【追悼】ラクリマ~ALvino~ALICE IN MENSWEAR KOJIが愛したギタリスト人生に輝く5曲

【追悼】ラクリマ~ALvino~ALICE IN MENSWEAR KOJIが愛したギタリスト人生に輝く5曲

【追悼】
ラクリマ~ALvino~
ALICE IN MENSWEAR
KOJIが愛した
ギタリスト人生に輝く5曲

4月15日、闘病中だったALICE IN MENSWEARのギタリスト・KOJIが旅立った。つい先日2月末にはYouTubeで自身の病状報告とこれからの音楽活動についてを、人柄あふれる前向きで真摯な凛とした姿で、時に笑顔で語ったばかりだったのに…。個人的にもそれを受けて3月21日UPのこのコラムにて、願いを込めて紹介させてもらったのですが、まさか自分担当の次の回で追悼することになるとは思いもしませんでした。今回選曲にあたり「KOJI=ラクリマ」のイメージが強い中、KOJIが最期の最期まで愛し、命を注ぎ、生きる糧としていた、michi.とのユニット・ALICE IN MENSWEARの曲ももっと多くの人に知ってもらいたいと、3/5曲をチョイスしています。4月17日、「俺の身に何があっても、必ず歌ってほしい」という強い遺志のもと、彼の死が公表されない状態で配信ライヴ『3rd Anniversary + KOJI生誕祭』が予定通り行なわれました。ともに闘い、支え続けたmichi.にどうか一日も早い安らぎと、そしてKOJIのご冥福を心から深くお祈りします。
シングル「未来航路」/La'cryma Christi
「WB」収録アルバム『Wings of Music』/ALvino
「Lost Child」収録アルバム『Wonderland For The Lost Chirdren』/ALICE IN MENSWEAR
「THE WORLD IS YOURS」「遥カナ航跡」収録アルバム『GRAPPLE THE WORLD』/ALICE IN MENSWEAR

「未来航路」(’98)
/La'cryma Christi

シングル「未来航路」/La'cryma Christi

シングル「未来航路」/La'cryma Christi

KOJI(Gu)と言えばLa'cryma Christi、そう思う人が多いように“ラクリマと言えば?”と訊くと一番多く返ってくる答えが「未来航路」なんじゃないでしょうか。MALICE MIZERやSHAZNA、FANATIC◆CRISISとともに“ヴィジュアル四天王”と呼ばれた彼らが、1998年に5thシングルとしてリリース、オリコンチャートで3位というバンド史上最高の初動を記録したのが、KOJI作曲のこの曲だ。当時何回かお会いする機会があったものの、キャラのハッキリしたメンバーの中で“長身・イケメン・さわやか”という申し分ない要素に尻込みして、ちゃんとした会話もしなかったことが悔やまれてならないが、この頃のKOJIにはミュージシャンというよりは、いつも嬉しそうに弾いている“ギターキッズ”という印象を持っていた記憶がある。そんな彼がインディーズ時代に浮かんだメロディーに“出会い”をテーマとした歌詞を、とTAKA(Vo)に依頼したこの曲で、どれだけの人がラクリマに出会い、KOJIに出会ったことだろう。音楽に寿命なんてない。きっとこれからも、出会いは続いていくんだろうな。

「WB」(’11)/ALvino

「WB」収録アルバム『Wings of Music』/ALvino

「WB」収録アルバム『Wings of Music』/ALvino

2006年に、元Pierrotの潤(Gu)とKOJI(Gu)、元NIOIのShota(Vo)の3人で結成。自分たちから生み出される平凡でノーマル(normal)なもの。それを3人の想像力(vision)と力で錬金(ALchemy)し、価値のあるものに変えていこうという思いを込めた造語“ALvino”がバンド名となっている。今回、SNS上で多くの音楽仲間やファンが哀悼をつぶやく中、“誰にでもやさしかった”という声とともに多く目に付いたのが、握手会やライヴ中などにKOJIが見せたやさしさのエピソードでした。目の前の群れではなく、順番に目の前にやってきた“誰か”ではなく、気持ちを抱いて会いに来てくれたひとりひとりとして、ファンを愛おしく大切に思っていたことがよくわかるものばかり。アルバム『Wings of Music』に収録されている「WB」は、結成5周年ライヴのために制作され、曲だけでなく詞もKOJIが担当している。自分たちに関わってくれている全ての人たちを守りたいという思いが込められているが、そのライヴにて冒頭の《大切な君へ》で、嬉しそうにまるで“おいで”と言っているかのように、客席に向け両手を大きく広げたKOJIのやさしい笑顔が忘れられない。《人の運命や 占いよりも 大切なものがあるんだ》《信じる心 強い絆も 大切な君の笑顔も》今は無理でも、時が過ぎたら笑顔で思い出してほしい。きっと空から“ねぇ笑って”って言ってるはずだから。

「Lost Child」(’19)
/ALICE IN MENSWEAR

「Lost Child」収録アルバム『Wonderland For The Lost Chirdren』/ALICE IN MENSWEAR

「Lost Child」収録アルバム『Wonderland For The Lost Chirdren』/ALICE IN MENSWEAR

2019年に、ヴォーカリスト michi. (ex.MASCHERA/S.Q.F)とKOJI(Gu) のふたりで始動させたALICE IN MENSWEARが、初めて作ったのが1stアルバム『Wonderland For The Lost Children』の1曲目に収録されている「Lost Child」。“ひとつの孤独をみんなで共有できたら”というメッセージとともに、Aliceやうさぎ、ぜんまいや蒸気機関車といった“永遠の少女性”と“スチームパンク”というユニットのコンセプトが、詞やMVでもあちらこちらに表現されている。このふたりでしか表現できないこのエモい世界感は、始まりの一曲に相応しいナンバーだ。曲解説のオフィシャル動画の中で、デモとは思えないクオリティーで自分の中のハードルや気合、活動をともにするに当たっての本気度、michi.に魅力を感じてほしい…といったいろんな想いを詰め込んで“見栄を張れるだけ張った”と笑うKOJIに、仮歌の段階でしっかり歌詞を乗せて返したmichi.が“僕も見栄張っちゃった”と笑う。この曲に限らずアルバム2枚分の解説を観ていると、このふたりがどれだけお互いをリスペクトし合い、本当に楽しそうに同じ温度感で創作活動を行っているのかが手に取るように分かる。この曲から始まって3年、彼らが自負する“優秀な1曲目”が、この先も誰かの孤独に寄り添ってくれる温もりでありますように。

「THE WORLD IS YOURS」(’21)
/ALICE IN MENSWEAR

「THE WORLD IS YOURS」収録アルバム『GRAPPLE THE WORLD』/ALICE IN MENSWEAR

「THE WORLD IS YOURS」収録アルバム『GRAPPLE THE WORLD』/ALICE IN MENSWEAR

2020年、コロナの蔓延とKOJIの病気発覚により、すでに7割完成されていた2ndアルバムの創作をやむなく中断。体調の快復を待って翌年再開された際に新しく作られた「THE WORLD IS YOURS」は、病室に差し込む眩しい朝の光や、術後に外の景色を見たくて車椅子で連れて行ってもらった際、久しぶりに見た空があまりにも美しくて、音楽家としてかたちにしたいと思う中で生まれたメロディーだったという。そして、音階の4つ目(ファ)と7つ目(シ)の音を抜いてオリエンタルな印象に仕上がる“ヨナ(47)抜き”という手法を用いたところ、特にそれを説明したわけではなかったにもかかわらず、“ヨナ”のない音階にmichi.がサビで“夜な夜な(ヨナヨナ)”という歌詞をつけることで、ふたりでドレミファソラシドを完成させるという、曲後半で聴ける泣きのギターソロと同じくらいドラマチックなエピソードだ。《貴方に捧ぐ この光もこの声も 奏でる音も止まる刻も 命も この世界を貴方にすべて…》という詞にも、KOJIの想いを汲んだような言葉が並ぶ。2月に文面で病状報告をした中で“自分はどんなに体調が悪くなっても、心の中には幸せが溢れています”と語ったKOJI。その源として、自分が憧れたプロギタリストの人生を歩めたこと、たくさんの出会いがあって生きていること、そして現在進行形でALICE IN MENWEARでmichi.と納得のいく音楽を創れていること、と綴っている。きっと、幾千粒の中からKOJIの魂が無意識に、安心して音楽人生を全うできる場所を見つけたんじゃないか…そんなことを思うのです。

「遥カナ航跡」(’21)
/ALICE IN MENSWEAR

「遥カナ航跡」収録アルバム『GRAPPLE THE WORLD』/ALICE IN MENSWEAR

「遥カナ航跡」収録アルバム『GRAPPLE THE WORLD』/ALICE IN MENSWEAR

初ライヴの時にはすでに歌われており、待望の音源化として2ndアルバム『GRAPPLE THE WORLD』のラストに収録された「遥カナ航跡」。美しく儚げでいて温かさの残るこの楽曲の《こんな日がいつまで続くのか わからないけどいいんだよ》というサビのフレーズについて、コロナ前に書いたけど予言的に今自分で聴いて励まされるというmichi.と、音楽的に惹かれあって一緒に始めたけれど、何があるか分からないという当時の自分たちの関係性に重ね合わせたというKOJI。でも…サビだけでなく最初から最後まで、今この時に歌われるために綴られた言葉たちのようだと、感じてしまうのは私だけだろうか。4月17日、配信ライヴ『3rd Anniversary + KOJI生誕祭』の中盤で披露されたこの曲。事前に体力的な問題などでKOJIはステージには立たず、この日のために録音したギターの音をまるでそこで弾いているかのように鳴らすという彼が構築した“ツインギター自動演奏システム”での演奏が告知されていたため、ひとりでステージに立ち、口に出せないまま歌うmichi.のつらさと悲しみは計り知れない。《死ぬほど僕らは求め合い 同じ時代をえらんだよ》《命を掛けた証 ああ君とただ残したい》目を閉じて顔をくしゃくしゃにしながら歌う姿と、命の叫びのようなギターの音色、暗闇の中でそこにKOJIの魂が灯っているかのようなギターホールの光が胸を締めつける。michi.を見て、訃報のニュースに使用されていた写真が新しい衣装だったということに気づいて思ったのです、“ALICE IN MENSWEARのKOJI”として旅立ったんだな、と。強さとやさしさ、そして素敵な音楽をありがとう。そちらでも大好きなギターたくさん奏でてください。ゆっくり休んでね、KOJI。

TEXT:K子。

K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最近、最愛のバンドが復活してくれそうな気配にドキドキが止まらない。

OKMusic編集部

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