luz「素敵な時間をありがとう。また
絶対会おうね!」 ツアーファイナル
で見せたこれまでの集大成、そして次
なる新たな一歩への期待

luz 6th TOUR -FAITH-

2021.12.29 Zepp Haneda(TOKYO)
崇奉の光景、ここに極まれり。2021年秋にボカロP・kemuとしてもシーンに多大なる影響力を与えてきたPENGUIN RESEARCHの堀江晶太をサウンド・プロデューサーに迎え、4年ぶりの4thアルバムとしてluzが発表した『FAITH』において、彼が“信仰”というものをテーマとして意識しながら作品作りをしていった、ということはもちろん既に皆様方もよくご存知のことであろう。
2021年終盤に開催された『luz 6th TOUR -FAITH-』が、文字通りにアルバム『FAITH』の世界を具現化していくものとなったことも言うに及ばずな件ではあるものの、思えばここまでの道筋は実に4年以上も前から丁寧に描かれ始めていたとも考えられる。何故なら、luzは今回のツアーでも各地で必ず歌ってみせていた「Dearest,Dearest」を2017年の段階でアルバム『Reflexion』に収録しており、この曲の詞の中には〈ヒトは心を喰らうモノと 貴方が僕に教えた〉という一節が織り込まれていたのである。
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そして、2019年に開催された『luz 4th TOUR -FANATIC-』でライブタイトルに冠されるほどの強い存在感を持つ楽曲として生まれた「FANATIC」には、くしくも〈「何が欲しいの?ボクが与えよう」〉〈「ヒト ハ ココロヲ クラウモノ」〉という歌詞を認めることが出来たわけで、そこに相関関係があるのは明白だったと言えるはず。ちなみに、この「FANATIC」は2020年夏の無観客配信ライブ『【Streaming+】luz 10th Anniversarry Project -REVIBE-』を開催する際に募られた るすなー(luzファンの総称)たちによるリクエスト投票にて、堂々の第1位を獲得していることも念のためここに付記しておきたい。
つまり、これらの流れをふまえたうえで考えるならば、今回の『luz 6th TOUR -FAITH-』は単なるアルバムツアーであるという以上に、luzにとってはここまでに4年がかりで描いてきた壮大にして崇高な物語の集大成を表現していく場であった、とも解釈出来るような気がしてならない。
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そんなluzにとっての、大切な『luz 6th TOUR -FAITH-』がZepp Haneda(TOKYO)でファイナルを迎えたこの夜。まず場内へと向けて放たれたのは、アルバム『FAITH』の中でも極めて高い突破力を感じさせる楽曲に仕上がっていた「SPIDER」だった。これは日本のロックシーンの最前線で邁進し続けている、THE ORAL CIGARETTES山中拓也からの楽曲提供によるもので、それをluzはこの場でそれぞれに名うてのギタリストたちであるRENOとMiA、貫録あるベーシストのMASASHI(Versailles)、そして敏腕ドラマーとして名高いLEVIN(La'cryma Christi)という、そうそうたる顔ぶれにして、もはやおなじみのメンツでもあるバンドメンバーを率いながら、まさにライブ感たっぷりなパフォーマンスを繰り広げてみせた。
「おい、東京! やっと会えたな。好きにやれよ。ファイナル行くぞ!!」
示教のごとき命令口調の煽りを入れるあたりからして、luzの教祖ぶりはどうやら今宵も絶好調な模様。また、るすなーたちが曲に合わせて俗にいう“おりたたみ”を展開することになった「ドローレ」では、luzがお立ち台の上でツインギターソロに興じるRENOとMiAにはさまれながらのけ3ショットを見せつつ、極上の表情で場内を見渡していた見事な上から目線の素晴らしさも、なかなかに印象深い一場面だったかと。
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もともとluzがいちファンとして愛聴していたという、シドの明希が御恵明希として楽曲提供をしたうえで、luzと歌詞を共同で書いたというスリリングにしてドラマティックな楽曲「Void」をはじめとして、今回のライブではソロシンガーというよりはバンドのボーカリストのような風情を感じさせることも多かったluzだが、それでもやはりライブ本編が進行していくにつれ、いよいよ教祖モードへとよりシフトしていく。
以前なら「ここからは崇拝の時間です」と言っていたような気がする「涅槃」での口上も、より熾烈な口調での「崇拝の時間だ!」へと変わっていたほか、luzにとってはひとつの起点となった楽曲であるとの旨を前述した「Dearest,Dearest」では以下のようにるすなーに対してのお触れが出されることに。
「明日のことなんて考えるな! たとえ声が出せなくても、出来ることはあるだろう! 拳、アタマ、全部使って来い!!」
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この限りなくサバトに近い魔宴となった本編のラストを飾ったのは、luzの伸びやかなボーカリゼイションが光るアカペラから始められたアルバム『FAITH』の表題曲「FAITH」と、教祖=luzを崇めるための曲としてライブの場では信者=るすなーたちが一心不乱に頭を振りながらの秘儀に興じる姿がすっかりお馴染となっている、ヘヴィなアグレッシブチューン「FANATIC」。そのどこか異様でありながらも、接する者を無条件に気圧すようなその圧倒的光景は、かつて1990年代から2000年代にかけ名だたるヴィジュアル系バンドたちが生み出していたライブの光景と重なるようなところがあり、ある意味でそれはソロのシンガーソングライターの表現領域を超越していた、と言ってもいいような気さえしたほど。
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「やっと……ここまでたどりつきました、全7公演! いつもは夏にワンマン廻らせてもらってたんですけど、今回はみんなに会いたくなってしもうたということでの初めての冬ツアーでした。みんな来てくれてありがとう!!!」
豹変とはこのことか?というくらいに、「Labyrinth」から始まったアンコールでは、つい先ほどまで何かに憑依されたかのような顔つきをみせていたのとは一転して、すっかり“luzくん”の表情とやわらかなトーンの声に戻っていたluz。本編では煽り以外のMCがなかった分、ここからはおおよそ30分近くにわたってサポートメンバーをまじえてのトークが場を和ませていくことになり、時おりluzが見せる天然ボケな物言いに対し、バンマスのRENOがつどつどツボを押されてしまうのか、堪え切れずに爆笑してしまうシーンが続出したのだが、そうした会話の端々にはluzとバンドメンバーたちとの良好な関係性までもが反映されていたようにも感じた。
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「このライブが終わっちゃうのはとても寂しいけど、こうやって会えたっていうことはまたきっと会えるってことだと信じて、僕はその時間を楽しみにしながら、これからも毎日頑張って努力していこうと思います。素敵な時間をありがとう。また絶対会おうね!」
最後にここからluzが歌いあげたのは、アルバム『FAITH』の中で12曲目に収録されていた「Glare」と、13曲目=最後に収められていた「Despair」の2曲。特に後者については、絶望というタイトルを掲げながらも賛美歌にも似た雰囲気を放つ神々しいコーラスと、慈悲深い〈絶望の巡礼 瓦礫の中で 君を見つけた 罪も罰も 今 歌になれ〉という歌詞たちが、最終的にこのライブに参加した人々の心を救済し癒やしていたと確信する。
その美しい様たるや、崇奉の光景ここに極まれりという雰囲気のものであったことは間違いない。これだけのツアーを完遂させたluzが、ここから次の12周年の節目に向かっていかなる飛躍をみせていくことになるのか。近いうちにluzが踏み出すであろう次なる新たな一歩に、心からの期待をしていたい。
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また、会場チケットがソールドアウトとなった本公演の模様が、1月29日にStreaming+、dTVにてオンライン配信されることが決定した。このツアーファイナルのパフォーマンスを見届けることができた人も、そうでない人も、オンラインならではのluzの表情やパフォーマンスを楽しめるはずだ。
さらに、オンライン配信決定に合わせて、本公演のセットリストのプレイリストが公開されたのでこちらも合わせてチェックしたい。

文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)

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