HEESEY

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【HEESEY インタビュー】
3rdアルバム『33』で
高らかに宣言する新しい時代の到来

THE YELLOW MONKEYのベーシスト、廣瀬“HEESEY”洋一が3rdオリジナルアルバム『33』をリリースした。コロナ禍が強いるさまざまな不自由に屈せず、新しい時代の幕開けととらえるHEESEYのタフさは痛快だ。薔薇の花束を手にしたメインビジュアルの意図は、M7「HIPPIE ROSE」について語るインタビュー中の言葉から読み取ることができ、胸打たれる。また、“33”という数字には想定外の意味があり驚愕! アルバムに込めた想いを紐解いていこう。

新しい時代を求め、
直球のロックンロールを鳴らしたい

“この閉塞した時代を打破して生きていくんだ!”という強いパワー漲る3rdアルバムだと感じました。2ndアルバム『ODYSSEY』から4年振りとなりますね?

はい。“冬季オリンピック”って呼ばれているんです(笑)。狙ったつもりはないんですけど、1stアルバム『YOU SAY HEESEY』は2014年で次が2018年、今回が2022年という。2016年にTHE YELLOW MONKEYの再集結があって、自分のソロのペースというのもあり、やっぱり“アルバムを作りたいな”という衝動に駆られんたじゃないかと。他のアーティストの方々もおっしゃると思うんですけど、やっぱりコロナ禍の影響が大きくて。遡ること2年、そもそもTHE YELLOW MONKEYの結成30周年のドームツアーがあって、2019年12月28日の結成記念日にはナゴヤドームでライヴをして、翌年2月の京セラドーム大阪まではギリギリできたんですけど、4月の東京ドーム2デイズが延期になり、最終的には中止になってしまって。2020年の11月〜12月には振替公演をしたんですけどね。

2020年2月下旬、ライヴ開催の自粛を求める政府からの要請が出ましたもんね。

もともとは東京の2デイズをもってTHE YELLOW MONKEYは充電期間にしようと言っていたので、その期間にソロアルバムを作ろうと漠然と考えていたんですよ。振替公演としてやることにはなったものの、いったんは中止になったわけだし、ステイホーム期間が始まった2020年の5月ぐらいですかね?

1回目の緊急事態宣言が発令された頃ですね。

はい。まさにその時期は手始めとして、まずは昔にやっていたTYO(2009~2015年に活動。HEESEYはベーシスト兼コンポーザーとして在籍)というバンドの作品のセルフカバーをしたんです。全曲僕の曲ですし、自分のキャリアに焦点を当ててみたい衝動があったんですね。それは2021年のちょうど今ぐらいに、作品としてリリースしたんですけれども。

『TYO YEARS』(2021年4月発表)ですね。

そうです。自分の作品ともう一回向き合うことで、原点回帰もあるだろうし、今の目線で作ることによって、新しい自分のやりたいことを見つけたりもするだろうし。それが終わってからまっさらな新曲を作っていこうと思っていたので、セルフカバー制作と並行してデモ音源を家でコツコツと作り始めて。ざっくり言うとそういう流れが自分の中の順番としてはありました。

ご自身のプリミティブな衝動を確認したあとで生まれた作品が、今作『33』なんですね。

それに加えて、いい意味でも悪い意味でもコロナによって新しい時代の到来を感じてしまったんですね。例えば人々の距離感であるとか、いろいろなところでコロナ禍によって変わったことってあるじゃないですか。もちろん“早くコロナがなくならないかな? 早く収束しないかな?”とは思うんですけど、その一方で今後生きていく上でつきまとうことであり、新型コロナウィルスと共存していかなきゃいけないとも思ってしまって。最終的にはそれが冒頭の「NEW DAYS」…まさに“新しい時代”という曲につながるんですけど。

「NEW DAYS」は力強く大地を踏みしめるようなビート感というか、人々が蜂起するエネルギーをサウンドに感じました。

“立ち上がれ!”“叫べ!”と煽る感じというかね。同時に、2020年ぐらいから新しい時代が始まるとも言われていて、それを“風の時代”と呼んでいたのもあったし。今、新しい時代を求めながら、待ちわびながら、そこで自分の直球のロックンロールを鳴らしてみたいという確固たる想いがあって、それが「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」という曲になっていきました。“コロナの時代を生き延びようぜ!”っていう。夢見がちで理想論ではあるんですけど、ロックンロールでもって《免疫上げよう》みたいな(笑)。

《不滅のサウンド 無限のグルーヴ 普遍の特効薬》というフレーズもありますね。

そうそう(笑)。やっぱり好きなことをしてワクワクしていたら、細胞が活性化して免疫力が上がるんじゃないかという楽観的なところもあるし、僕は人間の持つそういう力を信じているし、大事だと思っているんですよ。昨年のちょうど今頃に作り始めた曲の中に、自分の中で直球なロックンロールナンバーがあったので、そこに今の世相に対する自分の想いを反映させた歌詞を乗せたのが、まさにこの曲なんです。世の中はどう思うか分からないけど、僕の中の一押しの曲をまずはアルバムの大事な位置に置きたい、リードトラックに持っていきたかった。

曲ができたのは、「NEW DAYS」に続いて「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」という順番なのですか?

いや、「NEW DAYS」は発想だけはあったんですけど、できたのは「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」が先です。その後、他の曲にも手をつけて仕上げていくうちに、プロローグみたいなものがあったらいいなと思って。こういう虐げられた時代…コロナ禍の中で自由を奪われているところもたくさんあるし、新しい時代を待ちわびる感じというか。“早く自由を手にして新しい時代に行きたいぜ!”と革命を起こすみたいな、普遍的な意味合いも持たせたいと思っていました。あと、オープニングとして長さは絶対に2分台にしようとか、1曲目と2曲目とが近くて、すぐ始まるようにしようとか、そこはコンセプチュアルに考えていきましたね。

なるほど。1曲目の「NEW DAYS」から2曲目の「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」への流れは非常にパワフルで、強烈な幕開けでした。他の曲たちは群発的に生まれていったのですか?

詞を書くのがとにかく一番最後なので、曲の破片としてはすごく古くから存在していたものもあります。歌詞を書く前の段階、まずは曲として仕上がった順番で言うと、昨年の早い時期と年末、その前期と後期に分かれていて、アルバム前半の曲は前期に生まれたものが多いですね。「NEW DAYS」以外、「ROCK'N'ROLL SURVIVOR」から「オンリーワンラヴソング」までと、あとは「スーパーハイパーウルトラエクストラ」かな? それらは前期に録りましたね。

5曲目の「雨音のララバイ」からグッとメロディアスになるので、切り替わりはそこなのかと推測していました。

「雨音のララバイ」はいつかやってみたかったジャズ的アプローチで作った曲ですね。これまでやったことがなかったし、ベーシストとしては憧れがあったので。途中まではできていて、いつか完成させたいと思っていた曲だったんです。このアルバムはイケイケな曲がきっと多くなるだろうと自分の中で予想もあったので、そこに入れば逆にどちらも引き立つなと。だから、あえて音を重ねるダビング作業をせず、ジャズクラブで演奏するような、ベース、ドラム、ギター、ピアノの音しか入っていないカルテットでアレンジして、レコーディングも進めていきました。

音の隙間を活かすことで豊かな響きを味わうこともできますよね。

ひとりひとりの楽器、ひとつひとつの音をすごく大切にしたつもりです。そういう世界観をあえてここでやってみたかったんです。僕は来年60歳になるんですけど、60を前にしての初の試みというか。自分なりのブルージーなジャズをかたちにしたかったんですよね。普段はあまり“俺が、俺が!”というベースソロを弾かないんですけど、ここでは結構長い小節にわたるベースソロをフィーチャーしようと思って、曲の真ん中あたりで弾いています。しかも、初めてのジャンルでそれをやっちゃうという(笑)。それはそれですごく楽しかったですね。

ウィスパーヴォイスとも重なり合って、大人の魅力を感じるパートとなっていますね。

はい。ムーディーな夜のジャズみたいなテイストを強く出しました。バリエーションとして最高のものになったと思っています。
HEESEY
アルバム『33』

OKMusic編集部

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