L→R 岡田典之(Ba)、佐々木直也(Gu)、三浦隆一(Vo&Gu)

L→R 岡田典之(Ba)、佐々木直也(Gu)、三浦隆一(Vo&Gu)

【空想委員会 インタビュー】
変にこねくり回して考えたりせず、
自然に出てきたものを曲にしていった

自分にかけていた
呪縛から解放された

今作は12曲中2曲が佐々木さん作曲で、3曲が岡田さん作曲ですが、三浦さんは久しぶりにご自分以外の人が作るメロディーに歌詞をつけてみていかがでしたか?

三浦
ふたりから曲をもらうと“これにどんな歌詞を乗せる? どんな歌を歌う?”と訊かれているような気がして。その感覚を久しぶりに味わったので懐かしかったです。自分以外の人が作ったメロディーに歌詞をつけるのは、難しいけど面白いんですよ。岡田曲のメロディーには会心の歌詞が生まれやすくて、それは“自分の作るメロディーではないから書ける歌詞がある”ということだと思うんです。

バンドらしいエピソードですね。

三浦
外から刺激がくると、歌詞の内容もそこに引っ張られます。「1783」の歌詞なんて自分では絶対に書かない。これは完全に“佐々木直也が憧れるB'zの稲葉浩志さんへの想い”を歌詞にしています。だから、タイトルも“イナバサン”の語呂合わせだし、そういうおふざけをする余裕も出てきたというか。
佐々木
気づく人は気づくし、気づかない人には謎の暗号になる感じも面白いね。三浦くんが僕の曲につけてくれた歌詞を読むと、いつも“何かしら俺のことを歌ってくれてるんだろうな”と感じます。
三浦
「大河の一滴」は岡田おめでた話を聞いた直後に感動して(岡田は2019年4月に入籍)、余計なお世話だけど“岡田の人生は終わらない。まだまだここから続いていくんだ”と思いながら書いた歌詞だし、「積み木遊び」も岡田くんから見た“人生”や“親との関係”がもとになっています。そうやってメンバーの感覚を取り入れて曲を作れるのはバンドっぽくて面白いです。全曲自分のことを歌うことが空想委員会らしいと思っていたんですけど、今はそれがないので主人公は誰でもいい。何でも自由に書けるのが楽しいですね。

それはご自分の作った曲でも?

三浦
僕の作った曲は基本的には僕のことですけど、「Dodo」は“もし自分がこの人生を歩んでいなかったら?”と想像しながら書きました。“自分はたまたまデビューができたけど、デビューできずに夢も捨てられずに故郷の青森に出戻りしてくすぶっている可能性だって大いにあったんだ”と思ったりするので、その世界線の自分を歌詞にしたら面白いんじゃないかって。そういう書き方はしたことがなかったから、この先は何でも書けると思っています。

今作の歌詞は三浦さんのロマンチシストな面が前面に出ているとも思いました。

三浦
リアリストな思考しかできないと思っていたんですけど、今回は夢とか希望とかばっかり歌っていますね。意外とロマンチストだったんだなと思いました(笑)。休止前よりもそういうものの力を信じているというか、最近は恥ずかしがらずに“楽しい未来を作ろうぜ!”とか言えちゃうんです。前は“はぁ? お前が言うな”と自分にツッコミを入れちゃってたんですよ。だから、ライヴでも“みんなをもっと大きい会場に連れて行くよ”みたいに言いたい気持ちはあるんだけど、なかなか言えなくて。

最近はよくライヴのMCでも夢を語ってらっしゃいますよね。

三浦
活動休止して、音楽を辞めようと思っていた時に他のミュージシャンの曲を聴いて“やっぱ音楽ってすげぇな!”と感動して。“OASISってすげぇし、赤い公園ってすげぇし、すげぇアーティストがたくさんいるな…。もう一度音楽を信じてみようかな?”と思えたことで救われたのが大きいんだと思います。自分にかけていた呪縛から解放されました。

「コイアイ」で歌っていることに重なるエピソードではないでしょうか。

三浦
まだまだ青春なんですよね(笑)。年齢は重ねたけど、周りの同世代と比べると自分はまだ子供だと思うし、岡田くんはパパになるのもあってすごく大人に感じるんです。自分には足りないものがたくさんあるけど、足りないからこそバンドで夢物語を語ることが許されるんだろうなと。すごくラッキーだし、“それならバンバン言っちゃえ!”って。バンドの夢を諦めて、就職して結婚して家族を作って幸せに暮らしている大学の同級生を見ていると、“俺がやらないでどうするんだ!”とも思うし。

休止前の三浦さんからは絶対に聞けなかった言葉だと思います。

三浦
デビューから10年経って、やっとフロントマンらしくなれました!(笑) もちろん休止前の自分たちも間違っていなかったと思うし、コロナ禍になっても音楽ができる環境にいられることに“なんて自分はラッキーなんだろう”と思ったんです。それにこうやって2年振りに空想委員会で集まって、つくづくバランスのいい3人だなと実感したし、初めて“俺らって仲が良いんだなぁ”と。
佐々木・岡田
確かに!
佐々木
昔は一緒に遊びに行ったりしてたんですけど、インディーズデビューをして、メジャーデビューをして活動していく中で、ビジネスパートナーみたいな感覚が強くなっていって。
三浦
一緒にいると仕事の話ばかりになるから、仕事以外でメンバーと会いたくなかったんです。でも、今はそれがまったくない。
佐々木
今は月1で三浦くんの家に集まっています(笑)。今まででは考えられない!
岡田
毎回三浦さんが手料理を振る舞ってくれるんですよ。
佐々木
手料理を食べてゲラゲラ笑って…ビジネスパートナーから友達になりました。2019年に“現体制活動休止”と銘打って休止した時から、いつか解散なのか復活するのかはっきり答えを出さないと応援してくれるみなさんに申し訳ないと思っていたんです。でも、コロナ禍に入って、いつバンドができなくなるか分からないと痛感して。バンドができなくなってからバンドをやりたくなったら、人生で一番悔いが残ると思って活動再開を持ちかけました。辞めるバンドが多かったり、大事な人やものを失う人も多い世の中で、少しでもみんなに喜んでもらいたかった。ずっと俺らはお客さんに応援してもらって助けてもらっていたから、“今こそ立ち上がれ空想委員会!”って感じですね(笑)。

活動再開でファンの方々はもちろん、メンバーさんご自身も救われているのかもしれませんね。

三浦
“一生遊んで暮らしたい”という夢があって、今はそれが実現できているので、遊ばしてもらってありがたいです(笑)。ちゃんとした社会人になれないからバンドを始めたのに、なんであんなに社会人みたいにきっちり音楽をやろうとしてたんだろうな。

任せられるところが増えたのも現在の充実につながっているのではないでしょうか? 「will」は時乗浩一郎プロデューサーがアレンジを手がけていますし。

佐々木
インディーズデビューさせてくださったのが時乗さんなんです。10年の時を経てアレンジで参加してくださったのはすごくエモかったですね。

その時乗プロデューサーが、正式ドラマーなしで続けてきた空想委員会にドラムレスアレンジを組んでらっしゃるところも美しいですね。

三浦
さらにそれを10年前の『恋愛下手の作り方』というアルバムのタイトルを文字ったアルバムに入れて、同じく12月最終週にリリースして…全部計算だとドヤりたいところだけど、全部が偶然なんですよね。当時の作品のジャケットを描いてくれたまんのみさきちゃんが今回のジャケットを書いてくれたのも、まんのちゃんがOKしてくれなかったら実現していないし。全てがラッキーなんです。音楽ができているのもそういうことだと思いますね。
岡田
そうだね。空想委員会の活動の全てがシンプルに楽しい。バンドを始めた時と同じような感覚なんです。

2021年12月28日からスタートした『世渡り下手の伝え方ツアー』では全国15カ所を回るわけですが、話していただいた充実のムードが伝わるツアーになりそうですね。

佐々木
『世渡り下手の愛し方』で今持っているものを全て出しきった感覚があるので、それを大事に届けていくツアーにしたいです。
三浦
自分たちのペースで面白いことをやっていきたいよね。ずっと遊んでいるような先輩に憧れてきたのに、“俺が遊ばないでどうするんだ?”と思う。それがお客さんにとってエンタメになっていたら一番いいし、後輩のバンドマンに“あんなふうにバンド人生を送りたい”と思ってもらえたらものすごく幸せです。これまでもいろんなことを乗り越えてきたので、この先も大丈夫! なんとかなる! …その精神でバンドを続けていきたいです。

取材:沖さやこ

アルバム『世渡り下手の愛し方』2021年12月29日発売 ROCKBELL/ベルウッドレコード
    • BZCS-1195
    • ¥3,000(税込)

ライヴ情報

『空想委員会 デビュー10周年記念「世渡り下手の伝え方ツアー」』
※終了分は割愛
※最新情報はオフィシャルサイトにて
2/27(日) 青森・八戸LIVE HOUSE ROXX
3/01(火) 北海道・札幌Sound lab mole
3/05(土) 岩手・the five morioka
3/06(日) 宮城・仙台enn 2nd
3/24(木) 愛知・名古屋CLUB UPSET
3/25(金) 大阪・梅田シャングリラ
3/27(日) 香川・高松MONSTER
5/08(日) 新潟・新潟CLUB RIVERST
5/15(日) 茨城・水戸SONIC
5/29(日) 福島・LIVE STAGE PEAK ACTION
6/19(日) 福岡・INSA FUKUOKA
6/21(火) 岡山・岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
6/22(水) 広島・広島SECOND CRUTCH
7/29(金) 東京・下北沢シャングリラ

空想委員会 プロフィール

クウソウイインカイ:2010年1月に結成。2枚の自主盤『回顧録』『懺悔録』が、インターネット上の口コミで噂となって知名度を上げ、11年12月に初の全国流通盤『恋愛下手の作り方』でインディーズデビューし、オリコンインディーズチャートでは初登場10位を獲得し、5週にわたってチャートインを果たす。14年6月にアルバム『種の起源』でメジャーデビュー。19年4月1日をもって当時の体制での活動を終了し、メンバーはそれぞれの活動へ。21年4月に2年間の休止期間を経て活動再開を発表。再びインディーとして活動をスタートさせ、同年12月にアルバム『世渡り下手の愛し方』をリリース。空想委員会 オフィシャルHP

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OKMusic編集部

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