城田優、ミュージカル『カーテンズ』
で再び演出家と主演の二足の草鞋を履
く「自分にブーメランが返ってくる覚
悟で芝居を指導している」

2007年にブロードウェイで開幕し、同年の『トニー賞』では8部門でノミネートされ、高評価を得たミュージカル『カーテンズ』。日本では2010年に東山紀之主演で上演され、今回、城田優の演出、主演で新しくよみがえる。物語の舞台は1959年のボストン・コロニアル劇場。新作ミュージカル『ロビン・フッド』はブロードウェイに向けてトライアウト公演の真っ最中だった。そして公演初日、才能はないのにプライドだけは高く、評判が悪かった主演女優のジェシカが舞台上で何者かに殺害されるという事件が発生した。駆けつけたのはミュージカルオタクの警部補、フランク・チョーフィー。彼は事件の解決を急ぎながらも、舞台作品が気になり始め、事件同様に舞台の内容にも首を突っ込み始める。
主な配役は次の通り。警部補のフランクを城田優、新人女優のニキを菅井友香(櫻坂46)、看板俳優で振付家のボビーを三浦翔平、元女優の作詞家ジョージアを瀬奈じゅん、作曲家のアーロンを岸祐二、プロデューサーのカルメンを原田薫、カルメンの娘で女優のバンビを中嶋紗希、そして演出家のべリングを宮川浩が演じる。城田を軸に、予測不能なミステリー・ミュージカルコメディを展開する。
城田優
先日、行われた取材会で城田は次のような話をしてくれた。
まず、『カーテンズ』の見どころについては、「ミュージカルを題材としたシアターもので、劇中劇が入る二層構造になっています。割とコメディタッチの作品で、僕も見たことのないストーリーで面白いなと思ったのが最初の印象です」
演出家として「歌、芝居、ダンスというミュージカルの一番大事な三つの点をしっかりと線にしていきたい」と意気込み、初めてミュージカル作品に出演する三浦翔平、菅井友香については「可能性を感じる」と期待を寄せる。そんなフレッシュな顔ぶれを支えるのは、瀬奈、岸、原田、宮川ら実力派俳優たちだ。
「初挑戦の2人はミュージカルというものに興味を持ってくださっています。そして僕自身も新たな人材や新たな風をミュージカルの世界に入れたいと思っていることもあり、出演していただきます。芸歴はそれぞれ長いのですが、初ミュージカルというフレッシュな方たちと、瀬奈じゅんさんをはじめ、ベテランの方たちが脇を固めてくださることで、私、城田が安心して演出をできるんじゃないかなと思っております」とキャストたちに全幅の信頼を置いた。
俳優・城田優の演出家としての強みを尋ねると、「俳優を「やっていた」でもなく、「やっていない」でもない、「やっている」ということでしょうか。主演をしながらの演出はメリット、デメリットがたくさんあると思いますが、僕の強みは演出をしながら出演することで役者さんの気持ちを第一に考えられることだと少なくとも思っています」と話した。
城田優
公私ともに親交のある三浦翔平については、次のようなエピソードを教えてくれた。
「彼はとてもミュージカルが好きで、友人の中ではトップクラスで僕の作品を観に来てくれる1人です。どれだけ忙しくても、時間の合間を縫って、知り合ってからほぼほぼ作品を観に来てくれてると思いますし、それに加えて、「今回はこうだった」と総評もしてくれます。鋭い意見をくれることもあれば、シンプルに褒めてくれることもありますけど、本人も非常にミュージカルを愛していて、いつか挑戦したいと常々話していました。彼が挑戦できるようなキッカケがあれば僕もチャンスをあげたいなと思っていた中で、この『カーテンズ』の演出のお話をいただきました」
最後に、次のような言葉で締めくくった。
「心踊るダンスナンバーや劇中劇もあり、とにかくたくさんのエンターテイメント要素が詰まった作品です。笑ってもらいながら、数時間の素敵な旅を劇場で過ごしていただけるよう、演出、そして主演として精一杯、このカンパニーを引っ張っていければと思っています。まずは東京公演を完走できるように。そしてさらに脂が乗った状態で大阪に来られるように努めたい次第です」
続いてSPICE単独インタビューでは、主にミュージカルの演出について話を聞いた。
城田優
――城田さんの初のミュージカル演出作品は2016年に東京で上演した『THE APPLE TREE(アップル・ツリー)』でした。初めての演出経験でつかんだものはありましたか?
スポンジで言うと乾いた状態から一気に水分を得た感じでした。演出家としては初めてのことだらけでしたから。小さな劇場で、予算もなくて、当たり前の話ですけどやりたいことをやれるような余裕もなく……。衣装はオリジナルではなく、過去の作品で使われていたものをお借りして、美術も自分のやりたいことをなるべく叶えつつも、低予算で済むように工夫しました。そういうところから勉強させてくれたワタナベエンターテインメントの社長には感謝しかありません。同時に、お芝居だったり、ものづくりをしていく上で自分が何を大切に思うかということの基準が定まっていったんじゃないかなと思います。
――その基準とは何でしょうか。
芝居です。それしかないです。他のものはできているんですよ。作詞作曲という過程はありますけど、楽曲も完成されている。お客様に作品を観てもらう時、何を一番大切にするかといったらキャラクターを信じること。美術も大事、セットも衣装も全部大事だけど、その衣装を着て、かつらをつけて、美術の中に存在しているキャラクターが信じられなかったら、もう話に入っていけないんですよね。逆に言えば、ある程度、衣装や美術が自分の好みじゃなくても、そこにいる人間を信じられたら、物語に入り込める。僕らは人間ですから、その場にいる人間の温度や感情は変わり続けるので、そこをいかにちゃんと作ることができるか。ミュージカルに携わらせていただいて、たくさんの経験をさせていただくなかで、やっぱり一番大事に思うのは、俳優がその役をどう感じて、どう表現しているかということ。その根源となるのが、演出家が何を指示しているかなんですよね。僕は「その世界を信じて、感じて、生きてくれ」と常に言っています。
城田優
――今のお話を聞いて、城田さんが演出されたミュージカル『ファントム』(2019年上演)での加藤和樹さんが、今まで私は加藤さんの何を見てきたんかなと思うくらい、すごくよかったんですよね。それは城田さんの演出というのが大きいのかなと思ったのですが。
誤解を恐れずに言えば、そうです。僕は彼に失礼な話ではあるんですけど「俺はお前の舞台を見ても、正直、どの役も同じように見える」と伝えました。「俺は『ファントム』でお前を今までで一番輝かせるし、加藤和樹が演じる『ファントム』のエリックという人物を誰よりも魅力的に見せることを約束するから、俺を信じてついて来てほしい。一度自分を、全部ぶっ壊してくれ」ということをお願いしました。その結果が、おっしゃる通り、ちゃんと形になったんだと思います。
――演出と主演の両方を務めるというのは、どんな心境でしょうか。
愚直にただただまっすぐ、目的をひたすら追求して続けるのが僕の演出です。それが「厳しい」「うるさい」という言葉に変換されることもあると思うのですが、僕自身に対しても同じことです。なぜなら、自分が矢面に立って主演として話を転がしていかないといけないので。人に言うことが自分にも返ってくるわけです。人に言ったことが全部、自分にブーメランで跳ね返ってくるから、そういう状況下に自分をわざわざ置いてまで厳しいことを言うという覚悟は、出演者のみんなにも感じてもらいたいし、自分も頑張らないといけません。
――常にハードルを上げていって。
はい。常にそうであれと思います。エンターテイナー、何かを表現する人たち、スポーツ選手もそうですけど、常に限界を超えて、挑戦し続けなければいけないと思っています。
――最後に、この12月26日(日)に城田さんは36歳を迎えられます。30歳になった年のインタビューでは、毎週買われていたコミックを止められたと。あれから6年が経とうとしていますが、止めたことで何か変わりましたか?
特に変わらない(笑)。でも、コミックを買って読むという時間が他の時間に充てられるようになったので、基本的にはこれは自己満足ですが、その先に何があるか、止めたことでできた時間を何に使うかという面を考えられるようになりました。好きなことを一つ止めるという大きな決断をして、新たにできた時間の積み重ねが今に繋がっていると思います。
城田優
取材・文=Iwamoto.K 撮影=福家信哉
スタイリング=橘 昌吾 ヘアメイク=花村枝美〔MARVEE〕

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