『TRANSIT』のデビュー作らしい
多彩さに垣間見る
女性シンガーソングライター、
泰葉の輝きと意欲

『TRANSIT』('81)/泰葉

『TRANSIT』('81)/泰葉

文字通りシティポップの名盤を復刻リリースするという『<CITY POP Selections> by UNIVERSAL MUSIC』と題したシリーズが立ち上がり、6月29日にその第一弾がリリースされた。そのラインナップの中に大橋純子、ハイ・ファイ・セットらと並ぶ、泰葉を発見! これはもう紹介するしかないでしょう! …というわけで、件のシリーズでも再発された彼女のデビュー作『TRANSIT』を取り上げる。本文冒頭で林家三平の娘と書いたけど、昨年まで『笑点』で大喜利をやっていた三平じゃないので誤解のないように。あちらの二代目林家三平は泰葉の弟である。念のため。

落語一族に生まれた
シンガーソングライター

泰葉は実父である初代林家三平をして“天才”と言わしめたという。真偽のほどは定かではないようだが、仮に本当にそう言ったにしても“そりゃあ可愛い実の娘のことだもの、そのくらいは言うでしょう”と高を括るところではある。ましてや氏は“昭和の爆笑王”。そのキャラクターを考えれば、所謂親バカを演じることもあっただろう。その上でのリップサービスと捉えることもできる。だが、しかし…である。彼女のデビュー曲である「フライディ・チャイナタウン」を聴くと、誰もが泰葉のシンガーソングライターとしての才能を認めざるを得ないのではないか。マジでそう思う。初代三平は親バカでも何でもなかった。氏は彼女の才能を誰よりも早く見出していたのだろう。息子たちは自分と同じ落語家の道を歩んだが、彼女はそうではなく音楽の道を志した。初代三平の“天才”発言が本当だったとするち、もしかすると父は自分にはないタレント性に羨望の念を抱いていたのかもしれない。

この度その第一弾として、泰葉を始めとして、俗に言うシティポップの名盤全25タイトルを復刻リリースした『<CITY POP Selections> by UNIVERSAL MUSIC』。その『TRANSIT』の商品紹介はこんな文章で始まる。[ロサンゼルスの若者たち2000人が「フライディ・チャイナタウン」をクラブで大熱唱するなど、世界を席巻しているシティ・ポップに新たな旋風を巻き起こしている泰葉の1st アルバム](当該サイトより引用)。“ロサンゼルスの若者たち”というのが何とも時代がかっていて気になるところではあるけれど、同曲を知る者としては、2000人が大熱唱はあながち惹句のための誇張でもない…というか、“それはそうでしょう!”と思わず膝を打つところではある。この楽曲にはまさに世界を席巻するだけの成分が含まれている。どこの誰であろうと、これを聴いたら自然と心と身体が躍る。間違いなく、そういうナンバーである。『TRANSIT』はB面2曲目、全体での7曲目という中盤に置かれているのだが、今回はまずこの不朽の名曲と言っていい「フライディ・チャイナタウン」から解説していきたいと思う。

OKMusic編集部

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