ニューソウルを代表するレジェンド、
ビル・ウィザースの傑作ライヴ盤
『ライヴ・アット・
カーネギー・ホール』
鉄壁のバック陣とともに
熱唱するウィザース
ちなみに、核となる5人のメンバーは「ワッツ103rdストリート・リズム・バンド」という8人からなるファンクバンドからの精鋭部隊で、バンドにはのちのアース・ウィンド&ファイアのメンバー、ギタリストのアル・マッケイ、ドラマーのジェイムス・ギャドソンが在籍したことでもその筋で知られる。そこから5人がウィザースを盛り立てるべくバックを務めている。ホーン&ストリングスのアレンジやピアノ、他で活躍しているレイ・ジャクソンは異色のキャリアの持ち主で、このバンドに加わる一方で英国スコットランド(ニューキャッスル)の人気フォークロックバンド「リンディスファーン」の創設メンバーのひとりで、「Meet Me On The Corner」「Fog On The Tyne」等のヒット曲でリードヴォーカルもつとめた人物である(ウィザースの本作と同年、しかも来日公演も行なっている!)。フォークロックとファンク、まるで対極の音楽ではないか。それはともかく、彼らの演奏がいい。ハジけるようなファンクビートを繰り出す中にもブルージーで、ウィザースのヴォーカルにピッタリと寄り添う、とてもあたたかな演奏なのだ。
※リンディスファーンのアルバムは以前この連載コラムで紹介しています。
https://okmusic.jp/news/423415
シングルカットされ、名曲の誉れ高い「Grandmas’s Hands」もストリングスを効果的に使い、ぐっと聴かせるナンバーだ。ファンキーにキメる「World Keeps Going Around」、ウィザースの歌のうまさ、心象表現の巧みさが際立つ「Let Me in Your Life」、ウィザースのアコギをバックにクールとしか言いようのないファンキーなバックがビシビシ決まる「Better Off Dead」、ブルージーなウィザースの歌唱に絶妙なテンポとタメを利かすバック陣のセンスが光る「For My Friend」、「I Can’t Write Left Handed」はベトナム戦争で右腕を失った帰還兵を描いたスポークンスタイルの反戦ソングだそうだ。