L→R 神田雄一朗(Ba from 鶴)、菊地英昭(Gu from THE YELLOW MONKEY)、岩中英明(Dr from Uniolla/MARSBERG SUBWAY SYSTEM)、渡會将士(Vo from FoZZtone)、MAL(Key)

L→R 神田雄一朗(Ba from 鶴)、菊地英昭(Gu from THE YELLOW MONKEY)、岩中英明(Dr from Uniolla/MARSBERG SUBWAY SYSTEM)、渡會将士(Vo from FoZZtone)、MAL(Key)

【brainchild's インタビュー】
コロナ禍があったからこそ
出来上がった作品

80年代、90年代のパワフルで
カラフルな感じが今は欲しい

1曲目の「Brave new world」はディストピアすらも笑い飛ばす力強さのある曲ですね。誕生の経緯というのは?

菊地
コロナ禍が続いて、いろんなことがありすぎて…負のパワーで創作意欲が湧くことももちろんあるんですけど、“それだと、もう目いっぱいだな”と疲れてきたところもあったんですね。曲のストックがいっぱいあって、時代を問わず作ってきているんですけど、この曲の元ネタはちょっと前にはありました。僕はギターを持つと、そのギターに合ったフレーズを弾きたくなるんです。レスポール、ストラトキャスター、テレキャスターなど、そのギターに合うものを。例えばテレキャスターだったらカッティングを弾きたくなったりするんですね。この曲を作っていた時はフライングVを持っていて、その手癖で“フライングVを持ったらこういうフレーズが合うな”という感じで作っていった曲のひとつでした。それってギターを弾き始めた頃の初期衝動に通ずるものがあって。“あぁ、やっぱり今自分に必要なのはこういうことかも”と思いながら制作していったんですよ。で、このコロナ禍だから“疲れている自分を元気にするのはこういう曲だ!”と、ストックから引っ張り出してきて。“この曲をやりたい”とメンバーにデモを渡しました。

渡會さんはどんな印象を受け、どういう想いで歌詞を書かれましたか?

渡會
データをもらった時、フライングVが全盛期だった時代のニュアンスを感じたんですね。ちょっと実際の時代設定とは違うと思うんですけど、昔に観た映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』とか、ああいう超ヒットした懐かしの古き良き映画のイメージが湧いて。

『マトリックス』『ターミネーター』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という作品名が歌詞に列挙されていますもんね。

渡會
全部、自分の世代の映画ですね(笑)。みんながどれだけ新作を観ようが最終的に地上波で夏休みに流れるのは『バック・トゥー・ザ・フューチャー』みたいな感じで、“ここが帰ってくるべきところなのかな?”というイメージがありました。
菊地
あははは! 毎夏休みな(笑)。
渡會
そうですね(笑)。これも、書いていた時に政治も社会ももうめちゃくちゃ荒れまくっていて。自分が『バック・トゥー・ザ・フューチャー』を初めて観た時は、“未来は車が空を飛ぶんだな”とかワクワクドキドキしていたはずなのに、世の中を見渡してみたら“すげぇな。地獄みたいな世の中だな”と感じたんです。でも、“これって昔、ディストピア小説とかディストピア映画に出てきた気がする”とも思って。昔に観た作品をもう一回観返したら、“すげぇ今の日本っぽい!”みたいな。それこそ病気が蔓延していたり、そういうディストピアものって大昔からいっぱいあるので、それをシニカルにネタにし、映画ネタとマッシュアップして、“今、かつての人が言っていたディストピアみたいな時代を生きちゃっているね。しょうがないけど、これが現実なんだよ。だから、このあとのシナリオは自分たちでうまく作っていくしかないんだ”という想いを書いています。

絶望感ではなく、全てを受け入れて笑い飛ばしていこうという前向きさが伝わってきます。EMMAさんは歌詞をどう思われましたか?

菊地
いいところを突いてくれていると思いました。詞の内容もそうですし、僕が目指していた80年代、90年代のテイストにすごく合わせてくれていたので、そこまで意図を読んでくれていたのかなと。“俺、そういうこと言ったのかな?”とか思って…ちょっと、記憶が朧げなんだよね。
渡會
どこかのタイミングで少しだけ。全部質問して全部を答えてもらっちゃうと、そこをなぞりにいく感じになるので、なるべく少なく質問して少なく答える…そういう謎のルールがふたりの間にある時期あって。だから、たぶんヒントはもらったと思いますね。

実際にフライングV全盛の時代はいつ頃なんですか?

菊地
80年代初頭ですね。90年代ぐらいまでずっと流行っていましたけど、あの時代ってイケイケドンドンじゃないですか。今はあまり遣わない言葉だけど(笑)。そのパワフルでエネルギッシュな感じ、カラフルな感じが、今は欲しいと思ったんです。今って本当に省くばかりの世界なので。もちろんそれのいいところもあるんでしょうけど、ちょっと物足りないっていうか。人間はわざわいも作っていますけど、そのわざわいも全てなくなると、それはそれで“人って何のために生きてきたんだろう?”とも思うし。いろいろと難しいところですけどね。とにかくそのエネルギッシュな感じとか、“何でもござれ!”的な許容力の強さは欲しいと思ったんです。アルバムを作っていく上で全体的にそういう雰囲気はあったので、それは裏テーマとしてありました。そこを感じ取って歌詞を書いてくれていると思います。

「WASTED」はストレートなロマンティックさのある曲で、作詞作曲、ヴォーカルもEMMAさんが務めておられます。

菊地
いろいろ不平不満も毒も吐きたくなるような、この世の中の“その先にどうやって行こう?”ということを歌った曲です。そういう言葉をいっぱい並べていますけど、ベースには結局はコロナ禍がありますね。これだけいろいろなことがあって、だけどこの先も続くから“それだけじゃダメだよね”と。一応前を向いていこう的な、自分には珍しいタイプの詞ですね。

「クチナシの花」も驚くほどストレートな歌詞で、そこに胸打たれました。美しいですね。

菊地
これもね、詞もいいんですよ。
渡會
ありがたいです!
菊地
これも「Brave new world」と一緒で、初期衝動なんですよね。自分が好きだった80年代の音楽を意識して、そのまま自分なりに昇華しました。そんなに奇を衒わずに作った曲です。自分が音楽を聴き始めて、ギターを弾き始めたリアルタイムは70年代なんですけど、そのあとの80年代って過渡期というか。ニューウェイヴが到来して、打ち込みも出てきて、ちょっとロックが古くなりかけていた時代だったんです。それでも頑張っていた煌びやかな大御所のロックバンドがいたので、そういう人たちにこの曲では敬意を払いたくて。ちょっと歌メロは難しいんですけど、ワッチに“これ、日本語をつけて歌ってみて”とお願いしました。
渡會
“これはQUEENのイメージなんだろうな”と思いながらデモを聴きました。具体的にはメロディーの運び方とかで。最初にもらったデモにはEMMAさんの仮歌が乗っていて、日本語ではなく“英語の発音だったらこんな感じの言葉?”みたいな歌詞だったんです。それを聴いて“あぁ、フレディー・マーキュリーっぽいな”と(笑)。
菊地
舌を転がしていたりしたもんね。“ファイ!”とか言っていたりして(笑)。
渡會
“これはハードル高いぞ”と思いましたけど、テーマが決まったらわりとサクサクッと書けましたね。“クチナシの花”というタイトルは、なるべくその辺に咲いている小さな花がいいなと思って、花言葉も良かったので決めました。
菊地
ワッチはちゃんとそういうところまで調べるんだよね。
渡會
“私は幸せです”みたいな花言葉なんですよ。
菊地
この曲も言葉には出てこないけど、コロナ禍はどっぷり入っているよね。
渡會
そうですね。この2年、未来の予定を立てることが減っていったじゃないですか。スケジュールが飛んだりする中で、とにかく前向きにじゃないと生きていけないから、未来の予定を自分に対して贈り物をするように立てていく、あるいは誰かと約束を設けることに自分が救われたりして。未来に向けての約束として、楔を打つような感じで自分の言葉を放り込んでいくイメージで書いた歌詞ですね。

OKMusic編集部

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