英国が誇る名ギタリスト
アルヴィン・リー率いる
テン・イヤーズ・アフターの傑作
『ア・スペース・イン・タイム』

ハード一辺倒から、
バンドの表現域を拡大した
『ア・スペース・イン・タイム』

本作は速弾きばかりに注目がいくことにうんざりしてきたアルヴィンの心境も反映されているのではないか。「バリバリ弾いてりゃいいってもんじゃないんだ、俺はギター馬鹿じゃない」とアルヴィンが言ってるように思えてくるのだ。これまでになくアコースティックギターを多用、かつ効果的に使い、サウンドに奥深さがもたらされている。とはいえ、エッジの利いたエレキの切れ味は鋭く、スーパーギタリストの名に恥じない攻撃的な演奏を聴かせる。根底になるロックンロール、ブルースを垢抜けないスタイルで、これでもかと聴かせてくれたりする。通算6枚目。チャートアクションはビルボード200で最高位17位を記録している。シングル曲「チェンジ・ザ・ワールド(原題:I’d Love to Change the World)」もヒットするなど、彼らの最高作と推すファンも多い、重要作である。ちなみにこの翌年には同レーベル(クリサリス)のプロコル・ハルムとジョイントで初来日公演が行なわれている。

Alvin Lee / アルヴィン・リー

アルヴィン・リーは1944年、英ノッティンガム生まれ。ギターを始めたのは13歳ということなので、日本の中学生がロックだとかギターに興味を示し出すのと大差ないわけだが、アルヴィンの場合のきっかけはエルヴィス・プレスリーだったという。エルヴィスが1954年に「ザッツ・オール・ライト(原題:That’s All Right) / ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー(原題:Blue Moon of Kentucky)」でデビューし、「ハートブレイク・ホテル(原題:Heartbreak Hotel)」や「ハウンド・ドッグ(原題:Hound Dog)」と次々とヒットを連発し、カール・パーキンスが「ブルー・スエード・シューズ(原題:Blue Suede Shoes)」、ジェリー・リー・ルイスが「陽気にやろうぜ(原題:Whole Lotta Shakin’ Goin’ On)」と、ロックンロール旋風が巻き起こっていた頃、アルヴィンはリアタイムでそれに感染していたわけだ。ということは、彼の憧れのギタリストはエルヴィスのバンドでギターを弾いていたスコッティ・ムーア(Scotty Moore)なのだろう。私は専門がギターではないので詳しいことは分からないが、それでもアルヴィンのギターを聴くと、随所にロカビリーでよく耳にするギャロッピング奏法が出てくることがわかる。あと、彼は両親が集めていたジャズやブルースのレコードに影響を受けた、という発言を残しており、影響元はそのあたりかと思う。『ア・スペース・イン・タイム』のエンド曲「アンクル・ジャム(原題:Uncle Jam)」ではサラッとジャズ・ギターの即興演奏を披露している。

OKMusic編集部

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