【安月名莉子 インタビュー】
歌っても気持ち良いし、
聴いても気持ち良い
曲や歌詞は私にとっての
お薬みたいな感じ
続いてカップリングの「はいてはすう」ですが、タイトルは深呼吸を意味しているのですか?
はい。ちょうど前作の「知らなきゃ」(2022年1月発表)を制作している頃に、私たちが呼吸をしているくらいの感覚で歌うことが当たり前のように歌いたいとか、息を吐いたり吸ったりする音をそのまま曲にしたいといったことを、スタッフさんに話したことがあって。その話をもとに、この曲が出来上がったんです。息を吸ったり吐いたりする音でリズムが刻まれていて、最初に聴いた時はすごくテンションが上がりました。
この歌詞にも安月名さんのその時の心境が反映されているのですか?
そうですね。例えば2番に《書きかけ作詞/きっと刺さんない 破いてぽいだ》というところがあって、そこはまさしく私です(笑)。私も曲や歌詞を書いたりするんですけど、いつも苦戦して、書いても“絶対に誰にも刺さらないだろうな〜”って丸めてポイして、また書き直すということをよくやるので。あと、“K-POP”という言葉も出てくるのですが、私はK-POP全般が大好きで。
K-POPがお好きなんですね。
好きです! 実際に自分で曲を書くと、同じ言葉を繰り返すなどK-POPっぽいニュアンスがあると感じるので、普段聴いている音楽のジャンルに影響されるんだなと実感します。それに、実際に私が歌っている曲はK-POP要素がなさそうに思うかもしれませんが、一曲の長さが短かったり、この「はいてはすう」のように耳に残って離れない感じがあったり、そういうキャッチーさはK-POPに通じるものがあると思いますね。
他に歌詞に出てくる安月名さんネタは?
1番の歌詞で《エモまって赤い目でやばいゆったら年下の子にドン引かれた》ってあるんですけど、この年下の子はnonocちゃんのことです(笑)。
何にドン引かれたんですか?
もうドン引かれることはしょっちゅうあるんですけど…例えばみんなで食事をした時に、手羽元が鶏のどの部位か分からなくて、nonocちゃんが“え!?”って感じで“マジで言ってます?”って(笑)。その後、“そこまで言うことなくない?”と思うくらいズタボロに言われました。
何かあるたびに、マネージャーさんやスタッフさんがそれをメモっていた?
でも、フランクな状況でスタッフさんにお伝えしたことや何気ない出来事がたくさん詰め込まれていて、“覚えていてくださってたんだな”と愛を感じて嬉しかったです。
まだまだネタはありそうですね。
私が知らされていないだけで、まだまだたくさんあると思います(笑)。だから、最初にこの歌詞を読んだ時は、“これはあの時のことを言ってるのかな?”とか“こう思われてたんだ!”と気づかされることが多くて。改めて自分自身を振り返ったみたいな気持ちになりました。
安月名さん自身を戒めながら癒やしてくれる曲でもあると。
まさに。前作のカップリングの「知らない」も含めて、私の楽曲はその時の私の心境を表していることが多くて。同時にスタッフや作詞のタナカ零さんからのメッセージにもなっていたりと、曲や歌詞は私にとってのお薬みたいな感じでもあります(笑)。
楽曲としてはアコーディオンがケルティックなメロディーを延々と奏でているなど、サウンド面でも面白いところがいっぱいありますね。
歌詞は暗い部分も多いですけど、このサウンドが世界観を明るくかつ不思議なものにしてくれているという印象ですね。今お話したように歌詞にはちょっと痛みが入っていますが、だからこそ歌う時はカラッと明るく歌いたいと思ったんです。こういう自分の感情が投影された曲って歌詞のままストレートに歌いたくなるのですが、今回は歌詞の内容に反した歌い方が初めてできました。
息を吸ったり吐いたりする音は?
あれは私が実際に息を吸ったり吐いたりして録ったんですけど、ちょうど花粉の時期だったのでちょっと鼻が詰まっています(笑)。でも、初めての経験で面白かったです。あと、途中でクラップも入ってくるので、ライヴではみんなでクラップして盛り上がることができたらいいなと今から想像が膨らみます。
アコーディオンのレコーディングは見学したのですか?
スケジュールが合わなくて見られなかったんですけど、アコーディオンを弾いてくださった中村大史さんの本業はギタリストで、これまでの私の楽曲でもよく弾いてくださっていて。ケルトミュージックのバンドもやられているそうです。ちなみにギターとベースは作詞と作編曲のタナカ零さんがご自身で全部弾いてくださっています。
ジャケ写とアー写ですが、今までは黒が多いビジュアルでしたけど、今回はカラフルなペンキがぶちまけられた中に安月名さんがいるという。
外からカラフルな色をぶちまけられた透明な箱の中に、白い服を着た私がいるのですが、どんなに世間がカラフルに染まっても私自身は何色にも染まらないという…つまり、自分らしさを表現しています。衣装の襟がセーラー服みたいになっていて、そこは『モブせか』の学園モノという世界にマッチできたらいいなと思ってそうしました。また新しい安月名莉子をお見せすることができたんじゃないかと思いますね。
新しい安月名さんと言えば、なんと声優になられたそうで!
はい! 4月1日から声優事務所のEARLY WINGさんに所属させていただいています。
どうして声優を志したのですか?
私はもともと舞台に立っていた経験もあるので、歌だけでなく演じること全般が好きなんです。一度演技の世界を離れ、今の活動を通してたくさんの声優さんとお話などするうちに、やっぱり自分は演じることが好きなんだと気づきました。そこで、もう一度チャレンジしてみようと思って。実は2年ぐらい前から水面下で基礎レッスンを受けていたんです。今までゲスト声優というかたちで作品にかかわらせていただいたことはあったのですが、これからは作品のオーディションを受けて役を勝ち取れるように頑張ります!
取材:榑林史章