ニューソウルを代表するレジェンド、
ビル・ウィザースの傑作ライヴ盤
『ライヴ・アット・
カーネギー・ホール』
会場が一体となって盛り上がる
長尺のメドレー
最初のアルバムリリース時はLP2枚組で出ているのだが、およそ当日はMCも含め2時間ほどの演奏の中から選ばれたのであろう14曲(1時間14分)から構成されているが、曲構成も見事なものだ。確かにこれはライヴ名盤に選ばれるだけのことはある見事な出来栄えだ。
ウィザースは80年代中頃に引退する。所属レーベルの経営方針と衝突し、ツアーを嫌い、音楽業界に失望していたとも言われる。グラミー賞に6回ノミネートされ、3回の受賞。ゴールドディスク認定は、アルバム3枚、シングルが3枚を数える。2020年3月30日、心臓疾患の合併症のため81歳で亡くなっている。その死に際しては彼に影響を受けた多くのR&B系のアーティスト、レニー・クラヴィッツ、スティーヴィー・ワンダーらに混じって、ブライアン・ウィルソン(ビーチボーイズ)が、かけがえのない存在であり、彼は“ソングライターの中のソングライター”であったと、ウィザースを称えるメッセージを残していたのが印象に残っている
時代の流れもあったと思うが、70年代も半ばを過ぎると、ウィザースもやや低迷期というか、チャートに名前が登らなくなったのだが、1981年、ヴォーカリストとして参加したサックス奏者グローヴァー・ワシントン・ジュニアのフュージョン作『Winelight』(‘81)収録の「クリスタルの恋人たち(原題:Just the Two of Us)」がシングルカットされ、全米2位を記録している。この曲の歌声でウィザースを知ったという人も多かったと思う。メロウなサウンドはリリース当時はよくラジオでオンエアされていたものだ。今改めて聴くと“うまいなぁ”と唸らされてしまう。
アーティスト/ミュージシャンとしてのキャリアとしては短いものだったと思うのだが、残されたアルバム、特にスタジオ録音作にも佳曲が多く、そのあたりにもシンガーソングライターらしさが現れていると思う。シングル曲以外の曲にもぜひ耳を傾けていただきたいと思い、数多く出ているベスト盤、コンピレーションをあえてさけ、本ライヴ作も含めたディスコグラフィーを列挙しておく。また、ウィザースの音源は多くの後輩R&B系アーティストにサンプリングされているということである。こちらはまったく門外漢なので未調査なのであるが。
TEXT:片山 明