近石 涼

近石 涼

【近石 涼 インタビュー】
“また会おう”と
言い合った人たちとの
ドラマを描きたくて曲を書き始めた

今年は路上ライヴも
多めにやっていきたい

音楽的な部分において「ラベンダー」で変化したことはありますか?

今までは自分の中の曲の書き方の規則みたいなものがあったんです。説明は難しいんですけど、言葉が先にあって、そこからメロディーを持ってくる感覚が。でも、今回は頭の中にサビのメロディーが丸ごと降りてきていたものだったり、ストックしてきたメロティーが先にあったりしたので、「ラベンダー」という曲を作りたいと思った時に、そのストックからたくさん引き出してくるという作り方をしたんです。

自分の中のセオリーから逸脱した手法から生まれたんですね。

はい。メロディーの構成も今までの自分がやってきたこととは変わっていて。普通ならAメロがあり、Bメロはキーも低めで落ち着いた感じで、サビで開けて盛り上がるんですけど、「ラベンダー」は逆なんですよ。サビでオクターブの跳躍をしているのも、僕が今までやってこなかった作り方だったりします。全体としてもパートで区切って構成を組み立てていくことをやっていないので、Aメロのほうがよっぽどキャッチーやったり、どこがサビか分からない曲にはなっているかもです(笑)。

確かに、それはすごく思いました。「ラベンダー」はナチュラルに湧き上がってくるメロディーをひと筆書きで紡いでいるようで。さわやかな疾走感が続く1番から、それを断ち切るようにゆったりとしたブリッジを経て、オルタナティブなサウンドへと変化していくあたりは、近石 涼サウンドの渦に飲み込まれるような感覚もあったし。すごくさわやかな楽曲なのに、ゴツゴツしたフックがたくさんあって、ひと筋縄ではいかない曲になっているのが、実に近石さんらしいなと。

それはインディーズデビューからずっとお世話になっているアレンジャーの平畑徹也さんのお力が大きいですね。後半、サビが繰り返されるところもテンションを変えて、歌詞で表現した心の葛藤を構成としてうまく表現してくださっていて…「兄弟 II」もそうでしたけど、そういう提案をいただくと、予想していなかったアレンジによって、自分の曲なのに新しい発見があって。そういうやりとりが楽しいですね。逆に、アレンジを平畑さんにしていただくようになって、僕もデモを作る段階でこだわりがかなり強くなりました。

例えば、どういうところですか?

コード進行ですね。例えばサビ。ベースラインはステイしながら、上のコード進行だけ変化するのですが、僕はその進行で出会いと別れの切なさを表したかったので、そこのやりとりは平畑さんとめちゃくちゃさせてもらいました。もっと言うと、ずっとステイしていたそのベースが、ラストのサビでは動き出すんですよ。そのドラマチックさも、めちゃめちゃ考えて作りましたね。

そういう構成へのこだわりをご本人から聞いた上で楽曲を耳にすると味わいがさらに深まりますね。歌詞に関してはどうですか? 先ほど、描いているものがノンフィクションからフィクションに変わってきたというお話がありましたが。

“どんな曲を作りたいか?”と訊かれたら、10人が聴いて10通りの解釈ができる歌詞が自分の目標なんです。そういう意味では「ラベンダー」で面白い出来事がありましたね。友達にこの曲をちょっとだけ聴いてもらった時に“ラブソング、いいですね”という感想をもらったんですけど、僕は“ラブソングを書いたつもりじゃなかったんだけどなぁ”と思って(笑)。

まさに望んでいたとおりの受け取り方をしてもらえましたね。

いや、ほんまにそうで。僕が意図していないとらえられ方をして、僕の手を離れて違った曲になっているのが嬉しくもあって。なので、他の方が「ラベンダー」を聴いて何を想われたのか、ぜひお聞きしたいですね。

《寂しさはきっと自分への未来を開ける宝物》といったフレーズしかり、表現の視点や方法は変わっても近石さんがずっと歌ってきたメッセージが変わらずにそこに存在しているのも、ファンのひとりとしては嬉しく思います。そう言えば、「ラベンダー」のMVも高校生の男女のストーリーと現在の近石さんの姿とがクロスして、青春のひとこま、ラブソング的な世界感を思わせる印象的な作品になっていますね。

そうですね。出会いと別れがテーマの曲なので、それを男の子と女の子に投影したひとつの解釈として作っていただきました。お話としては、学校で昔の自分と仲の良かった女の子の姿を思い出している僕がいて…みたいな映像になっているんですけど、昔の僕役の俳優さんが男前すぎて恥ずかしくなりました(笑)。

久々に訪れた学校はいかがでした?

懐かしくてテンション上がりましたね。あの学校は千葉にあって、夏休み中は東京から小学生が来て利用するんですけど、他の期間は撮影にも使わせてもらえるんです。だから、ほんまにリアルな学校で撮影しました。理科室とか図書室とか、自分が通っていた学校の教室と同じ…もうね、そのままなんですよ。

学校の教室の作りなどは大きな違いがないから懐かしいですよね。俳優さんたちとはお話ができましたか?

できましたよ。ふたりとも20歳そこそこで若いし、俳優という夢に向かって頑張っていて。僕も年齢こそ上ですけど、同じ温度感を感じたし、一緒に夢の話もして仲良くなれたんです。すごくいい時間を過ごせましたね。僕は歌うシーンがメインですが、その中でも演技というほどじゃないんですけど、教室を覗くシーンで昔の自分を意識した動きをする演出があったりもして(苦笑)。ぜひ、MVもフルバージョン観ていただけたら嬉しいですね。

近石さんが演技されているMVも珍しいですからね。ぜひ感想をご本人のSNSに届けていただければと。そして、この夏はフェスやイベントライヴへの出演も多く予定されていますね。

関西圏でのライヴにはなってしまうんですけど、「ラベンダー」も含めて新曲もたくさん歌いたいですし、7月18日の『ぷすっぽpre。「グッドポップA5ランク」』という対バンライヴはバンドセットで出演します。弾き語りで出るイベントもたくさんあるので、いろいろな近石 涼を観ていただける機会があるのは嬉しいですね。

7月31日には今年から新しく始まったライヴサーキット『MIKKE!! MIKKE!! MIKKE!!』にも出演されるそうですね。

はい! 大阪の東心斎橋の5会場を結ぶ、弾き語りのライヴサーキットなんですけど、サーキットに出ること自体が初めてなのでちょっとドキドキしますね。出演者も女性アーティストがとても多いから、“男のシンガーソングライターもいるぞ!”とアピールできるよう頑張ります(笑)。あと、今年は路上ライヴも多めにやっていきたいなと思っているので、ぜひお待ちしています!

6月に大阪の梅田駅で、wan(fr.ワンダフル放送局)さんとふたりでストリートライヴをやっていた様子がTwitterに上がっていましたね。

そうなんですよ。wanくんがギターで、僕はなぜかキーボード(笑)。お互いのオリジナル曲やカバーもいろいろと歌ってすごく楽しかったです。そういう突発的な路上ライヴは最近やれていなかったし、今後もたくさんやりたいですね。新曲もコンスタントに出していくので、楽しみにしていてください。

取材:阿部美香

配信シングル「ラベンダー」2022年6月29日配信 lemon syrup/NEW WORLD RECORDS

ライヴ情報

『ロマンチック連合軍スピンオフイベント「夢想家たちの」vol1』 ※バンドセット
7/05(火) 大阪・豊中LIP2nd
『タイキのホンキ〜香川裕光とホンキで過ごす3日間』
7/08(金) 東京・下北沢DY CUBE
『CROWDFUNDING RELEASE LIVE』
7/09(土) 東京・原宿STROBE CAFÉ ※sus4で出演
『百華 presents 「共鳴するワズン」』
7/17(日) 大阪・MUSE BOX
『ぷすっぽ pre. 「グッドPOPS!! A5ランク!!」』
7/18(月) 大阪・心斎橋pangea
『神戸VARIT. 18th Anniversary「極メロ~アル・カーヒラ2022」』 ※O.A.での出演
7/24(日) 兵庫・神戸VARIT
『MIKKE!! MIKKE!! MIKKE!!』 ※ライヴサーキット
7/31(日) 大阪・心斎橋MUSE BOX / 歌う魚 / LIVE&BAR 真心場 / Balls8 / Live bar N
『someno kyoto 5th Anniversary 「Go sign」』
9/28(水) 京都・someno kyoto

近石 涼 プロフィール

チカイシリョウ:1995年12月17日、阪神淡路大震災後の神戸に生まれ、幼少期よりピアノを始める。学生時代にギターを始め、高校生の時からYouTubeにカバー動画をアップしている。初めて作った曲「シンガー」が『COMIN’KOBE16』のオーディションにてグランプリを獲得。20年には関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try 19/20』にて準グランプリを受賞。21年12月にインディーズデビューアルバム『Chameleon』を発売。22年に入り、ワンマンライヴと全国7カ所で『Chameleon Tour 2022』を開催し、配信シングル「自分らしさなんて捨てられれば」「ラベンダー」を発表。同年11月に新曲「馬鹿な女」をリリースした。近石 涼 オフィシャルHP

「ラベンダー」MV

OKMusic編集部

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