Ryu Matsuyama×LIVE HOUSE FEVER“
hands”、NakamuraEmiを迎えての第一
夜は喜びと幸せに包まれた空間に

Ryu Matsuyama✕LIVE HOUSE FEVER“hands” 2022.5.22 新代田FEVER
Ryu Matsuyamaと新代田FEVERの共催で実施される、3ヵ月連続のツーマンライブイベント『hands』。その第1回となる公演が、以前から親交の深いNakamuraEmiを迎えて5月22日(日)に行なわれた。
NakamuraEmi
いっぱいの植物で彩られたフォトジェニックなステージにまず現れたのは、NakamuraEmi。「フェスで大雨の中、観てくれていたお客さんを見てできた曲です」と、今の季節にちなんだ「雨のように泣いてやれ」からライブの幕が開けた。プロデューサーを務めるおなじみのカワムラヒロシ(Gt&Cho)とのデュオ編成で、そのアコギ伴奏に乗せて身振り手振りを交えながら、時にウィンドチャイムを揺らしながら、あっという間にグルーヴを生み出すダイナミックな歌唱には、相変わらず胸のつかえが下りる清々しさがある。
「昨日、母親が誕生日を迎えました。私は40歳で、大人だけど子供です」と前置きした「大人の言うことを聞け」は、カワムラの軽快なストロークが映え、NakamuraEmiもシェイカーを振って歌い、マイクにエフェクトをかけたりと、すこぶる躍動。「かかってこいよ」では、タンバリンを手に、キレのいいラップも聴かせ、Ryu Matsuyamaのファンを含めて新代田FEVERに集まった観客たちをどんどん虜にしていく。主体性の大切さを思い出させるような、“自分は自分だ!”と立ち上がる力をもらえるような、曲の持つメッセージも素晴らしい。
NakamuraEmi
「Ryu Matsuyamaとは5~6年前に渋谷duoで共演して、Ryuくんはコロナ禍で活動が難しかったときに私たちのチームを支えてくれた1人だったりもします。会うたびにすごくパワーをもらえる人で、そこから改めて曲が大好きになりました。静かな中に深い愛情があるというか、自然界に繋がっている感じがする音楽で。このあときっといい時間になると思うので、いっしょに楽しみましょう!」
お互いの関係性をそう伝えたMCでは、「会場の入口には私たちやRyuくんたちそれぞれをイメージした木も用意してくださってます」と、この日の装飾を手がけたMOND And PLANTSのことまでしっかりと紹介。
「スケボーマン」においては、珍しく途中でリリックが飛んでしまうシーンがあったものの、そこに至るまでの凛としたボーカルがあまりに圧倒的だったおかげで、ハプニングさえもいいムードになる。ライブハウスならではの温かみが漂う場内。自らオーシャンドラムを鳴らしてしっとり歌った「波を待つのさ」も、素敵なステージセットの雰囲気に合っていてなんだか心が落ち着く。そういえば、真っ黒に日焼けしていたカワムラはこの日の朝もサーフィンに行ってきたのだとか。
NakamuraEmi
その後も、コロナ禍の閉塞感を脱するヒントになりそうな「一服」、先日YouTubeでのMV再生が300万回を超えた何度でも気持ちを奮い立たせてくれる「YAMABIKO」と、己の信念の強さが滲む美しい楽曲を届け、ラストの「投げキッス」はなんとRyu Matsuyamaの「Snail」の一節を織り交ぜたスペシャルバージョンで披露。粋なアレンジでフロアを賑わせ、2人は笑顔でステージを降りた。
Ryu Matsuyama
そして、いよいよ主催のRyu Matsuyamaが登場。オープニングの「Return to Dust」はRyu(Vo&Pf)の弾き語りから始まって、やさしいピアノとオートチューンをかけたボーカルが耳を惹く中、ドレッドヘアーがトレードマークのJackson(Dr&Cho)の音が入ったタイミングで照明が幻想的に輝き出す。同じく心地よいミッドナンバー「all at home」(結成当初に作ったかなり古い曲とのこと)へ流れるように繋ぐと、じわじわと盛り上がりを見せるバンドのアンサンブルと声の支配力。自然体で奏でる歌やメロディを起点として、壮大なサウンドスケープを丁寧に編んでいく。このライブ運びがとても彼ららしい。
「Boy」になれば、サウンドに疾走感が加わる。それまでシンセベースを弾いていたTsuru(Ba&Cho)も5弦ベースを携え、よりエモーショナルなプレイを繰り広げるなど、強度がグッと増す鉄壁のトライアングル。最新EP『And look back』からの「Deep, blue」では、“But I always will be/Will be there/Will be there”(訳詞:大丈夫 僕はずっと/いつもそこにいる/そこにいるからね)と歌われる切ないファルセットが胸を打つ。その神秘的なトーンに、3人が作り出す深遠なグルーヴに、オーディエンスも気持ちよく身体を揺らす。
Tsuru
「Ryu Matsuyamaと新代田FEVERの3ヵ月連続企画。その第1回、NakamuraEmiさんとの対バンです。今日は来ていただいてありがとうございます!」とRyuが挨拶したあとは、公演タイトルにもなった新曲「hands」を披露。「ホームグラウンドのFEVERで、仲間たちと手を組んでいろいろやっていきたい」――そんな想いを込めた同曲のどっしりと安心感のあるリズム、さらにハイトーンに上がったファルセット、そして“特別な君と 特別な時間を過ごしていきたい”という日本語詞が、誰もが人知れぬ苦労を抱えている現在の状況とマッチして温かくタイムリーに響いた。
生きている意味を問う「愛して、愛され」もまた然り。このあたりは、Ryu MatsuyamaとNakamuraEmiの楽曲に共通するメッセージ、両者の親和性の高さが色濃く表れたような時間となった。一方で、ピアノが軽やかに跳ねる「Heartbeat」、希望に満ちたアンセム「Go Through, Grow Through」では、明るくポップなサウンドを全面に出し、美しいメロディとともにパワフルな生命力もまざまざと感じさせてくれる。
「今日は以前Ryu Matsuyamaのドラムを叩いてもらっていた大塚(雄士)さんが観に来ていて、実はNakamuraEmiちゃんのサポートもやっていたりしてね。そういう繋がりを含めて、対バンの1発目はEmiちゃんしかいないと思いました。出ていただけて本当にありがたいです」と共演の経緯を語るRyu。また、MOND And PLANTSをはじめ、カメラマンや整体のスタッフ、新代田FEVER……仲間の大切さについて言及し、「素晴らしい方々に囲まれています」と感謝を告げる場面も。
Jackson
「僕とTsuruちゃんがRyu Matsuyamaを組んで、もう10年みたいです」「このお面(おつら)を10年も見ているとはね(笑)」とRyuとTsuruが言葉を交わすなどゴキゲンなトークは続き、Jacksonも「ひさびさのライブでこんなにたくさんの人たちが観てくださって、バックヤードでワイワイと話をしたりとか。いろんなことがまた楽しみになってきて、嬉しすぎて叫びたい気持ちです!」と喜びを爆発させた。
新型コロナウイルスの影響もあって、今年まだ4回目の公演だというRyu Matsuyamaだったが、「昔の曲もやれたり、想いがたっぷり詰まったライブになりました」と手ごたえを覗かせた3人。同期で華やかなブラスサウンドを取り入れ、3ピースとは思えないダイナミズムや祝祭感で圧倒した「No.One」「From the Ground」と、本編最後までホームの空気を纏ったナチュラルなパフォーマンスをやり抜き、耳の肥えたオーディエンスを大いに魅了してみせた。彼らのステージを袖でずっと見守っていたNakamuraEmiが、ものすごく嬉しそうな表情を浮かべていたのも忘れられない。
アンコールでも「これも仲間たちに救われたからこその曲」という「Friend」を届け、お客さんがいるライブハウスでの演奏をピュアに楽しんだRyu Matsuyama。かくして『hands』の記念すべき第1回は、大盛況のうちに終了となった。
Ryu
Ryu Matsuyama✕新代田FEVERによるツーマンライブイベント『hands』の第2回は、6月19日(日)にBialystocksを迎えて開催される。第3回となる7月18日(月・祝)には、Polarisと対バンを行なう予定だ。こちらもぜひ足を運んでみてほしい。
なお、ライブ中に「明日の朝8時にいい発表があります」とアナウンスされたとおり、ドラマ『オールドファッションカップケーキ』の主題歌をRyu Matsuyamaが担当することも決定。プロデューサーとしてmabanuaが参加した新曲「blue blur feat. mabanua」は、6月10日に配信リリースとなる。

取材・文=田山雄士 撮影=Takeyoshi Maruyama

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