NakamuraEmi、藤原さくら、梅田クア
トロ10周年を祝し相思相愛のツーマン
ライブが実現

UMEDA CLUB QUATTRO 10th Anniversary“QUATTRO EXPRESS”✕“QUATTRO MIRAGE”

2022.4.10(SUN)大阪・梅田クラブクアトロ
NakamuraEmi藤原さくらが出演したライブイベント『UMEDA CLUB QUATTRO 10th Anniversary “QUATTRO EXPRESS”✕“QUATTRO MIRAGE”』が4月10日(日)、大阪・梅田クラブクアトロにて開催された。
『QUATTRO MIRAGE』は「ありそうでなかった組み合わせ」をコンセプトに2010年にスタートしたライブシリーズで、この日は今年で10周年を迎えた梅田クラブクアトロのアニバーサリー企画『QUATTRO EXPRESS』と連動。4月8日(金)の広島・広島クラブクアトロ公演に続き、NakamuraEmi ✕ 藤原さくらというグッドミュージックな顔合わせに多くのオーディエンスが訪れ、見事ソールドアウトとなった。
NakamuraEmi
NakamuraEmi
「梅田クラブクアトロ10周年、来てくれてありがとう~! うわぁ……この3年、コロナ禍でもライブをやり続けてきたけど、スタンディングでこんなにぎゅうぎゅうのライブは久しぶりです。楽しんでいってください!」と、近年はなかなか見ることのできなかった景色に、NakamuraEmiの感動もひとしお。そんな中、プロデューサー/ギタリストのカワムラヒロシの爪弾くギターに導かれ、自ずと沸き立ったクラップを背に放ったのは、「雨のように泣いてやれ」。コーチジャケットにワークパンツというラフないでたちのNakamuraEmiは、マイクを手にしなるようにステージを躍動。アウトロのウインドチャイムの美しい音色が、4月にしてすでに真夏日の大阪に癒やしをもたらしていく。
続いては、「新生活が始まった人もたくさんいると思います。応援歌になれたらうれしいです」と「大人の言うことを聞け」へ。大胆なライブアレンジが施されたギターのカッティングは楽曲に新たな野性味を加え、長年旅を共にしてきたNakamuraEmiとカワムラヒロシのあうんの呼吸=グルーヴが心地よく染み渡っていく。
NakamuraEmi
「次は本当は違う曲を用意してたんですけど、藤子不二雄Ⓐ先生のニュース(=訃報)を見て……。私が初めて主題歌をやらせてもらったのが、藤子不二雄Ⓐ先生の『笑ゥせぇるすまんNEW』という作品でした。なので急きょ曲を変えて、感謝を込めて、その「Don’ t」という曲をやらせてもらおうと思います」
アコースティックギターのふくよかな低音を響かせたビートが、リリックによって徐々に引き出されていく高揚感を先導。「素晴らしい作品をありがとうございました! 育てられて大人になりました」との思いを乗せた歌唱に、クアトロが大きな拍手に包まれる。
「今回の『QUATTRO MIRAGE』は、心斎橋での20年を経て、(移転後に)梅田クラブクアトロに生まれ変わって10周年のお祝いで。今日から1カ月間、すごく濃い先輩たちがたくさん並んでいるスケジュールなんですけど(笑)、そのトップバッターで私と藤原さくらちゃんが、念願の「ありそうでなかったツーマン」をやらせてもらうことになりました」と、MCではイベントの主旨を説明。かつて藤原さくらが、TVドラマ『ラヴソング』で工場の整備部で働くヒロイン役を演じていたのを見て、自身はデビュー前に日産のエンジン開発部で働いた経験があったため、自らを投影していたというエピソードも飛び出す。

NakamuraEmi

ここで、「私、ルクア大阪が大好きで、めっちゃ買い物をするんです(笑)。そこで(耳を触って)こういう大きいピアスとかも仕入れたりして。今までは「自分には似合わないな」と決めつけていたりしたけど、素敵だなと思ったもの、キュンとしたものに素直に動いてみることは、年を重ねたからこそ大切だなと思って作った曲です」と、3月に配信されたばかりの新曲「一目惚れ」を。サビではボーカルエフェクトを駆使するなどミニマルなアコースティック編成でも多彩に魅せ、「次の曲は30代になったときに、周りの仲間たちを見て感じることがあって書いた曲です」と「スケボーマン」へ。カワムラヒロシによる憂いと切なさを濃縮還元したようなダークなフレーズと、NakamuraEmiの優しい歌声に胸を締め付けられる名曲に、グッと息を飲む会場。彼女の歌が同世代の女性に刺さるのはまごうことなき事実だが、とりわけ男泣かせの一曲にくぎ付けになった方もきっと多かったことだろう。
NakamuraEmi
「コロナ禍で自分のペースが変わった方もたくさんいたと思います。私もその一人です。自分の心をほっとさせる時間を持たなくちゃなと思って、昔書いたこの曲を引っ張り出してきました」と届けた「一服」しかり、曲へのガイドとなる語りが絶妙で、残響と共に深く深く音楽の中に落ちていくようなこの感覚は、まさにライブならでは。時折、満員御礼で熱気に満ちた客席を気遣いながら、「今日、さくらちゃんを初めて見る方はどれくらいいますか?」と問い掛けるNakamuraEmiに、「「私を初めて見る人」じゃないんだ(笑)」とカワムラヒロシが突っ込むなど、2人のほほ笑ましいやりとりに思わず場がにぎわう。
「この2~3年、お世話になったライブハウスが軒並みつぶれてしまって、その締めくくりの閉店ライブをやることが多くなって……。今日はこうやってお祝いのライブに出られることが本当にうれしくて。いろいろ大変なこともあるけど、いいこともあるなという思いを今日はこの曲に込めようと思います。いつか一緒に歌えたらうれしいです」
あの印象的なギターリフが鳴り響き、幕を開けるは「YAMABIKO」。彼女が世に広く知られるきっかけとなったアンセムで、声は出せなくとも、手拍子で、拳で応える観客と一体となって大きなうねりを作っていく。
NakamuraEmi
「去年の4月ぐらいから、1~2カ月ごとに関西に来させてもらってたんですよ。そのたびにどんどん好きになっていく街で。でも、今日を最後に次の予定がまだないんです。だから無理やりにでも作るので、またぜひ関西で会いましょう」と、つかの間の別れにささげたのは「投げキッス」。またライブで再会したいと思わせるに余りある余韻を、数々の名演を生んできた梅田クラブクアトロに残したNakamuraEmiだった。
藤原さくら
藤原さくら
総柄のワンピースを身にまとった藤原さくらは、鍵盤とのデュオ編成で登場。木製の椅子に腰掛け、まず最初に奏でたのはこの季節にぴったりの「春の歌」。スピッツの名曲に新たな生命が吹き込まれたように、今や藤原さくらのレパートリーの中でも重要な位置を占めると言っても過言ではない素晴らしいカバーだ。けだるさや可憐さが交互に顔を出す歌声につかまれる「Waver」でも、彼女の存在がシーンの一筋の光であることを思い知らされるようなパフォーマンスの連続。ただ、そこにたたずみ歌うだけで、見る者にここまでの充足感を与えるすごさたるや……。
藤原さくら
MCでは、「改めまして、今日はお越しいただきありがとうございます。去年ぶりの久々の大阪で、私の大好きなアーティストであるNakamuraEmiさんとのツーマンということで、とってもとっても楽しみにしていました。Emiさん、素晴らしかったですね! Emiさんの歌を聴いていたら、その曲の物語に引き込まれて、一曲ずつ映画を見ているような気分になるというか……。すごくパワフルなのに温かい優しさを持った方で、こうやってご一緒できてうれしいです」と、そばで聴いているであろうNakamuraEmiが感涙しそうな名レビューも。
そして、「梅田クラブクアトロが10周年ということで、『QUATTRO MIRAGE』と『QUATTRO EXPRESS』という企画が重なりあって、これから発車していく初日という光栄な日に、こんなにたくさんの方に集まっていただいて、本当にありがたいです」と始まった新曲「わたしのLife」は、ピアノにシンセベースにコーラスにと大活躍のキーボーディストKeiko(大嵜慶子)に支えられ、その豊潤な歌声を聴かせたファニーなポップソング。その後も何気ない日常が音楽になる「生活」と、高いソングライティング力を存分に堪能できるセットリストを展開していく。
藤原さくら
続いて、「EmiさんもMCで話されてましたけど、私は今からもう6年ぐらい前、出演させていただいたドラマで整備士の役をやっていて。演技をしたことがなかったら、その指導も受けながら整備工場に通い、それっぽく見える動きを練習してたんですけど、その頃、Emiさんは「YAMABIKO」をリリースしたタイミングで。だからすごく覚えていて、「カッコいい人がいるんだな」と思っていたので、何だか不思議です」と共演が実現した感慨深さを語り、「そのドラマでも歌った曲で、すごく思い入れのある曲があるんです。自分の故郷だったり実家のことを思い返しながら聴いていただければ」と「500マイル」を。最小限に抑えられた照明の下、アコースティックギターとピアノと歌声だけで情景を浮かび上がらせる珠玉のバラードに続き、「mother」でもその神々しさすら感じる光景を、舞台へと一心に注がれる熱い視線が見届ける。
藤原さくら
「ありがとうございました、おやすみなさい……みんな寝ちゃうんじゃないかと思ってました(笑)」と、それこそ楽曲の物語に引き込まれていたフロアへとキュートに投げ掛けた後は、「今日はけいこりん(=Keiko)と久々にご一緒しております!」と、デビュー直後から活動を共にしていたKeikoと当時の思い出を振り返る。また昨日は、なんばグランド花月で初めて『吉本新喜劇』を生で見て、「あんな番組をお昼に見て生活してるから会話のレベルがどんどん向上していくんでしょうね(笑)」と感心しきりだった話も。7月には大阪市中央公会堂(大集会室)に『弾き語りツアー 2022-2023 “heartbeat”』で戻ってくることを約束し、ライブはいよいよ後半戦へ。
藤原さくら
大滝詠一の「君は天然色」のカバーは前述の「春の歌」同様、名曲にもまるで飲まれない歌声と解釈が秀逸で、楽曲のさらなる魅力を発見するような音楽愛に溢れたアプローチは至福極まりない。スモーキーな歌声と軽妙なピアノがムード抜群な「I wanna go out」から一転、「「かわいい」」では胸が高鳴るラブソングで魅了。「今日は本当にありがとうございました。素晴らしい会に呼んでいただいて、すごくうれしいです。また皆さんとどこかで笑って会える日まで」と、ラストは「bye bye」。まるで映画のエンドロールのようにしっとりとライブの幕引きを飾った藤原さくらだった。
藤原さくら
アンコールにはNakamuraEmiと藤原さくらの両名が再び現れ、互いのライブの感想を語り合う和気あいあいの雰囲気に。「ツーマンが決まってからZoomで打ち合わせしたんですけど、Emiさんが「最後に一緒に何かやりたいね」って。そこでお互いの曲をマッシュアップして……デモが送られてきたときは感動しました。私の曲とEmiさんの曲をくっつけてくれたんですけど、このままリリースしたい(笑)」と、藤原さくら。

NakamuraEmi、藤原さくら
NakamuraEmi、藤原さくら
満を持して披露された、藤原さくらの「The Moon」とNakamuraEmiの「星なんて言わず」をマッシュアップするという贅沢な試みは、それぞれの歌声に寄り添い高まり合っていくようなドラマチックなアレンジで、この日限りのスペシャルなワンシーンを演出。梅田クラブクアトロの10周年にこれ以上ない華を添えたかと思いきや、さらにうれしい報告も。大阪公演のソールドアウトを受け、6月13日(月)東京・渋谷CLUB QUATTROで、追加公演『QUATTRO MIRAGE UMEDA CLUB QUATTRO 10th Anniversary “QUATTRO EXPRESS” EXTRA』の開催が決定! 最後の最後までグッドヴァイブな空気に包まれた、相思相愛のツーマンライブとなった。
NakamuraEmi、藤原さくら
なお、今後の『UMEDA CLUB QUATTRO 10th Anniversary “QUATTRO EXPRESS”』は、4月26日(火)にはeastern youthTHA BLUE HERB、4月27日(水)にはサニーデイ・サービスMOROHAが出演する。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=松本いずみ

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