『RADIO CRAZY presents THE GRAND
SLAM』オフィシャルレポートーーブル
エン、緑黄色社会、Hump Backらが証
明した確かな前進

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM 2021.12.27(MON)京セラドーム大阪
2021年12月25日(土)から28日(火)の4日間、京セラドーム大阪にて『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』が開催。ラジオ局FM802が主催する年末恒例のロックフェスで、2年ぶりとなる今年は長年開催してきたインテックス大阪から場所を移し、1ステージの新しいスタイルで全40組がライブを繰り広げる。

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』
会場が京セラドームに移っても、『RADIO CRAZY』らしさはそのまま。例えば、アートユニットのWHOLE9が来年の干支をモチーフに描いた、名物の巨大バナーも設置。また、毎年賑わいを見せる縁日が集まった「寄って亭」や記念撮影などで人気の音波神社も出現。

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』
今年はライブ会場内にあるため、ステージライトに照らされて、今までにない独特の厳かさを帯びた光景を生み出していたり。また、チケットがなくてもアーティストやオリジナルグッズを購入できたり、フードが京セラドーム内の売店で販売されていて野球観戦に来たような気分が味えたりもする(フード、もしくはドリンクを買うと、開催日によって色が違う「オリジナルステッカー」が貰える特典も)。

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』
さらに、ライブ出演前後にアーティストが立ち寄って、コメントを収録するSpotifyブースも。当日のセットリストが聴けるプレイリストが公開されているので、余韻に浸ったり現場に来られなかった人も追体験できるような試みがなされている。もちろん、FM802でのライブ音源やアーティストからのメッセージも随時オンエアされているので、遠く離れた人も『RADIO CRAZY』に思いを馳せながら参戦することができる。

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』
ラジオ局主催ならではの音楽との出会い、楽しみ方、そして繋がりに満ちた魅力はこれまで通り、どころかプラスαになっている今年の『RADIO CRAZY』。今回は、27日(月)前半の模様を早速レポートしよう。
BLUE ENCOUNT 撮影=井上嘉和
FM802のDJ落合健太郎に「『RADIO CRAZY』とFM802にとって、欠かせないバンドです!」と紹介され、登場したのはBLUE ENCOUNT。「みんな準備できてるか!? はじめるよー!」と田邊駿一(Vo.Gt)が口火を切って、いざライブがスタート!……と思いきや、まさかの機材トラブルで一旦中断することに。
それでも朗らかに、「ちょっと待ってよ。俺さ、今日、朝5時起きで心斎橋のサウナに行って、すげえ整っているから最高のライブできると思います! けど、機材が全然整ってなかったわ(笑)」(田邊)と笑いに変え、一旦メンバー全員退場するのを観客が拍手で送り出す、のっけから斬新な展開となった。
BLUE ENCOUNT
気を取り直して、DJ落合が「This Is LIVE! これがライブですよ。みなさんと一緒に力を合わせていきましょう!」と呼び込み、より盛大な拍手に迎えられてメンバーが再登場。「準備できてるかと聞いたけど俺たちができてなかった、ごめんね。俺ららしくていいかもしんないな。カッコつけません、俺ららしく初めてのドームを刻みたいと思います!」(田邊)と決意を新たに、フルスロットルのテンションで「囮囚」がぶちかまされた。ゆったりと再登場を待っていたムードから一転、いきなりフロアの沸点を突き上げる熱々なステージングの緩急に、こちらまで整ってハイになる。
BLUE ENCOUNT
続け様に「ポラリス」を投下し、焚き付けるようにフロアを揺らした「バッドパラドックス」。さらに、「VS」では江口雄也(Gt)と辻村勇太(Ba)が頭を振り回しながら迫真のプレイをみせ、高村佳秀(Dr)の刻むリズムに呼応して観客も手を挙げ、体を揺らし応える。「ドームで初めてこの曲を歌う瞬間が、今日でよかったと思う」と田邊が清々しい表情をみせ、「もっと光を」を披露。ドームのスケールに映える力強いナンバーで聴くものの心を、そしてこれから先の未来も照らすようにしてじっくりと届けられた。
BLUE ENCOUNT
「場所が変わっても、802の人たちが死ぬ気で作ってくれてるこの居場所も、このステージから見る景色もずっと好きです。いろんな葛藤があったと思うし、いろいろ戦ったと思う。俺たちにまたこの居場所をつくってくれたことに感謝するしかない。『RADIO CRAZY』帰ってきてくれてありがとうございます!」と観客の分まで感謝を伝えた田邊。
BLUE ENCOUNT
さらに、「これからも『RADIO CRAZY』という物語の一部になるように、ミスっても音が止まったとしても絶対に歌い続ける。あなたの人生の一部になれるように、これからも死ぬ気で歌っていくから!」と訴え、ラストナンバー「ハミングバード」へ。機材トラブルもなんのその。会場も一切不穏な空気にもならず温かく見守り、ライブが始まれば瞬く間に最高潮へ。全国のライブハウスを駆け巡り音楽を届けてきたライブバンドの底力をこれでもかと見せつけられたし、ブルエンと観客の熱くてぶ厚い信頼関係をひしひしと感じるステージで、堂々たる先頭打者ホームランだった。
THE BAWDIES 撮影=渡邉一生
続く2番打者は、2009年の『RADIO CRAZY』初回にも出演している常連バンドTHE BAWDIES。「今年最後のお祭り、飛び上がっていきましょうか!」とROY(Vo.Ba)と呼びかけ、1曲目「NO WAY」から観客は心も体も弾ませながら踊って応える。そんなフロアの様子を受けてか、JIM(Gt.Cho)もはちきれんばかりの笑顔でギターを鳴らし、ステージで転げ回りながらプレイ。早速の全力投球といえるステージングに、胸が熱くならないはずがない。
THE BAWDIES
そのまま軽快に「SKIPPIN’ STONES」を打ち鳴らし、おなじみ「HOT DOG劇場」へ。初めましての人も驚かないように、ROYが今から何が行われるかを丁寧に解説。「今からちょっとしたミュージカルがあるんですけどね。最近だとFM802のDJさんに出たいとか言われるんですけど、そんな簡単なもんじゃないですから。選ばれた人しか立てませんので」とフリを入れつつステージが暗転。
THE BAWDIES
すると、某国民的ゲームのキャラに扮したROYとTAXMAN(Gt.Vo)が登場。対して、MARCY(Dr.Cho)とJIMを引き連れてFM802DJの樋口大喜が登場しバトルが勃発。その最中で、美味しい「ホットドッグ」が出来上がって、「HOT DOG」へとなだれ込む……! と、文字にするとなんのこっちゃだと思うが、とにかくもう毎回何が行われるのか楽しみで、1曲披露できる時間を小芝居に当てる心意気と遊び心がもうクセになる時間なのだ。だんだん手作りの小道具にも手が込んで大掛かりになっているのもまた愉快である。
THE BAWDIES
一転、真面目なトーンでROYが「夏の終わりを惜しみつつ、次にやってくる季節に思いを馳せる曲です」と紹介。「あ、わかってます。冬ですよね」と和ませながらも、「コロナとかもあって今まで通りライブが楽しめなかったり。前はよかったなと振り返りがちだけど、それより次にやっている人生に目を向けた方が楽しめるはずなので、共に前を向いていきましょう」とメッセージを送り、「END OF THE SUMMER」を披露。
THE BAWDIES
しっかりと歌い届け、続く「IT'S TOO LATE」でさらに勢いを加速。MARCYのドラムが畳み掛けるように打ち鳴らし、TAXMANのギターも冴えわたる「T.Y.I.A.」では心の中で観客と大合唱。ラストは、「FM802とみなさんに、感謝を込めて大花火をあげたい!」とROYのリクエストから「JUST BE COOL」。リズムに合わせて拳を突きあげたり手を振り、ドーム中が花火のように爆ぜるクライマックスを迎え締めくくられた。
Hump Back 撮影=井上嘉和
リハーサルから「LILLY」を披露し、会場のボルテージを高めていたHump Backは、「拝啓、少年よ」でライブをスタート。林萌々子(Vo.Gt)、ぴか(Ba.Cho)、美咲(Dr.Cho)が爆音を鳴らし、歌声がストーンとドームに突き抜ける始まりからもう、涙が溢れそうになる。
ストレートに心を打ち抜く歌声の持つパワー。そして胸が高鳴り、いてもたってもいられなくなるような、3人が打ち鳴らすロックンロールを食らって、気づけば拳を突き上げていた人は少なくないはず。そのまま「生きて行く」「オレンジ」を畳み掛け、「行き過ぎぐらいがちょうどいい!」(林)とぶっ飛ばす。追いつけ追い越せと言わんばかりに観客ひとりひとりが思い思いの楽しみ方で呼応していく様は圧巻だった。
Hump Back
「みんな楽しそうに聴いてますけど、Hump Backの缶バッチをTwitterで交換に出してるの知ってますよ! 交換に出さんとってや!」と、『レディクレ』名物のガチャガチャでつながる、もうひとつの楽しみ方についてウォッチしていることを明かし、笑いを誘う。「別に手元に残らんかったとしても、ずっと心に残るライブをするんで宜しくお願いします!」の宣言がまた、かっこよくて痺れる。
Hump Back 
さらに、去年は開催されなかった悔しさを滲ませながら、今日を迎えられたことに感謝と喜びを伝える。その上で、「やっとフェスができるようになって、お客さんもライブに来れるようになって、前が戻ってきたと言いますけど口が裂けても「戻る」なんてうちらは言わへん。確実に進んでる、前に戻るわけない。絶対に強くなってるもん。フェスも人もラジオもライブハウスもバンドも……あの頃のうちらと『レディクレ』とは一味も二味も違う……」と思いの丈を語り、林が「宣誓」をアレンジしながら弾き語った。
<人生、立ち止まることはあれど 後ろに戻ることはない 僕はずっと、振り返りながら前に進んでいる 止められたって、止まらない もう今にも、今にもはち切れそうなんだ 僕は、こんな気持ちをロックンロールと言いたい……>と、歌っていたように聴こえた。
Hump Back
その場にいた人だけが聴ける、Hump Backがその瞬間を刻むようにして歌った、心の声。なので、文字に残すのはお門違いかもしれないが、この日の彼女たち、そしてその場の観客だけでなくすべての音楽好きの思いを代弁していたように思えてならなかったので、あえて書き記したい。
Hump Back
そのまま「番狂わせ」に入り、「ティーンエイジサンセット」「クジラ」へと駆け抜け、ラストの「星丘公園」に林が満足いかず、高らかに「宣誓」で締めくくる。そんな最後の最後まで、今日がいつだって最高で、今という瞬間しかないことをロックンロールで証明してくれた。そして、飾らず胸の内をさらけ出し、ありのままでいることの強さと美しさを見せ、ドームでもライブハウスと変わらない戦い方で、バンドは最高だなということを実感させてくれるライブだった。
ORANGE RANGE
DJ樋口に呼び込まれて、登場したのは満塁ホームランの期待を裏切らない四番打者、ORANGE RANGE。10月にリリースされた新EP「ラビリンス」から始まったステージは、瞬く間にフロアを揺らすグルーヴを生み、YAMATO(Vo)がアグレッシブに煽りながら会場のテンションをぶち上げる。
ORANGE RANGE
続けざまにRYO(Vo)が「『レディクレ』のみなさん、ORANGE RANGEと繋がってくれますかー!」とキラーチューン「以心電信」へ。見渡す限り手を振り、体を揺らしながら楽しむ観客たちに、今度は「ロコローション」が畳み掛けられ盛り上がらずにはいられない展開に。<刺激が欲しけりゃバカニナレ>の歌詞の通り、もう楽しまにゃ損と言わんばかりに、思いっきり弾けるフロアの様子は圧巻だった。
ORANGE RANGE
さらに、ゆるく楽しみながらワークアウトができる画期的な新曲「HEALTH」も披露。その場で楽曲に合わせてエクササイズする人たちが続出で、踊らせる! というよりもシェイプアップするユニークな光景は、おかしくも痛快。これには、HIROKI(Vo)も「声を出せないという制限があって、その中で最大限に楽しんでいけたらと思っていたけれど、すごい景色ですね! きっと知らない曲だったという人も多いはずだけど、楽しんでくれてうれしい」と喜びを露わに。
ORANGE RANGE
続けて「一昨年は全くライブできなくて。だけど成長を感じられる1年でした。なので、このステップをもっと大きくできるような、最高のあしがかりにしたいですね。ほとんどの人が知ってくれているような、「ORANGE RANGE」のライブで攻めていきます。明日から沖縄に戻りますけど、大阪に夏を置いていきたいなと思います!」と投げかけ、「上海ハニー」へ。
ORANGE RANGE
沖縄の伝統的な踊りカチャーシーを観客みんなと舞ったりしながら、常夏気分を満喫。外は雪が降るほどの寒さというのに、ドーム内はまるで野外かのような開放感で熱気で汗ばむ。そのまま「Enjoy!」ではコール&クラップのレスポンスも見事にキメて、ラストはメジャーデビューシングル「キリキリマイ」をボム。陽気でハッピーなお祭り気分から一転、会場をゴリゴリのライブハウスに変貌させ、つんざくような残響を鳴らしながらステージを後にした。
ORANGE RANGE 撮影=渡邉一生
■緑⻩色社会
緑黄色社会 撮影=井上嘉和
リハーサルで、DREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」を弾いてみせ、「たとえたとえ」を披露するなど大放出で早くも観客の心を満たしていたのは、緑黄色社会。颯爽と登場し、peppeのキーボードから「LITMUS」がスタート。美しい調べと長屋晴子(Vo.Gt)の伸びやかな歌声で、観客の心を一気にひきつける。
緑黄色社会
そのまま軽快に「これからのこと、それからのこと」、そして「Shout Baby」が繰り出され、力強く歌い上げられるとクラップで応え、ドームでのワンマンライブさながらの壮大なスケール感と一体感を生み出していった。
緑黄色社会
MCで長屋は、穴見真吾(Ba)調べで日本で一番、緑黄色社会を聴いている市町村が大阪市だったことに触れ、感謝を伝える。そのまま「ありがたいことに、年末にライブをして年内に悔いがないように1年を終えることが染み付いていました。けど、去年はイベントがなくなって、今年が終わったのかモヤモヤしながら年末を過ごしてました。きっと、同じような気持ちの人がたくさんいたのかなと」と振り返った。だからこそ、今年はライブができる喜びいっぱいのまま、去年の分までステージに立ち、モヤモヤを発散させて年を明けようと声をかける。
緑黄色社会
さらに、「『GRAND SLAM』は、いろんな試合で優勝するという意味だそうです。一番というのはひとつじゃなくていいなと思うので、今日はそれぞれがそれぞれにやり抜いて、みんな同率1位で。私はここで全てを出し切っていきます。優勝しよう!」と「始まりの歌」へ。長屋の「悔いのないようにね、心の底から楽しいんでいこう!」の言葉の通り、声を出せない分、これでもかと思いっきり打ち鳴らされるクラップがドームに響きわたっていた。
緑黄色社会
そして「sabotage」「Mela!」と続けられドラマチックな最高潮へと向かう。「ほんとにほんとにほんとに、お世話になりました! たくさんライブができて、歌を歌えて本当に幸せでした!」と長屋がハンドマイクで歌い、穴見と小林壱誓(Gt)も向き合ってプレイ。誰一人、思い残すことがないように、ライブに身を投じる一時は多幸感でいっぱいだった。清々しい表情でステージを後にするメンバー、彼彼女たちに花を添えるように手を振ったり拍手を送る観客たち。今年の最後に忘れらない時間を過ごした者同士を讃えあい、感謝するように互いに思い合う光景はなんとも心温まる眩しさがあった。
取材・文=大西健斗 撮影=FM802提供(渡邉一生、井上嘉和)
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