ワッツ・オン・ブロードウェイ?~B
’wayミュージカル非公式ガイド【20
22年・遅れて来た春号】
基本的に1月(冬)、4月(春)、7月(夏)、10月(秋)の季刊ペースで更新することにしているこの連載だが、ブロードウェイに行けない期間が長すぎてやる気もネタも尽きてしまい、この4月には2022年春号をお届けすることができなかった。しかし今、2か月遅れでお届けしようとしているのには明確な理由がある――ブロードウェイに来ているのだ。「2か月遅れの更新」と、3年間夢に見るほど待ち詫びた筆者にようやく「春が来た」のダブルミーニングによる「遅れて来た春号」である。
上演中のミュージカルの日本人的みどころを紹介していく、という本来の趣旨には、次号から戻っていくとして。今回はまず、まだコロナ禍が終息はしていない今、日本からブロードウェイに行くことの難しさと意義を綴らせていただこう。あくまで個人の体験に基づく主観であり、また状況は刻々と変わるため、実際に渡航される際の直接的な資料にはしないでいただきたいのだが、行きたいが迷っている際などの参考になれば幸いだ。
■必要な手続き
現在アメリカ・日本とも、ワクチン3回接種証明書と直近のPCR検査の陰性証明書があれば、入国後の隔離期間は不要となっている。ただこの接種証明書の取得には時間が、陰性証明書には費用が掛かるので要注意。いや、既にマイナカードを所持していれば接種証明書アプリは割とすぐ入手できるのだが、未所持だった筆者にはこれだけで1か月仕事だった。そしてPCR検査だが、日本でもアメリカでも検査自体は無料でできるところが増えているものの、渡航に必要な証明書付となると数千円から数万円掛かる。この幅が曲者で、安いものでも大丈夫ではあるのだろうと思いつつ、万が一不備があって入国拒否されたら…とか考え始めるとそれなりのお金は出してしまうのが人間だ。筆者は日本とアメリカの2回で計3万5千円ほど積んだ。ちなみに、こんなに苦労して取得したというのに今のところ、どちらの証明書もアメリカでは入国審査時含め、まだ一度も提出を求められていない…。
■覚悟すべきこと
費用が掛かると言えば、旅自体もだ。コロナ前は航空券+ホテルのセットプランを利用することが多かったが、それだとキャンセルや変更が利かない。いつ状況が変わるか分からないなかでそれは危険(状況悪化してるけどもったいないから行っちゃおう!的発想になりそう)と判断し、変更可能な航空券とギリギリまでキャンセルできるホテルを別々に予約したら、いつもの1.5倍ほど掛かった。加えて、この円安である。ブロードウェイのチケット代はそもそも値上がりし続けているため、生ヒュー・ジャックマンを拝むにはやはり3万5千円の覚悟が必要だし、観劇の合間に何をしても高くつく。そして、そんな費用問題以上に差し迫っているのがもちろん感染リスク。劇場ではマスクが必須だが、街中ではもはや誰もしておらず、筆者はもちろん常時着用だが帰国前PCR検査までドキドキの日々である。もし日本に持ち帰ったら真っ白い目で見られることも含めて、覚悟すべきことの一つだろう。
■それでも行くべきか?
面倒な手続きしてお金掛けてリスク背負って、そこまでして行く意義があるのか? 答えは人それぞれだろうが、少なくとも筆者は今、来たことを一ミリも後悔していない。作品とかキャストとか街の雰囲気とか以前に、ブロードウェイの「劇場」そのものがたまらなく好きなのだと、3年以上ぶりに来たことで改めて悟ったからだ。天井が低くて舞台が近くて床が斜めでゴテゴテしてて音響が良くてアメリカ人観客がいる、あの劇場にいるだけでむせび泣けるほど幸せ。もしもこの点に共感する読者がいたら(いるのか?)、すぐにでも面倒な手続きに着手されることを全力でお勧めする。マスク着用義務があるだけで、劇場は何も変わっていないし、歓声・会話禁止や整理退場といった日本ではおなじみの規制も一切ない。だからこそドキドキの日々でもあるのだが、この興奮はやはり何物にも代えがたい――!
【2022-2023シーズンの新作】
*情報は2022年5月25日時点のもの
*情報は2022年5月25日時点のもの
『1776』6月プレビュー開始予定
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/
1969年のトニー賞受賞作をD・パウラス演出でリバイバル。米国独立宣言の裏側を描く。
https://www.roundabouttheatre.org/get-tickets/upcoming/1776/
『A Beautiful Noise』11月プレビュー開始予定
ニール・ダイアモンドの伝記系ジュークボックス。M・メイヤー演出、W・スウェンソン主演。
https://abeautifulnoisethemusical.com/
ニール・ダイアモンドの伝記系ジュークボックス。M・メイヤー演出、W・スウェンソン主演。
https://abeautifulnoisethemusical.com/
【2021-2022シーズンの作品(6月発表のトニー賞対象作】
『for colored girls who have considered suicide/ when the rainbow is enuf』6月6日まで
黒人女性の内面を詩や音楽で描く“Choreopoem(舞踊詩)”。1976年初演作のリバイバル。
https://forcoloredgirlsbway.com/
黒人女性の内面を詩や音楽で描く“Choreopoem(舞踊詩)”。1976年初演作のリバイバル。
https://forcoloredgirlsbway.com/
『Girl From the North Country』
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
ボブ・ディランの楽曲がちりばめられてはいるが、作りとしては完全にプレイ。要英語力。
https://northcountryonbroadway.com/
『Mr. Saturday Night』
ビリー・クリスタル監督・脚本・主演映画の舞台化に本人が主演。音楽はJ・R・ブラウン。https://mrsaturdaynightonbroadway.com/
【ロングラン作品】
■日本で既に上演された/されている作品
『アラジン』
ディズニーアニメが舞台ならではの手法で表現された秀作。魔法の絨毯は本当に魔法。
https://www.aladdinthemusical.com/
https://www.aladdinthemusical.com/
■日本未上演の作品
『ブック・オブ・モルモン』
日本では永遠に上演されなさそうだが超絶面白い。モルモン教だけwikiで調べて観るべし。
https://bookofmormonbroadway.com/
https://bookofmormonbroadway.com/
SPICE
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