【仲村宗悟 インタビュー】
「流転」はサウンド面で
また新しいところを見せられたと思う
自分を客観視できている人じゃないと、
次のステップに進めない
続いて2022年1月26日に発売されるニューシングル「流転」について話しましょう。「流転」は『最遊記RELOAD -ZEROIN-』のED主題歌ですが、この曲が生まれた背景というのは?
タイアップではあるんですけど、アニメサイドから注文されたのは曲のテンポ感くらいでした。この「流転」の歌詞は…『最遊記』には第三十一代唐亜玄奘三蔵法師という登場人物がいて、三蔵はタバコを吸うんで、タバコを吸う描写と月がこの作品に合うんじゃないかというところから書き始めました。そこからイメージが膨らんで、常に流れ続けていく時代の中で、自分だけがそこに乗っかれないまま取り残されている状態がハマると思ったんです。それをそのまま書いた歌詞になっています。タバコの煙が空で散り散りになっていくさまは自分を見ているようだな…という作品を書きたかったんですよ。それに、「流転」の歌詞は曲の中で解決させないようにしました。
翳りや儚さを描いた歌詞ではありますが暗さは感じなくて、“こういう状況でも俺は強く生きる”と言っているように感じました。
自分を再確認できていたり、客観視できている人じゃないと、次のステップに進めないですよね。「流転」の主人公は自分の現状が分かっているわけですよ。周りが動いているのに自分はずっとここにいるのかと分かっているから、先に進めるんですよね。そういうところを感じ取ってもらえると嬉しいです。
言葉にはしていないことを読み取らせるという良質な歌詞と言えますね。「流転」の楽曲については?
曲調に関しては速い曲ではなくて、ミドルテンポかスローテンポにしてほしいというリクエストがありました。エンディングらしいものをと。でも、そこまでの枷みたいなものはなかったし、楽曲はそれこそ一発OKでした。
やりますね。曲はどんなふうに作られたのでしょう?
タイアップの時はいつもシナリオを読んだり、キャラクターの設定を見たりするんで、今回もそういうことをさせていただきました。もともと『最遊記RELOAD』は僕ら世代のアニメなんですよ。シナリオを見て“あぁ、こういう感じだったな”と思いつつ、原作の漫画も自分で買って読んで、そこから“じゃあ、書き始めるか!”と曲から作っていって。で、“これは6/8拍子がいいな”と思ってギターを弾いたら、コードもメロディーも勝手に出てきました。なので、この曲はすごく早くできましたね。
すごい! それに、この曲は効果的なビートチェンジも光っています。
間奏でリズムが変わるんですけど、それはアレンジャーの村山☆潤さんの発想ですね。素晴らしいアイディアだと思いました。僕は1番だけを書いて、あまり細かいことは伝えずに潤さんにアレンジをお願いしたら、最初からめちゃめちゃいいものが返ってきて。潤さんはちょっとやりすぎかなと言っていたけど、“いやいや、全然やりすぎじゃないです!”と。逆に“もっとガンガンいこう!”という話をして、今のかたちになったんです。1番が終わったあとにリズムが変わるという発想をくれた時に、間奏で変わったリズムのまま2番にいくことにしたんですよ。なので、この曲は潤さんからもらったものが大きいですね。
とはいえ、仲村さんが作られた曲が、そういうインスピレーションを与えるものだったのだという気がしますが。
潤さんもそう言ってくれましたけど、僕としてはもらえたものが大きかったから。お互いにいい共鳴ができたし、サウンド面でまた新しいところを見せられたと思いますね。
今のリスナーは短いサイズの中にフックが散りばめられている楽曲を求めている人が多いのですが、「流転」はまさにそういうものになっていますね。
そうですね。逆に、最近の洋楽は音数がめっちゃ少ないのが主流なんですよね。曲が短くなっているのは同じですけど。だから、「流転」は展開を凝りつつサウンド的には“バンドって超カッコ良いな”という感じを出したかったんです。
時代の流れもしっかり感じ取っていることが分かります。「流転」はMVもインパクトがありました。
今回のMVを作ってくださったのは初めての監督さんだったんですけど、最初に打ち合わせをしたあとに3つの案を出してくれたんですね。そういうふうにプレゼンする場合って、だいたいが1案目に“これに決まるんじゃないか”というものを用意するわけですよ。でも、僕は3つ目の海に入る案を見た時、“間違いなく、3案目がいいよ”と言ったんです。絵が絶対的に強いから、きっと観た人が衝撃を受けると思って。
確かに衝撃を受けました。しかも、一番大変なパターンを自らチョイスされたんですね。
いい作品を作るためには、それだけの決意や覚悟がないとダメですからね。うちのマネージャーも“海だ! 海にしよう!”って言っていたし(笑)。で、3案になったんですけど、実は監督も“本当はこれが一番やりたかったんです!”と言ってましたね。本当はこれをやりたくて3案として紛れ込ませていたけど、絶対に事務所がOKしないと思っていたらしくて。だから、実現して良かったです。
仲村さんの男気を感じます! でも、撮影は大変だったのでは?
まぁ、そうですね。寒かったし、海に入ったのが深夜の1時とか2時だったんですよ。海に入る以外のシーンを先に撮って、最後に海という流れだったから。夜中の海はライトを点けたりしないと本当に真っ暗で何も見えない…1メートル先が見えないほどの暗さだったんで。そういう状況の中、覚悟を決めて海に入るという(笑)。でも、撮影自体はすごく楽しかったです。監督は僕が自ら海に入ると言ったことが嬉しかったのか、夜なべしていろんなものを用意してくれていたんですよ。例えば、プロジェクトマッピングみたいに僕の顔に光が当たっているシーンがあるんですけど、雷とかいろんな映像を用意してくれていて、“こんなものを作ってきました。あと、これも作ってきました”と言うんです。いろんなアーティストを撮られているすごい監督が、そうやって尽力してくれて。僕はパッションがある人が好きだし、自分の仕事に誇りや自信を持っている人が好きなので、自分もそれに応えたいという気持ちになりましたね。
「流転」のアレンジをした時と同じような共鳴がMV撮影でも起ったと。
そうですね。カメラマンさんもすごくパッションがある人で、僕が海に入っているシーンとか“最高だぜ! いいねぇ! ヒュウーッ!”とか言いながら撮っているんですよ(笑)。それに乗せられたというのもありましたね。あと、撮影にドローンライトを使ったんですが、今のドローンライトはめちゃくちゃヤバくて。MVを観ると大量のライトを持ち込んだように感じるかもしれないけど、ドローンライトだけで十分な光量があったんです。操縦もプロの方がふたりきてくれていたし、細かいアプローチとかもすごくて、いい絵がたくさん撮れました。チームとしての空気も良ったし、撮影が終わった時、カメラマンさんとかとハイタッチをして、最後に監督とハグしました。出来上がったMVを観ても嬉しかった…最高のものを作ってくれたと思ったし、いいMVを作ることができて本当に良かったです。