『爆裂都市(BURST CITY)
オリジナルサウンドトラック』は、
陣内孝則、大江慎也らが
自ら音をかき鳴らした規格外の劇伴
過激さはありつつも陽気でポップ
M2以外にも『爆裂都市 BURST CITY』サウンドトラック収録曲はシャープなロックチューンが連なっている。これは今回、映画を観直して、そこで披露されていたザ・スターリンのいくつかのナンバーとの違いを確認して、ハタと気付いたことなのだが、ダークで退廃と呼ぶに相応しいザ・スターリン楽曲に比べて、バトル・ロッカーズの楽曲は跳ねるようなポップさがあるように思う。不健全な匂いは間違いなくあるのだが、どこか陽気さを払しょくし切れないところを秘めているように感じるのだ。パンクというよりもロックンロール。個人的には1960年代のTHE WHOのような、危ない匂いはしつつも、楽曲の中心となっているメロディーはキャッチーであったりメロディアスであったりするというところは見出せるのではないかと思う。映画そのものも、バンドやそのオーディエンスが騒いでいるシーンが7~8割と言っていいような代物だが、バトル・ロッカーズを中心に捉えた箇所では完全にギャグと言えるシーンもある。バトルポリスとのいざこざ、バトル・ロッカーズのメンバー同士の喧嘩などがそうだろう。こうした場面があることで、過激は過激でも、目を覆いたくなるような凄惨さもないし、アンダーグラウンドにありがちな陰気さを薄くしているような気がする。無論、M8「視界ゼロの女(マチ)」ではっきりと確認出来る陣内の歌の艶っぽさ、グラマラスさもその辺と無関係ではあるまい。
あと、これも個人的な感想だが、最後にひとつ。『爆裂都市 BURST CITY』にはこんな逸話がある。[映画公開当時、ザ・スターリンが起用されたことに関して、パンク・ロックバンドのアナーキーのヴォーカル仲野茂が「なぜ自分たちを起用しなかったのか」と不服を表明し、映画の打ち上げに殴りこみをかけるなどの騒ぎを起こした。のちに泉谷しげるの仲裁により、両バンドは和解している]という話だ([]はWikipediaからの引用)。アナーキー(現:亜無亜危異)と映画スタッフとの間に何があったのかは定かではないけど、映画を観てサントラを聴く限り、もしザ・スターリンではなくアナーキーだったとしたら、映画内において、サウンドの陰陽においてバトル・ロッカーズとの差異があまり感じられなくなったのではないかと思う。パンクはパンクでもアナーキーは陽だ。ユーモアセンスもある。代わるならバトル・アナーキーとしてバトル・ロッカーズとチェンジするならアリだったように考える(40年も経ってから想像することでもないか…)。
TEXT:帆苅智之