L→R Hina、Mona

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【Kitri インタビュー】
まだ出会っていない音楽を
映像から引き出してもらった

姉妹のピアノ連弾デュオ・Kitriが新津ちせ主演の映画『凪の島』(8月19日公開)の主題歌として書き下ろした楽曲「透明な」と、劇伴から10曲を収録したサウンドドラックを配信リリースした。映像では見えない部分に焦点を当て、映画の空気感や登場人物の想いを落とし込んだ2作の制作は、ふたりにとってどんな経験になったのだろうか?

失敗しながら
いい曲に出会えることもある

映画『凪の島』の主題歌と劇伴はどちらから制作を進めていったのでしょうか?

Mona
同時並行だったんですけど、先に完成したのは劇伴でした。主題歌は「透明な」に至るまでに12曲くらい作っていて、なかなか“これだ!”というものができなかったので、結果的に最後にできたという流れです。

映画『凪の島』をご覧になって、まずはどんな印象を持ちました?

Mona
自然にあふれていて心が癒される作品だと思いました。小学生の凪ちゃんという女の子が主人公なんですけど、凪ちゃんの心模様と周りの人の心模様、目には見えない“人の気持ち”が丁寧に描かれているのも印象的でした。
Hina
島の美しい情景に癒されましたね。そこで生きている人たちの頑張りや一生懸命さが真っ直ぐに伝わってきて、私自身も頑張ろうと思える素敵な作品だなと。

サウンドドラックに収録されているのは10曲ですが、実際に映画で流れている曲は30曲以上あるそうで、全体的にどんなイメージで作っていったのですか?

Mona
長澤雅彦監督から“Kitriはふたりの声が似ているところが特徴だと思うから、ストリングスで厚くするくらいだったら声を活かすようなものを作ってもらいたい”というリクエストをいただいたので、小編成で丁寧に音を重ねて作りました。私たちのピアノ演奏と歌の他に、ライヴでもご一緒したギターとマンドリンの羊毛とおはなの羊毛さんと、チェロの吉良 都さんに入っていただいて、4人で完結させたからこそ頑張りすぎずに、自然体で作りたい音楽ができたと思っています。

映画を拝見した時、劇伴が入っているシーンでも島の静けさを感じたのが新鮮でした。

Mona
音の余白とか隙間みたいなものは大事にしました。音楽家としては音を入れたくなってしまうんですけど、そこは何度も映像と音楽を確認しながら“ここはもうちょっと引こう”とか、“もう少し感情を表現したほうがいいな”と調整して。映像とひとつひとつの台詞を少しでも効果的にしたいという気持ちで客観的に見るというか、今回はKitriとして“こういう音楽にしたい”というのは一切なく、映像に対してどんな音がいいのかってことだけを考えていました。

普段の曲作りとの違いはどのように感じましたか?

Mona
いつもは自分たちの中にあるアイディアから引っ張り出しているけど、今回は映像を観て感じたことや“これだ!”と思ったものを表現したので、自分たちがまだ出会っていない音楽を映像から引き出してもらっている感覚でした。これはすごく大きな発見で、生み出すのもつらくなくて楽しかったんですよ。普段は“今はどういう曲を作りたいんだろう?”と考えることに時間がかかるんですけど、今回はいくらでもあふれ出てくる経験をしたので、そこは収穫になりました。長期間の制作だったからなかなか思うように作れない日や何も浮かばない時もありましたが、それも含めて貴重な時間でした。
Hina
劇伴のミックスにも参加させてもらったんですけど、今まではデモ用に簡単なミックスをすることしかなかったので、本番では初めてだったんです。難しかったのでふたりで勉強をしながらシーンによってピアノの音質を変えて、リバーブを強めにしたり、淡々としたり、ひとつひとつの音をじっくり聴いて作っていくのも新しい挑戦でした。

劇伴の制作で普段の曲作りにも通じそうなところはありましたか?

Mona
浮かんだアイディアをどんどん溜めていきたいと思うようになりました。今まではアイディアとして溜める前に“これは違うな”と思ってしまうところがあったんですけど、劇伴の制作ではその時に浮かんだものをどんどん出していったので、失敗しながらいい曲に出会えることもあるんだなと。これからはその時々で出していくことも大事にしようと思いました。
L→R Hina、Mona
配信シングル「透明な」
配信アルバム『映画『凪の島』 オリジナルサウンドトラック』

OKMusic編集部

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