INTERVIEW / DURDN 新鋭・DURDNの結
成からこれまでの足取り。12ヶ月連続
リリースを通して見えてきた、ユニッ
トとしてのアイデンティティ

韓国出身のシンガー・Bakuとプロデュース・デュオtee teaによるプロジェクト、DURDN。昨年1月からシングルやEPを連続でリリースし、ストリーミングを中心にジワジワと注目を集め、昨夏には〈Sony Music Japan International〉とサイン。年明けには東阪での初ライブも行った。
メロウかつアーバン、そして洒脱なテイストで統一されていながらも、そのサウンドの背景にはR&Bやヒップホップから80’sシンセ・ポップ、ダンス・ミュージックまで、幅広いバックグラウンドが感じられる。そして、なんといっても存在感溢れるBakuのボーカルに耳を奪われる。どこか砕けた口調であったり、柔らかい語り口の日本語リリックを歌い上げるBakuの独特の温度感。随所に差し込まれる韓国語との語感の違いもフレッシュな魅力として作用している。
今回はそんなDURDNの3人にインタビューを敢行。彼らの結成から最新EP『306』までの足取りについて語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Keigo Sugiyama(https://keigosugiyama.com/)
3人の出会いとバックグラウンド
――DURDNはyaccoさんとBakuさんの出会いがきっかけになったそうですね。
yacco:はい。共通の知り合いを介して出会いました。「いい声のシンガーだから」っていう感じで紹介してくれて、Bakuが歌っている動画をもらったんですけど、それがとてもよくて。
――Bakuさんは当時、どのような活動を?
Baku:活動というよりかは趣味という感じでした。路上ライブを何度かやったり、家で弾き語りをやったり、それをインスタにUPしたり。
――Bakuさんはいつから日本に?
Baku:3年ほど前からですね。軍隊の同期にワーキングホリデーという制度を教えてもらって、留学という名目で日本に来ました。実はそれまではあまり日本のことは詳しく知らなかったのですが、実際に来てみたらすごくいいところで、長く滞在することになりました。
――yaccoさんがBakuさんの弾き語り映像を観た際の印象は?
yacco:カバー2曲と、1stシングルとしてリリースした「Conflict」の合計3曲の弾き語り動画を送ってくれたんですけど、最初に聴いたとき鳥肌が立って。「こんな人がいるんだ」って思って、すぐSHINTAに「一緒にやってみたい人がいるんだけど」って連絡しました。
SHINTA:連絡と一緒に動画も送ってもらって、被っちゃいますけどとにかく声がいいなと。あと、オリジナル曲のクオリティも高かった。その当時から僕らはtee teaとして活動していたのですが、ちょうどそのときに「こういう曲作りたいな」と考えていたジャンル感にも近いなと感じたんです。ちょっとミニマルな感じのR&Bというか、Bakuの歌声や曲はそういうテイストにバッチリ合うなと思って、やるしかないぞと。「Conflict」はその後2日くらいでアレンジまで完成させましたね。
――当時、SHINTAさんとyaccoさんはどのような活動を展開していたのでしょうか。
SHINTA:楽曲提供やコンペに参加しつつ、ひみつのネリネというユニットにプロデュースという形で関わっていました。その頃はエレクトロやフューチャー・ベース、派手めなハウスなどを軸とした楽曲を多く作っていました。
――そもそも、tee teaというのはどのようにして結成されたのでしょうか。
SHINTA:yaccoと僕は専門学校が一緒で、当時から彼女はSSWとして活動していて、僕はギタリストとしてそれをサポートしていました。ただ、専門卒業後、僕はどんどんプレイヤーから作曲の方にシフトしていって。今度は僕の作曲活動をyaccoが手伝ってくれて。コンペでIZ*ONEへ楽曲提供できることになったんですけど、そのときはもう2人の作品と言えるくらいの作業割合だったので、「じゃあユニットにしようか」っていう感じで自然と結成に至りました。
――そもそも、Bakuさんが音楽に目覚めたきっかけは?
Baku:高校1年生のときに『スーパースターK』というオーディション番組でBusker Buskerというバンドに出会って、ギターを始めました。とにかく声がカッコよくて、3ピース・バンドというスタイルにも憧れました。
――なるほど、ではSHINTAさん、yaccoさんの音楽的ルーツやリスナーとしての変遷についても教えてもらえますか?
SHINTA:僕は幼い頃からダンスを習っていたので、そこで憧れたMichael Jackson、そしてその後に出会い、ギタリストを志すきっかけとなったB’zがルーツになります。そこからしばらくはB’zしか聴かない時期が続いたんですけど、高校ではメタルやツェッペリン(Led Zeppelin)やDeep Purpleといったオールドスクールなハードロックにハマりました。専門学校に入ってから師事した先生がファンクやソウル、ブルーズなどのブラック・ミュージック寄りのギターを弾く方で、僕もそういった音楽にどっぷり浸かって。同時に学校ではジャズ・ギターも教えてもらっていたので、ジャズのスタンダード・ナンバーなども聴いていました。
作曲をするようになってからはメインストリームのポップスを聴いたり、当時人気を集めていたZeddやSkrillexなどのEDMにハマったんですけど、そこで幼少期に習っていたダンスと繋がった感覚がありました。
――yaccoさんはいかがでしょう?
yacco:私は小さいときからずっと宇多田ヒカルさんが好きで。それが根本にありつつも、RihannaやBeyoncé、Christina Aguileraなどにハマりつつも、流行りのJ-POPも聴いていました。ORANGE RANGEとか安室ちゃん、BoAさんなど。専門学校に入ってからはLucy RoseGabrielle Aplin、Nina Nesbittなど、UKのSSWに魅了されて、来日公演なども行っていましたね。今はトップラインを書いたりするので、J-POPもチェックしますし、欧米や韓国のR&Bなどもよく聴いています。
この1年で見えてきた“DURDNらしさ”
――話をDURDNに戻しまして、1stシングル「Conflict」はどのようにして生まれた曲なのか教えてもらえますか?
Baku:それまでは韓国語で曲を作っていたんですけど、せっかく日本に来たので、日本語で歌詞を書いてみようと思った曲です。誰かを拒否するような感情を綴りました。
yacco:「Conflict」を2人でブラッシュアップして、3人とも手応えを感じていたので、「じゃあユニットとして活動していかない?」という話をして。Bakuは「音楽活動とは?」という感じだったんですけど(笑)。
Baku:「リリースってどういう意味ですか?」って聞きました(笑)。
――ちなみに、DURDNというユニット名の由来は?
Baku:『ファイト・クラブ』(原題:Fight Club)という映画が好きで、(ブラッド・ピット演じる)その主人公・Tyler Durdenから取りました。スペルと発音を少し変えているんですけど。
――1stシングルから12ヶ月連続リリースが続きます。作品はある程度作り溜めていたのでしょうか。
SHINTA:どちらかというと作っては出してといった感じでしたね。前半はTuneCoreさんからのリリースだったので、配信日の2週間前に納品して、また作ってというのを半年間続けていました。単純に、作りたい曲のイメージやアイディアがどんどん湧いてきたっていうのと、毎月連続でリリースした方が注目を集めそうだなと思って、連続リリースを始めました。
――制作のプロセスはどのような形が多いですか?
SHINTA:基本的には僕がトラックを、yaccoがトップラインを作って、Bakuが歌を乗せるっていう感じです。僕はリズムやビートから着想を得て、膨らませていくことが多いですね。ダンス・ミュージックが好きだということもありますし、僕はギターでもリズムやリフを弾くことが好きなので。
――なるほど。では、メロディや歌詞はどのように?
yacco:先にメロディを作って、そこにハマる言葉を考えながら歌詞やテーマを考えていくことが多いです。韓国語部分はもちろんBakuにお願いしています。
Baku:僕は日本語の部分を見て、そこに合うように書いています。
――個人的には「イカしてる」の《「はい、せーの」「はい、せーの」/大好きな言葉です》というラインもユニークだなと思いました。日本語ネイティブじゃないBakuさんが歌うことで、より日本語のおもしろさに気づかされるというか。
yacco:これは私が書いたんですけど、どうして浮かんできたのかはちょっと覚えてないですね。この曲はライブの1曲目に合うような曲をイメージして作っていたのと、ソニーさんからリリースする1曲目ということで、“始まり”を意識していて。
――「イカしてる」リリースの前月、昨年7月には1st EP『Vacation』もリリースしています。このタイミングで、“DURDNらしさ”というものは固まっていましたか?
SHINTA:“自分たちらしさ”が見えてきたのは、ここ最近な気がします。『Vacation』はインディ最後にまとまった作品をリリースしておきたかったのと、このタイミングで手応えを感じる曲がたくさんできたので、EPとして発表した感じですね。
――では、最近見えてきたという“DURDNらしさ”というのは?
SHINTA:大前提としてポップであること。そのなかで、“エモさ”みたいな要素が僕たちらしいのかなって思います。懐古主義ではないけど、どこか懐かしいようなサウンド、ちょっとした緩さもある歌詞、そういう部分が僕たちの個性なのかなって。もちろんその個性は、Bakuの声や歌い方に引っ張られている部分が大きいとは思います。
――今のところ唯一のコラボ曲として、「All of You」にMIRRRORのTakumiさんが客演参加しています。このコラボはどのようにして実現したのでしょうか。
SHINTA:曲自体はかなり前にできていたんですけど、どうしてもラップ・パートを入れたくて悩んでいました。そこでスタッフに提案してもらったのがTakumiさんで。声質やノリ方がすごくいいんですよね。ヒップホップに寄り過ぎるとDURDNの作品としてはどうなのかなって思っていたところ、彼のラップはすごくキャッチーというかメロディアスで、バッチリでした。日本語と韓国語、そこに英語も加わって、かなりおもしろい曲になりました。
目指すは“日韓のDURDN”
――今年1月には2nd EP『306』がリリースされました。
SHINTA:12ヶ月連続リリースを締めくくりたかったのと、『Vacation』リリース後のシングルのバランス感もよくて。EPとしてまとめると、いい作品になりそうだなって思ったので。
――EPの新録曲となった「ミアネ」は、韓国語をタイトルとした曲ですよね。これはBakuさん発信なのでしょうか?
yacco:いえ、これも私が書いたんです。韓国のドラマや映画をよく観ているので、「ミアネ」(ごめん)や「コマウォ」(ありがとう)といった簡単な単語は頭に入っていて。特に「ミアネ」は響きが可愛いので、いつか歌詞で使いたいなとは思っていたんです。この曲のメロディを聴いたとき、しっくりハマったのでタイトルに付けました。
――12ヶ月連続でリリースしてきた作品のなかで、それぞれ一番印象に残っている曲を教えてもらえますか?
Baku:僕は「忘れたいね」ですね。リズムやノリ方も好きですし、ブリッジ部分の韓国語の歌詞も気に入っています。音楽を好きになってしまった自分はもう変えられないから、このまま音楽を続けてステージに立ちたいと、自分自身のことを歌っています。
yacco:私は「僕の夢」が好きです。あのテンション感もちょうどいいし、Bakuの声の魅力を一番引き出せたんじゃないかなって思います。実はあのアートワークはBakuが描いてくれたんです。Bakuは少し美術系の勉強もしていたらしく、曲の内容的にも彼が描いた方が合いそうだなと思って、お願いしたらやってくれました。
SHINTA:iPadをBakuに貸して描いてもらいました。そういえばまだ返してもらってない(笑)。
――SHINTAさんはいかがでしょう?
SHINTA:難しいですね。強いてあげるとするならば「All of You」かな。ビート感もメロディも群を抜いてよかったなと。それこそセルフ・リミックスを作っちゃうくらい気に入っているので。この前のライブではできなかったんですけど、ライブでも絶対盛り上がるんじゃないかと思っています。……でも、他にも思い入れ深い曲はたくさんあって。「くすぶってばっかいられない」はDURDNの中でも少し変わっている曲で、これを作ったときのことはよく覚えていますね。
――「くすぶってばっかいられない」はすごくハイブリッドな曲ですよね。80’s感漂うシンセ・ポップから始まり、トラップ的なビート・パターン、そしてEDM的なビルドアップもある。
SHINTA:実は単純にリファレンスが3曲あるんです。おっしゃる通り80’sっぽいブギー感の曲、トラップ/ヒップホップな曲、そしてダブステップっぽいクラブ・トラックなんですけど、3曲それぞれすごく好きだったのと、テンポ感が同じだということに気づいて。それぞれの要素を抽出して、組み合わせてみたら上手くいきました。
――先日、東京・大阪で行った初ライブはいかがでしたか?
Baku:大勢の前で歌うのは初めてだったので、緊張もしましたけど、とても楽しかったです。バンドの演奏にリズムを合わせるのが少し難しかったです。
SHINTA:想像以上にノッてくれ嬉しかったです。メロウなテイストの楽曲が多いなかで、リズムやグルーヴに合わせて体を揺らしてくれて。ライブでも手応えを感じることができました。「ライブ聴いてより好きになった」っていう声も頂いて、本当にやってよかったなと思いました。
――これからの活動についてはどのように考えていますか? 今後の展望や目標などがあれば教えて下さい。
yacco:「フェスに出たいね」っていうことをよく話しているので、一番はそれかな?
Baku:そうですね。僕らのことを全く知らない人たちの前でもライブをしてみたいです。
SHINTA:ライブ以外の面で言えば、アルバムの制作も考えたいですし、行く行くはフィジカル作品も作ってみたいです。
――DURDNはソニーミュージックのなかでも洋楽部署に所属していますが、グローバルな展開などはいかがでしょう?
SHINTA:もちろんチャンスがあれば海外でもライブしたいです。あと、海外アーティストとコラボレーションもしたいです。それこそ韓国のリスナーにも届けたい。やっぱり“日韓のDURDN”として認知されたいんです。
【リリース情報】

DURDN 『306』

Release Date:2022.01.21 (Fri.)
Label:Sony Music Labels Inc.
Tracklist:
1. イカしてる
2. くすぶってばっかいられない
3. 306
4. LIFE
5. ミアネ
6. All of you (Remix)

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