不可能のその先へ。青薔薇の大きな覚
悟と小さな一歩『Episode of Roseli
a DAY2 : Rose』ライブレポート

昨年12月の「Edelstein」以来、約半年ぶりとなるRoseliaの単独ライブ「Episode of Roselia」が5月21日(土)、5月22日(日)の2日間に渡り、山梨県の富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催された。1日目は「Weißklee(ヴァイスクレー)」、2日目は「Rose(ローゼ)」と題され、それぞれRoseliaのこれまでとこれからをテーマに物語が紡がれていった。今回レポートをお届けする「Rose」はRoseliaのこれからを示す公演だ。まさに「Episode of Roselia」の名に恥じない、これまでのRoseliaの全てを詰め込んだ圧巻の初日を経て、これからのRoseliaとは一体どんな物語になっていくのだろうか。未来のことは誰にも分からないけど、小さな一歩の積み重ねが未だ見ぬ世界へと続いていくことには間違いない。そして今「Rose」という新たな第一歩へと、Roseliaは踏み込んだ。

昨夜の興奮が未だ冷めやまない。改めて単独の2DAYSをコニファーフォレストで行うというスケールの大きさも、その片棒を担いでいるとは思うが、やはり「DAY1:Weißklee」のセットリストは完璧だった。呼び込みのキャラクター紹介の映像が流れると、1人ずつRoseliaのメンバーがステージ上へと姿を現す。この日の1曲目は「Sing Alive」。これからのRoseliaを象徴するにふさわしい、前向きなスタートだ。「DAY2、盛り上がっていくわよ!」と客席を煽りながら「BLACK SHOUT」でその勢いをさらに増していく。
「皆さん、今日はお越しいただきありがとう。今日という日を楽しみにしていてくれたかしら?」と友希那から挨拶があると、公演中の諸注意がアナウンスされる。「今日は未来へ繋がる大切な思い出たちと、これからの私たちを皆へ届けるわ」と「FIRE BIRD」を披露。コニファーフォレストならではの迫力ある炎の特殊効果も3曲目から惜しみなく噴き乱れる。続けて「R」ではツーステを踏みながらのパフォーマンスで、段々と場内のテンションも熱気を帯びていく。
「今回もアツいセットリストを持ってきたんだよ!」と話すあこに「3曲目、FIRE BIRDって珍しくない?」とリサが応じる。「今日は晴れたね!」と昨日のライブを振り返りながらも「晴れたんだけど……富士山が見えないね」と語りかけるリサに「おーい富士山、恥ずかしがらないで私たちのライブを見てもいいのよ」と返す友希那。「まだまだこれからどうなるか分からないことだらけだけど、辛いこと苦しいことがあったら今日という日を思い出して欲しい。Roseliaという帰る場所があることを貴方たちに思い出してほしい」とここで「Sprechchor」を披露し、「交わした約束を忘れないで」と続けて「約束」を演奏した。これまでのRoseliaがそうだったように、茨の道でも良いんだよと、包み込むようなパフォーマンスを2曲続けた。
ここで一度メンバーはステージ上からハケて、昨日に引き続き“キャラくず”のお時間がやってきた。企画の趣旨等は前日のライブレポでも説明しているので割愛させて頂くが、公演に合わせて、本日は“これからのRoselia”を中心とした問題が出題された。「本日の仕事終わりに相羽あいなさんが飲みたい飲み物はどっち?」というトリッキーな問題から始まり、アハ体験的な画像問題、メンバーの芸人魂をくすぐるカップ焼きそばの問題など、大いに笑わせてもらった。
7曲目はライブ初披露となる「閃光」。Eveによる提供曲ということで「演奏してみて、どうだった?」とメンバーに問いかける。「やっぱり新鮮だよね」と紗夜。話は変わって「誰が優勝で、誰がビリか予想しません?」と“キャラくず”にもMCで触れると「昨日ビリだった紗夜さんがそれを言いだすの?」とあこ。「でも実は紗夜さんって過去に優勝経験もあるのよね?」と友希那がフォローすると「あれ?逆に優勝経験ない人、この中にいます??」と急に紗夜がマウントを取り出す。ペンライトの色で会場の予想を投票すると、優勝は圧倒的多数で中島、ビリ予想は工藤と相羽が半々といった所だろうか。
8曲目に披露したのは「Neo-Aspect」、 そして「熱色スターマイン」と続くと場内は赤いペンライトで染まり、メンバーやカメラに向かってレスポンスを求めるように煽りながらそのハイトーンボイスを響かせていく。「私たちいつも8月にここでライブしているけど、5月にやるのは初めてよね」と友希那。コニファーフォレストならではの炎や花火といった大迫力の特効も思えば久々の演出だ。また富士急ハイランドの思い出としてお化け屋敷を挙げて「工藤さんと2人でお化け屋敷に入ったのよ」と相羽が話を始めると「相羽さんが腕にしがみついてくるんですけど、まあ動きづらいわけですよ。お化けが出てきたらそりゃビックリもするので、ワーッて手を離して逃げたんですけど、そしたらさっきまであんなに怖がってた相羽さんが「待てコラーッ!」って追いかけて来た」と、ある意味お化けより怖い体験で笑いを取る。
「私たちが進む道は決して平坦ではない茨の道でも、私たち5人の奏でる音でなら、貴方たちの想いも一緒に、繋がる未来へ進むことが出来るわ!」とこれからの決意を胸に「“UNIONS” Road」を披露。続く「Singing “OURS”」はピアノ伴奏のソロから始まり、リサ・紗夜・あこもブースから飛び出すと、友希那と燐子に寄り添うように腰掛けて想いをひとつに重ねる。「強い志-こころ-集めて また、始まる」と友希那が歌い上げたように、Roseliaの物語はまたここから始まるのだと、改めて思わされた。
「最後にみんなの今の気持ちを聞こうかしら」と友希那が語りかけ、メンバーからの感謝の言葉が並べられる。「この5人で立つステージが大好きなんです」と語る燐子、「もう次のライブが楽しみ!」と無邪気に笑うあこ、「ステージから見えるこの景色がやっぱり好き。またみんなに会えますように」と再会を約束するリサ、「自分のこれまでの道のりを噛み締めながら、この5人で音を奏でることが出来て本当に嬉しかったです」とクールな紗夜、「歌が好きだと言える今だからこそ、出来たパフォーマンスだと思う。まだ始まったばかりの青薔薇の道をこれからも歩き続けるわ。これからも付いてきて!」と「Rose」が指し示すRoseliaのこれからについて言及する友希那。「皆が持っているそのブレードを青色に光らせてくれるかしら?」と最後は「ROZEN HORIZON」を披露。ピアノソロから始まるアレンジが胸をアツくさせる。青い炎が燃え盛り、アウトロまで全員で全力でシングアロングをしていく。その姿はまさに“全身全霊”という言葉そのもので、この2日間で浴びてきたどの音楽よりも限界に達していたと思う。
アンコール前に最終結果が気になる最後の幕間での“キャラくず”が上映され、青い薔薇がモチーフの茨城県章で同県出身の櫻川が熱弁したり、幸せな未来を手繰り寄せろ!と1/2で罰ゲームのカードを引くという運任せな企画もあったが、最後は大どんでん返しで相羽の飲みたい飲み物をメンバー全員が外し、まさかの全滅。メンバー全員が画面外に消える #ゼロゼリア 状態となってしまったのもいい思い出となった。最終結果は優勝が下馬評通り中島で、櫻川、志崎と続き、最下位は工藤・相羽の同率と会場予想の通りとなったのもお笑い種だ。
すっかり日も暮れてステージは暗闇に包まれてしまった。アンコールを求める拍手に応じてメンバーが再びステージへと現れると「さっきも貴方たちに聞いたんだけど、もう一度聞きたい。貴方たち、Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」と問う。「ここから先は私たちが選ぶ、新しい青薔薇の道。いつかまた会いましょう」と「Song I am.」そして「LOUDER」を立て続けに披露した。特に「LOUDER」は前日にも披露していただけに「Rose」でも演奏されたことに驚いた方も多かったのではないだろうか。そしてラストのサビ前の長い沈黙だ。高ぶる感情をグッとこらえ、拍手でその想いに応えたことだろう。“これから”に向けて、目線は上向きへとなったRoseliaは清々しいほどの笑顔で「今日という日を忘れないで!」と感謝を述べ、昨日に引き続き“キャラくず”の罰ゲームの退場アナウンスも、結局はメンバー全員仲良くで読み上げると「じゃあね!バイバーイ!」といっぱいの笑顔で颯爽と姿を消した。
話は変わるが、薔薇の花には5000年以上の歴史と、25000種以上も品種があると言われている。それだけの種類があっても、どんなに品種改良を加えてきても、つい最近まで青い薔薇は空想上の植物だった。ほんの20年前までは不可能の代名詞だった青い薔薇だが、長きに渡る研究の末に現在は実在の花となった。同様に、Roseliaという存在が実在し続けている事こそが、どんな困難も乗り越えていけるという何よりの証明であるように思うし、そんな薔薇の歴史から紐解けば、5年目に突入した青薔薇の物語もまだ始まったばかりにすら感じる。
閑話休題、ミニAlbum「ROZEN HORIZON」のリリース時にElements Gardenの上松範康氏にインタビューさせていただいた際に彼はこう語っていた。「限界を超えた先に感動が生まれるはずだ」と。もちろん言葉の意味としては理解していたつもりだったが、今日のRoseliaを見て、改めて言葉だけじゃなく身体で、その発言の真意を理解できた。全員で、全身で、全力で演奏していた「ROZEN HORIZON」は間違いなくRoseliaがこれまでの限界を超えた瞬間であった。
また前日の「DAY1:Weißklee」とセットリストの内容もガラッと変わっていたことも特筆すべきだろう。これだけの数の楽曲を身体に叩き込むには相当の練習量が必要なはずだ。改めてこの週末に向けてのRoseliaの気合いの入りように感服せざるを得ない。やはり“Roseliaを超えられるのはRoseliaだけ”なのだ。メンバー同士で、そしてファンと交わした音の数だけ、Roseliaは進化しているのだと強く感じた。
そしてこうやってライブを改めて振り返ると「Sprechchor」の歌詞がより印象深くなっていることに気付く。「大事なものを抱え込んでいては 新たな大事さ拾えないから 手放す勇気が未来を創る」。この日のアンコールラストにもってきた「LOUDER」は、過去との決別であるように私は感じた。昨日の演奏には無かったラスサビ前のあの静寂。友希那はあの瞬間に一体何を思っていたのだろう。決して“もう2度と演奏しない”ということだけが、決別ではない。そして、今だからこそ言える確かなことは「LOUDER」を頼りしていたRoseliaは、もう何処にもいないという事だ。“これまで”を振り返るための昨日の「LOUDER」以上に、“これから”のRoseliaを表現するのにも必要だとセットリストに組み込まれた「LOUDER」の方が、大きな意味を持つと思う。きっと、やっと本当の意味で「LOUDER」から卒業できたんじゃないだろうか。これが“未来を創る勇気”なのだと私は受け取った。だからこそ、最後に自分自身に問いておく為にも記しておこう。「貴方たち、Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」のかと。
レポート・文:前田勇介 Photo ハタサトシ、福岡諒祠(GEKKO)、池上夢貢(GEKKO)

『Episode of Roselia DAY1 : Weißklee』のライブレポートも公開中、詳しくは下記をチェック。

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