ禍で暗くなっている世の中だが、マジックを振りまいて、この時間だけでも夢の世界を楽しんでほしい」と述べた。
ミュージカル単独初主演を果たす森崎は、「緊張もありますが、正直ワクワクの方が強い。3年前に客席で観ていた舞台に出ていることを、純粋に心から楽しんでいる」と、喜びを噛み締めながら語った。
歌唱のみならずダンス、アクロバット、ギターなど、さまざまな要素が求められるピピン役について森崎は、「ピピンはいろいろなことにチャレンジする。この『ピピン』という舞台自体、サーカス団のサプライズやマジックが盛りだくさんで、そこをショーとして成り立たせつつも、奥底にあるメッセージを感じ取ってもらえるように演じたい」と意気込む。
そんな森崎の印象について、クリスタルは、「パピー(子犬)のようなピピンで、今にも私が食いそう(笑)。ウィン自体がピュアで、劇中の、19歳くらいの、少年が青年に変わるピピンそのまま。何もわからないままこの世界に誘われ……私が誘うのですが、されるがままの自然なピピンです」と記者たちを笑わせる。対する森崎は、「3年前に客席から観ていたとき、クリスタルさんが怖くて(笑)。稽古に入って『人間なんだ!』と、恐怖心がだいぶ薄れました」と、人間味あふれるクリスタルの一面を覗いたことを明かした。
クリスタルは、この劇の見どころを「全部です」と明言する。「オープニングナンバーからビックリさせます。みんなをこの世界に引きずり込みます。曲も素晴らしいし、衣裳、ストーリー展開、アクロバット、イリュージョン、ダンス、全てが『ピピン』に詰まっている。特にクライマックスが本当にスゴイ。感想をお客様一人ひとりに聞きたいくらい。老若男女、みんなが今の人生の状況を照らし合わすことができる、マジカルな瞬間がいっぱいある」と熱弁をふるった。
森崎は、ピピン役を通しての変化について、「作品に出会うと常に、人間としてさまざまな感情をもらう。特にピピンは“自分探し”をしていて、自分も迷いを持ってリアルに生きている部分がそれに重なる。ピピンかウィンか……(芝居というのは)何かの役になる、ということに加え、内側から変化することだと思う。明るい未来に向かって、どう動きたいか、見つめ直す機会にもなる」と、すっかりピピンが自分の中に生きている様子だ。
最後に、意気込みを問われた2人。クリスタルは、「私はこの劇を観ることができないので、私の分もみんなに観てほしい。笑いあり、涙あり。勇気、ダーク、現実味、人間っぽさ……。観ている自分とも照らし合わさる最高のエンターテインメント。ストレス発散して帰ってください!」。森崎は。「1972年にブロードウェイで初演され、(2013年のダイアン・パウルスによる新演出の日本語版が)3年前に日本で上演され、今回また再演される。今、エンターテインメントをお届けできる喜びがあります。ナマモノでしか味わえないマジカルな興奮を持って帰れます。今年の夏の終わりは、『ピピン』で終えてみては?! YEAH!!」と、会見の立ち位置を飛び出して興奮気味にシャウトした。
ブロードウェイミュージカル『ピピン』日本語版は、2022年8月30日(火)から9月19日(月・祝)まで東京・東急シアターオーブ、9月23日(金・祝)から27日(火)まで大阪・オリックス劇場にて上演される。上演時間は2時間40分(第一幕75分、休憩20分、第二幕65分)を予定。観たら一生忘れられないマジックにかかり、心の奥に「特別な何か(extraordinary)」を持ち帰れること請け合いだ。
※ゲネプロレポートは後ほど別記事にて。ゲネプロのバーサ役は前田美波里(御年74!)、テオ役は生出真太郎。
取材・文=ヨコウチ会長

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