横浜の夜を熱く燃え上がらせた男達の
HIPHOPバトル『Paradox Live Dope S
how-2022.5.28 PACIFICO Yokohama N
ational Convention Hall-』レポート

個性的なキャラクターと人気声優が織りなす近未来のHIPHOPを描いたavex✕G CRESTのHIPHOPメディアミックスプロジェクト『Paradox Live』。ライブ・CD・ボイスドラマ・舞台などのクロスメディアで盛り上がる同タイトル初のリアルライブステージが、5月28日にパシフィコ横浜にて開催された。昼夜二公演どちらも満員札止めの盛り上がりを見せた同公演から、迫力のパフォーマンスやビッグニュースの発表で盛り上がった夜の部のレポートをお送りしよう。

■人気声優&アーティスト陣によるラップの饗宴がここに開幕!
“ファントムメダル”と呼ばれる金属製アクセサリーとDNAの化学反応で、感情とリンクした幻影でステージを彩る「幻影ライブ」が若者を熱狂させる近未来のHIPHOPムーヴメント。そんな世界で己の感情をラップに乗せて鎬を削り合うチームの闘いを描いたメディアミックスプロジェクト『Paradox Live』。
楽曲のクオリティもさることながら、CD購入を始めとするファンの応援アクションで得られる「dope point」でチームが激突する「STAGE BATTLE」の勝敗が決まり、その結果がストーリー展開に影響するなどの試みで多くのファンを熱狂させる同プロジェクト初のリアルライブが、5月28日にパシフィコ横浜で開催された。
昼の部では今後展開する2nd STAGE BATTLEからの登場となる4チームを加えた8チームによる熱いパフォーマンスが展開。そして夜の部ではどんなパフォーマンスが繰り広げられるのか…満員札止めとなったパシフィコ横浜のホール内をゆっくりと動くライティングが照らし出す中、ファンは高揚感を秘めながら静かに開幕の時を待っていた。そして場内が暗闇に包まれると同時に、ファンはコンサートライトを手に立ち上がり、いよいよステージの幕は上がった。
●悪漢奴等(近藤孝行、志麻土岐隼一畠中祐、矢野奨吾)
01.TURN IT UP!!!!!! -悪漢SOUL FEVER-
02.BAD BOYZ-悪漢奴等Underground-
オープニングを飾るのは、任侠を重んじるギャング5人組という設定のいかつめなイメージのチーム「悪漢奴等」。ブラック&ゴールドが基調のラフなコーディネートに身を包み、アップテンポな祭り囃子と「そいやっさ!」の囃子詞で「火事と喧嘩は漢の華」とパワフルに畳み掛け、彼ら流のラップ=言葉のチャンバラを繋いで場内を盛り上げていく。
二曲目ではまばゆいゴールデンなライティングとコンサートライトの輝きの中で、メンバーそれぞれが個性的なフロウを繋いで自分達流の生き様を唄い上げていき、場内の熱量を一気にヒートアップさせていった。
●The Cat's Whiskers (竹内良太、林勇、花江夏樹寺島惇太)
03.Ride Out
04.4REAL
悪漢奴等がアゲまくった熱を落ち着かせるように、クールなジャズのメロディと共に登場した二番手のチームは、全員が同じジャズバーに勤めている渋い大人なイメージのチーム「The Cat's Whiskers」。
林 勇_The Cat’s Whiskers
こちらはモノトーンな色使いのジャケットのコーディネートで、ブルーのライティング&コンサートライトの光に包まれながら、語りかけるようなラップを繋いでいく。
竹内良太_The Cat’s Whiskers
二曲目では竹内良太の個性的な低音の渋い歌声と花江夏樹演じる棗リュウのハイテンションなラップが重なり合い、独自のコントラストを描きながら、四人それぞれの生き様と思いを唄い上げていった。
●BAE (梶原岳人、96猫)
05.W△vin' FL△g
06.AmBitious!!!
赤のライティングとコンサートライトに染め上げられたステージに現れた三番手のチームは、日本・ロシア・韓国・アメリカと多彩な出自とそれゆえの複雑な事情を抱えたメンバーが集まった「BAE」。
今回は村瀬歩演じる燕 夏準は歌とキャラビジュアルのみの出演。動画サイトの「歌い手」としてブレイクした96猫演じるアン・フォークナーはステージ中央のスクリーン越しにシルエットで登場し、朱雀野アレンを演じる梶原岳人と歌やラップを合わせていくというトリッキーなパフォーマンスが繰り広げられた。
それぞれに自分を抑圧しながら生きてきた三人が、HIPHOPで自分自身を解き放つというチームらしく、梶原はパワフルなパフォーマンスで、96猫は華麗で伸びやかな低音のボーカルでリリックを紡ぎ、それぞれの個性を見事にアピールしてみせた。
● cozmez(小林裕介、豊永利行)
07.Better Dayz
08.Where they at
水音のような心地よいメロディと共にチーム別ステージのラストを飾るのは、お揃いのカラーリングのパーカーをまとった「cozmez」。社会の底辺で二人だけで生き抜いてきた双子の孤児というキャラのバックグラウンドを持つからこそのダウナーで攻撃的ながらも相手の心に語りかけてくるようなラップは鮮烈にファンの心に刺さっていく。
「なあ珂波汰、まだまだやれんよな?」
あたりめーだ那由汰、俺ら二人の力はこんなもんじゃねーよ」
「だな、二人でいれば…最強だ!」
そんな掛け合いと共に始まった二曲目は、何が何でも戦って生き抜こうとする二人の感情が乗った攻めのラップが繰り広げられ、階段に座り込んで唄ったりステージを練り歩きながら蹴りを放つなど、二人を演じた小林裕介と豊永利行にキャラクターが降りたかのようなフリーパフォーマンスが繰り広げられ、場内を熱く盛り上げた。
各チームのステージを終えてのMCタイムでは、満員のファンを前にしてのリアルライブが実現できた嬉しさに全員がハイテンション! 悪漢奴等はグレイシートレインをしながらステージに現れたりトークでテンパったり、BAEの梶原はステージの感想を聞かれて「楽しかったでーす!」とまるでもうライブが終わったかのようなコメントをしてしまう一幕も。
今回のライブに向けての練習などの話になると、The Cat's Whiskersは今回花江夏樹が出演したことで初めて全員揃ってのパフォーマンスができたことの嬉しさを語り、棗がラップで繰り出す複雑な韻の踏み方を見事にこなして見せた花江のスキルを絶賛。cozmezはスタイル的にあまり踊ったりしないこともあって、ステージ上でのパフォーマンスはほぼフリースタイルだったことや、悪漢奴等は全員揃って練習する機会が無かったため、ほぼぶっつけ本番でステージに挑んだことなどを語り、再びライブがリスタートする。
■ラッパー達の意外な関係性やまさかのボイコットも飛び出したシャッフルステージ
チーム内だけでなく、ここのキャラクター達が様々な繋がりで物語を紡いでいる『Paradox Live』。ライブ中盤戦では、そんな彼らがチームの枠を超えたシャッフルユニットでパフォーマンスを披露する「スペシャルショーケース」がスタート。
09.New & Classic / New & Classic (梶原岳人、竹内良太、林勇)
梶原岳人_BAE
ラッパーとしてのキャリアの長いThe Cat's Whiskersの西門直明/竹内良太と神林匋平/林勇、そして大学での西門の教え子であるBAEの朱雀野アレン/梶原岳人と燕 夏準/村瀬 歩という相容れない世代同士がぶつかり合う「New & Classic」。ジャズのメロディと共に新旧それぞれの世代のプライドや生き様をぶつけ合う渋めのパフォーマンスが繰り広げられた。
10.Rooftop / 屋上のトモダチ(寺島惇太、豊永利行)
寺島惇太_The Cat’s Whiskers
過酷な環境で兄だけを信じて生きてきたcozmezの矢戸乃上那由汰/豊永利行と、そんな彼を怖がりながらも友達でいたいと願うThe Cat's Whiskersの気弱な高校生・闇堂 四季/寺島惇太。そんな二人が紡ぐ「Rooftop」は、静かなピアノのメロディとビルの屋上から見上げる空をバックに繰り広げられる二人のリリックの掛け合い。それぞれ抱く地上の縛りから解き放たれたいという気持ちを空へと唄うエモーショナルなステージとなった。
11.ギラギラCANDY NIGHT / CLUB CANDY (96猫、近藤孝行、志麻、畠中祐)
畠中 祐_悪漢奴等
悪漢奴等の翠石依織/近藤孝行がオーナーを務め、他のメンバーやBAEのアン・フォークナー/96猫が働いているキャバクラ「CLUB CANDY」。ボイスドラマの舞台にもなった店の激しい夜の宴を唄ったのが「ギラギラCANDY NIGHT」だ。
志麻_悪漢奴等
スクリーン映像とライティング、そしてファンが振りかざすコンサートライトが夜の街ならではのギラついた輝きでステージを彩り、悪漢奴等の面々の激しいラップと96猫のカレンでアダルティな歌声が独特のハーモニーを奏でて、一夜の夢のような空間を描きだした。
12.The Sound Of Voltage / SUZAKU & KANATA (梶原岳人、小林裕介)
小林裕介_cozmez
恵まれた家に生まれながらもHIPHOPに理解のない両親の下を離れ、愛するHIPHOPに打ち込むBAEの朱雀野アレン/梶原岳人と、どん底から這い上がる手段としてHIPHOPを選んだcozmezの矢戸乃上珂波汰/小林裕介。互いの才能は認めながらも相容れない二人の野心や感情の激突を唄ったこのナンバーを、二人はステージの上段と下段に分かれて言葉と感情をぶつけ合うラップバトルを展開。そしてクライマックスではそんな二人が同じ目線でステージに向き合い熱いパフォーマンスを繰り広げ、ファンの熱狂と共に場内を盛り上げた。
13.Jumping In to My World / Lollipopuniverse (96猫、花江夏樹、豊永利行、矢野奨吾)
花江夏樹_The Cat’s Whiskers
BAEのアン・フォークナー/96猫、The Cat's Whiskersの棗リュウ/花江夏樹、悪漢奴等の円山玲央/矢野奨吾という各チームのハイテンションな個性派軍団に、何故か巻き込まれるように加わったcozmezの矢戸乃上那由汰/豊永利行。そんな四人が送るこのナンバーは、「Jumping In to My World」。
矢野奨吾_悪漢奴等
スクリーン上にドーナツやユニコーンなどのメルヘン&ポップなビジュアルが飛び交う中でアゲアゲなラップと歌が飛び交うパフォーマンスが繰り広げられたが、那由汰/豊永だけはそれに加わろうとせず仏頂面のまま。だが花江/リュウがハイテンションなラップとパフォーマンスを繰り広げながら、玲央/矢野と共に周りをグルグル回り出すと観念し、クライマックスは彼も強引に巻き込んでのパフォーマンスで、シャッフルユニットステージのシメを見事に盛り上げてみせた。
疲れ切ったようにふてくされて座り込む那由汰/豊永をステージに残したまま、二度目のMCタイムがスタート。それぞれの曲とパフォーマンスの感想が語られる中、話題は先程の「Jumping In to My World」の話に。豊永は練習用の振り付け動画を見た時に、自分の中の那由汰が「やらねーよ!」と言ってきたように感じ、パフォーマンスを拒否する那由汰をみんなが巻き込んでいく形の演出にしたと種明かし。
そのために歌の取りまとめをまかされた96猫が「楽しかったけど那由汰はやってくれなかったなー」と冗談めかしながら話し、豊永は客席と配信で見ているファンに「演出だからね?」と念を押して笑いを誘っていた。そしてライブはいよいよ各チームが再びパフォーマンスをぶつけ合うクライマックスへと突入する。
■ステージにレジェンド降臨…そして終演後にはビッグニュースも!
14.Takin‘ Over / cozmez (小林裕介、豊永利行)
豊永利行_cozmez
スクリーンには乱れる映像が映し出され、ダークなライティングと共に登場したのはcozmezの二人。重々しいメロディと共に始まった「Takin‘ Over」は、最悪の環境の中で育ち、生き残りのし上がるための手段としてラップを選んだ二人の生々しい感情が爆発したナンバー。どん底から這い上がってやるという気持ちを吐き出すようなリリックをツナ家だ重厚なラップは、彼らの生き様そのもののをステージに描きだしてみせた。
15.Life Is Beautiful / The Cat‘s Whiskers (竹内良太、林勇、花江夏樹、寺島惇太)
前曲のダークな雰囲気を振り払うようにスクリーンには様々な人達が生きる都市の風景が映し出され、それをバックにマイクスタンドと共にThe Cat‘s Whiskers の四人が登場。落ち着いたジャズのメロディに乗せて、四者四様の生きる喜びを大人びたラップや客席と心を合わせたクラップと共にも熱唱。様々な人生や経験を積み重ねた者だけが表現できる大人なステージが繰り広げられた。
16.ROWDIEZ -悪漢奴等Wanted Vibes- / 悪漢奴等(近藤孝行、志麻、土岐隼一、畠中祐、矢野奨吾)
近藤孝行_悪漢奴等
土岐隼一_悪漢奴等
燃えるような真紅のライティングとスクリーンに映し出されたねぶたの映像の中、ライブタオルを手にした悪漢奴等の五人が登場。声援を送るファンを俺達と同じ六人目のメンバーだと豪語し、一緒に熱い「漢の祭」を楽しもうと野太く力強いリリックで客席のファンを自分達の世界へと巻き込んでいく。手にしたタオルを要所要所でパワフルに振り回し、ファンも輝かせたコンサートライトを同じように回して応え、いつしかパシフィコ横浜は熱くてデンジャラスな祭の空間へとなっていった。

17.F△Bulous / BAE (梶原岳人、96猫)
チームごとのパフォーマンスの最後を飾るのは、自分らしく生きるためにHIPHOPで繋がったBAEの三人。ポップな映像とアップテンポなメロディと共に、三人それぞれの「自分らしく生きたい」気持ちをラップに乗せて紡ぎ出していく。そしてスクリーンの中の燕/村瀬とアン/96猫の分まで、アレン/梶原がステージを縦横無尽に走り回って、自分達の思いをリアルな肉体で客席のファンへと届いていく。そしてラストは梶原の「行くぞ!」のかけ声と共に場内と一体になって盛り上がりながら、ステージを締めくくった。
18.BURAIKAN is Back / 武雷管(小野賢章諏訪部順一)
チームそれぞれのナンバーが終わり、あとはフィナーレかと思われたその時、スクリーンには黒い雲に覆われた雷鳴轟く空の映像が映し出される。そして場内に雷鳴が轟くと、ステージには黒とゴールドのコーディネートに身を包んだ二人の男が登場…劇中では伝説のチームとして語り継がれ、HIPPOPシーンと幻影ライブに新たな伝説を刻むべく復活したチーム「武雷管」の九頭竜智生/小野賢章と辰宮晴臣/諏訪部順一だ。
小野賢章_武雷管
諏訪部順一_武雷管
配信/リアルの双方でライブ初登場の上に、キャラクターも演者も百戦錬磨のベテランだけに、凄まじいまでの存在感で場内を自分達の色に染め上げながら、HIPHOPの王者としての誇りと想い、そして新たな若いチームによって火を付けられた闘争心を重厚で力強いラップとパフォーマンスで熱唱。劇中では彼らが仕掛けた次なるSTAGE BATTLEの幕が開こうとしているところだけに、昼夜公演を合わせて新たなる『Paradox Live』の幕をリアルで開くような形で、ステージは締めくくられた。
最後のMCタイムは全員が武雷管のパフォーマンスに対して「ラスボス感はんぱない」と盛り上がりながらスタート。それを受けて「どーも、遅れてきたレジェンドです」「待ち疲れたよ!」と小野賢章と諏訪部順一も再びステージに登場し「新人ユニットです」(小野) 「ラーメン屋のオヤジです(※劇中での辰宮はHIPHOPの時以外は中華料理店を切り盛りしている)」(諏訪部)と笑いを誘うあいさつや、劇中同様に他のチームを挑発してのアピール合戦などで場内を盛り上げてステージを後にした。
そして出演陣による『Paradox Live』の最新情報告知を経て、いよいよライブはラストナンバーに。
19.Rap Guerrilla -Paradox Live All ARTISTS-(梶原岳人、96猫、竹内良太、林勇、花江夏樹、寺島惇太、小林裕介、豊永利行、近藤孝行、志麻、土岐隼一、畠中祐、矢野奨吾)
ラストを飾るのは出演陣全員による全員によるナンバーで、ゆったりとしたメロディにのせて全員がラップでそれぞれの想いをアピールし、時にはラップバトルになりかけることも。だが、それらにはすべて各キャラクターならではのHIPHOPへの情熱が織り込まれ、彼らがこれから織りなしていく『Paradox Live』の物語への期待を高めていった。それに応える様に客席のファンもそれぞれの推しに合わせてコンサートライトを輝かせ、場内を極彩色の輝きに包み込んでいった。
曲を終えて全員が「ありがとうございました!」とライブを盛り上げてくれたファンにお礼を述べて深々と一礼。そして改めて武雷管の二人も登場してファンへの感謝を伝えた。そしてチームごとにステージから引き上げていく際には「ラーメン食いに行こうぜ 武雷管のおごりで」(珂波汰/小林裕介)などキャラにちなんだセリフや仕草を見せてファンサービス。そしてラストは梶原がスクリーン越しの96猫とハイタッチを決めてファンの歓声を誘って、『Paradox Live』初のリアルライブは大団円で幕を閉じた。
ステージのライティングも消えて、これで最後かとファンの誰もが想った時、スクリーンに映し出されたのは『Paradox Live』テレビアニメ化決定の告知!
TVアニメ『Paradox Live』ロゴ
『Paradox Live』TVアニメ決定記念イラスト (c)Paradox Live2022
まさかのサプライズに会場と配信双方のファンも大いに盛り上がりながら、今度こそライブは終演となった。
クオリティも高くバラエティに富んだHIPHOPと個性派キャラクターが織りなすドラマが魅力的な『Paradox Live』。まだ彼らをよく知らないという人は、2023年のテレビアニメに向けてまずは彼らのラップに魂を委ねて、ひいきのチームを見つけてみてはどうだろうか。
取材・文=斉藤直樹

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