山田将司(THE BACK HORN)

山田将司(THE BACK HORN)

THE BACK HORNは才能の塊なので、
その魅力をふんだんに見せたい

先ほどの一度メジャーデビューを断ったお話をうかがった時にも思いましたが、メジャーシーンで活動し続けるTHE BACK HORNは華々しい世界にいるように思えるけど、楽曲にはそういった様子が受け取れる描写があまりないように感じます。そういった現実主義なところはメンバー共通なのかなと。

高校時代から引き連れてきた、俺の雰囲気が一番大きいのかもしれないです。でも、もとを辿ればみんな気持ちが軽いとあったにしても、意外に真面目なところがあって、その部分は共通していますね。ライヴをやるたびにTHE BACK HORN感もできて、それにみんなが向かっていっているのもあったと思います。

デビュー以降はかかわる人も増えたと思いますが、音楽が本格的に仕事になった時に心境の変化はありましたか?

そこは少しずつですかね。デビューから何年も経ってから責任感が出てきて、ライヴ会場のキャパも大きくなって、そこに対するプレッシャーや、“このバンドでもっと表現したいんだ”っていう気持ちと、それができていない現状にふてくされた時期があったり。それはメンバーみんなそれぞれにあると思います。メンバーの信頼関係が成り立つようになってから、このバンドの見せ方を各々が意識して、みんなの居場所がしっかりしていった気がするんですよ。“売れる音楽はいい音楽だ”とずっと思っているんですけど、そこの良さに引っかかっていない時期があって、自分らが納得するものを分かってくれる人が少ない切なさや痛みを人に伝えていた…共鳴できたからここまでこれたのかな?

また、バンド初期の曲やカップリングなど、普段のツアーで演奏しない楽曲を中心に披露するライヴ『マニアックヘブン』を2005年から毎年開催されていますが、楽曲やメンバーの個性を余すことなく表に出すことは意識的にされているのでしょうか?

それはありますね。THE BACK HORNは才能の塊で、ひとりひとりが強すぎるので。このバンドの魅力をどう伝えていくのかっていうのは、曲作りに対してもそうだし、バンドで初めての絵画集『ART THE BACK HORN』(2021年12月24日発売)も作れるくらいのバンドなので、その魅力はふんだんに見せていきたいと思っています。

デビューがあった20代ってどんな時期だったと思いますか?

強かったです。あれだけ狭い視野で、あれだけの熱量で、あらゆる感情まで潜り続ける覚悟があって、怖いものがなかったと言ったら噓になるけど、ずっと“周りのバンドのことはどうでもいい”って気持ちでやっていて。とにかく“心臓まで触ってくれる音楽をどれだけ作れるのか”ということしか考えていなかった。でも、どっちもなんですよね。脆かったけど、強かった。

30代はどうですか?

東日本大震災があって、THE BACK HORNは10年を超えて軌道に乗ってきたというか、THE BACK HORNらしさに意識的に向かい始めていたのが30代で、お客さんと向き合えるようになったのかな? ちゃんと聞く耳を持てたり、未曾有の事態になった時に“俺たちに何ができる?”って気持ちでバンド自ら動けたこととか、メンバー間の絆みたいなものがより強くなった気がします。THE BACK HORNというものに4人が向かって、“俺は何をすべきなのか? どういう音楽を打ち出していくべきなのか?”を意識できた10年だった。歌詞での一人称が“俺たち”とか、他者が交わってきたのは30代以降だと思いますね。

最後に、山田さんにとってのキーパーソンとなる人物は?

このバンドに参加するきっかけになったのは栄純だったので、栄純でもあるけど。当時の事務所の社長も寛容な目で見守ってくれていたし、インディーズ時代に栄純と一緒に住んでいた家の家賃が払えなくなった時に、代わりに払ってくれたのは栄純の母親だったし。

あははは。

栄純の母親はキーパーソンじゃないけど(笑)。ここでメンバーを挙げるのもこそばゆい感じがしますけど、栄純に誘われてバンドを組んだわけだし、今はみんなで曲を作っていますが、最初の頃は彼が作った曲を歌っていて、THE BACK HORNとしての自分がどんどん形成されていった感じはありますから、やっぱり菅波栄純です。

取材:千々和香苗

OKMusic編集部

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