(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

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【映画コラム】くせ者監督が雑誌の記
事の映像化を実現させた『フレンチ・
ディスパッチ ザ・リバティ、カンザ
ス・イヴニング・サン別冊』

 くせ者監督ウェス・アンダーソンが、雑誌『ニューヨーカー』にインスパイアされ、雑誌の記事の映像化を目指して、一つのレポートと三つのストーリーから成る、一種のオムニバス映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を作り上げた。ナレーターをアンダーソン映画の常連の一人でもあるアンジェリカ・ヒューストンが務めている。
 舞台は、フランスの架空の街アンニュイにある雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の編集部。社の代表でもある編集長(ビル・マーレイ)が急死し、その遺言によってこの名物誌の廃刊が決まる。果たして追悼号=最終号の中身とは…。
 まずは、自転車レポーター・サゼラック(オーウェン・ウィルソン)が、アンニュイの街を紹介。落語で言えば、これが“枕”に当たる。
 第1話「コンクリートの確固たる名作」は、美術記者のベレンセン(ティルダ・スウィントン)による、囚人画家ローゼンタイラー(ベネチオ・デル・トロ)と絵画の物語。彼に、うさんくさい美術商(エイドリアン・ブロディ)と美しい看守(レア・セドゥ)が絡む。
 アンダーソン監督は、オムニバス映画『ニューヨーク・ストーリー』(89)の中の「ライフ・レッスン」(マーティン・スコセッシ監督作)に影響を受けたと語っている。
 第2話「宣言書の改定」は、ジャーナリストのクレメンツ(フランシス・マクドーマンド)による、学生運動の日記風ルポ。学生役にティモシー・シャラメとリナ・クードリ。クリストファー・ヴァルツもちょいと顔を出す。
 ここでは、フランスの五月革命をベースに、フランソワ・トリュフォーやジャン・リュック・ゴダールの映画の影響を感じさせる。アメリカ人との対比や、議論好きで理屈っぽいフランス人の特色がよく出ている。
 第3話「警察署長の食事室」は、流浪の博識記者・ライト(ジェフリー・ライト)が、警察署長(マチュー・アマルリック)の息子の誘拐事件の経緯から、名シェフ(スティーブン・バーク)の横顔を語る。
 エドワード・ノートン、ウィレム・デフォー、シャーシャ・ローナンが“端役”で登場。漫画とトーク番組と犯罪映画の要素を混在させている。
 全体的に、いささか、策士策に溺れたようなところもあるが、3編とも、シュールなブラックユーモアに満ち、一筋縄ではいかない展開を見せる。趣味性が強く、万人受けはしないと思われるが、アンダーソン監督はそんなことははなから狙ってはいないだろう。
 まさしく、くせ者監督の面目躍如の一作だが、意外や、編集長とスタッフたちとのやり取りにほろりとさせられるところもある。
 長く雑誌作りを経験した者としては、表紙、記事、イラスト、レイアウトはもとより、記者の仕事(文章)まで映像化するアイデアには大いに興味を引かれた。隅から隅までぜいたくにキャスティングされた、個性的な俳優たちによる“演技に見えない演技”も刺激的だった。
(田中雄二)

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