並澤和奈役の小野花梨

並澤和奈役の小野花梨

【インタビュー】映画『ハケンアニメ
!』小野花梨 「カムカムエヴリバデ
ィ」のきぬちゃんから天才アニメータ
ー役へ! 俳優業で大切にしているの
は「他の人と自分を比べないこと」

 直木賞作家・辻村深月の同名ベストセラー小説を原作に、テレビアニメの制作に情熱を注ぐクリエーターたちの奮闘を描いた『ハケンアニメ!』が5月20日から全国公開となる。本作で“神作画の天才アニメーター”並澤和奈を演じるのは、NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(21~22)の“きぬちゃん”役で注目を集め、現在は「恋なんて、本気でやってどうするの?」(フジテレビ系)にも出演中の小野花梨。和奈役に込めた思いと、本作で描かれたメッセージを、子役時代から俳優として歩んできた自らの経験を踏まえながら語ってくれた。
-並澤和奈が仕事に取り組むときの真剣な表情と、プライベートでの穏やかな表情のギャップが人間味を感じさせて印象的でした。演じる上で、どんなことを心掛けましたか。
 並澤和奈は、まだ20代前半にも関わらず、すでにそうそうたるベテランのスタッフを納得させるだけの力を持ち、「神作画の天才アニメーター」と注目を集めているんですよね。それだけを聞いたときには、“いかにも天才”みたいな女の子かと思ったんです。でも実は、仕事以外では自分に自信がなかったり、男性とデートするときにはウキウキしておめかししたり、ちょっとしたことに一喜一憂する人間らしい一面も描かれている。だから、天才アニメーターという部分に引っ張られ過ぎず、「彼女にも彼女なりの人生がある」と考え、人間としてリアルでいることを意識しました。
-続いて、天才アニメーターという点に関連し、小野さんの「天才像」についてお聞きします。今まで出会った中で、「この人は天才だ」と思った人はいますか。
 例えば、絵を見て「これを描いた人、天才!」とか「電子レンジ作った人、天才!」みたいなことはよく思います。でも、実際に「天才」という言葉に心が揺れたことはないかもしれません。天才って、すごく便利な言葉だけど、ちょっと安易な気がするんです。天才は“生まれた瞬間から出来上がっている”というイメージですけど、そう見える人も、実は裏にいろんなことがあるはずなんですよね。私が会ったことのある監督たちも、皆さんものすごく考えているし、いろんな人の力を借りてものを作っています。だから、「自分は天才だぜ」って1人でひょうひょうとなんでもこなす人って、たぶんいないと思うんです。そこでもがいている姿がいとおしくて愛せるし、尊敬できるし…。
-確かにそうですね。
 それを全部、天才の一言で収めちゃうのは、ちょっともったいないかなって。むしろ、「こんなすごい人でも、こんなに苦しんでものを作っているなら、私ももっと頑張らなきゃ」って元気をもらうことの方が多い気がします。
-その考え方は、並澤和奈という役にも反映されていそうですね。
 そうですね。そういう努力が自信になり、絵に出るはずなので。だから、仕事に関しては“ものすごく努力してきた女の子”と解釈して演じました。
-アニメの制作現場を舞台にしたこの映画には、並澤和奈以外にも、さまざまなスタッフやキャストが意見をぶつけ合い、いい作品を作ろうとする姿が描かれています。そういう姿勢は、小野さんが普段接している実写映画やテレビドラマの現場にも通じると思いますが、共感できる部分はありましたか。
 すごく共感できました。「ある」どころか「そのまま」という感じで(笑)。それぞれに自分の役割があり、こだわりがあるけど、それを一つの作品に仕上げようとすると、どうしてもぶつかる部分は出てくる。だから、今回はこれを優先するから、自分のやりたいことはできないとか、時には「そんなのできない」と怒る人がいるかと思えば、「私がやるよ」と引き受けてくれる人もいて。映画やテレビドラマの現場も全く同じです。だから、“物づくり”って、きっと根本的にはどこも同じなんだろうなと勉強になりました。
-それでは、並澤和奈にとってのアニメーションのように、小野さんが情熱を傾けられるものはありますか。
 今のお仕事がまさにそうです。一つ一つのお仕事に命を燃やして、真剣に取り組んでいるので、このお仕事に出会えて本当によかったと思っています。
-そんな役者の仕事を子役時代から長く続けてきた中で、大切にしていることはなんでしょうか。
 大切にしていることはたくさんありますが、一番は「他の人と自分を比べないこと」です。今まで、人と比べていい結果に結びついたことってないんですよね。気が付くと「あの子いいな」とうらやましがったり、悔しがったりしていることもありますけど、そんなときは「人と比べない、人と比べない」って自分に暗示をかけるようにしています。「大丈夫、大丈夫。私は私、あの子はあの子。みんなそうやって自分の人生を生きているんだ」と言い聞かせて。だから、「私は私の線路を引いて、そこを歩くんだ」という気持ちはすごく強い方だと思います。
-過去にそういう失敗を経験したということでしょうか。
 そうなんです。人と比べて落ちこみまくって、自暴自棄になって、「もうやだ!」って思った時期もありましたから。中学、高校の頃には、同じぐらいにデビューした周りの子がどんどん売れていったり、私よりも後にデビューした子が連ドラに主演したりすることがよくあったんです。「売れている、売れていない」とか「仕事がある、仕事がない」みたいなことがこんなに分かりやすく出る世界って他にないですよね。だから、その中で自分を強く持ってやっていくには、「他の人と自分を比べない」は必須かなと思っています。
-そういう姿勢は、この作品の登場人物たちにも通じる部分がありそうですね。
 ありますね。王子千晴監督(中村倫也)に憧れているといっても、斎藤瞳監督(吉岡里帆)が、ライバルの王子監督に寄せていったらそれは違うし…。どんな世界でも、根本は同じで、通じる部分があると思います。もしかしたら、仕事だけでなく、人として生きる上で大事なことかもしれません。
-この映画では、そんなふうに「自分の道を信じて歩めば、見ていてくれる人はきっといる」ということも描かれていますね。
 そう思います。きっとどこかに見てくれる人はいて、頑張っていればその誰かに届く。だから、努力を続けることには意味がある。そういうことを描いているのも、この映画のいいところだと思います。私もそう信じて、これからもやっていきたいです。
(取材・文・写真/井上健一)

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