ピアニスト辻井伸行「協奏曲の世界に
たっぷりと浸って」~ヴァイオリニス
ト三浦文彰と“二人ソリスト”で贈る
『究極の協奏曲コンサート』開催へ

日本を代表するピアニスト・辻井伸行が、若手実力派ヴァイオリ二ストの三浦文彰読売日本交響楽団、指揮者のニール・トムソンと共にステージに立つ『究極の協奏曲コンサート』が2022年3月26日(土)の周南市文化会館 大ホール(山口県周南市)を皮切りにスタートする。
中国・四国~九州地方で全7公演を予定している今回のコンサートについて辻井にオンラインでインタビュー。公演では辻井の人生を変えたラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏することも決まっている。辻井は「僕が新しいスタートに立てた大切な曲。みなさんに作品の魅力を音で伝えたい」と意気込みを見せた。
――辻井さんはこれまでにも『究極の協奏曲コンサート』に出演してこられました。ソロとの違いはどんなところにありますか。
ソロは自分一人の演奏なので、僕の演奏をたっぷりとお届けできるコンサートです。今回の『究極の協奏曲コンサート』には、僕と三浦さん、二人のソリストがおりますので、ピアノとヴァイオリンの協奏曲をお楽しみいただける贅沢な内容になっています。普段は一人のソリストということが多いと思いますので、協奏曲の世界にたっぷりと浸っていただくことができると思います。
――三浦さんとはこれまでに何度も共演されています。今回はそれぞれがソリストとして協奏曲を披露されますので、共演はありませんが、三浦さんに対してはどのような印象をお持ちですか。
三浦さんと初めて出会ったのは、5~6年前。この『究極の協奏曲コンサート』がきっかけでした。ツアーでご一緒したのも初めてで、食事をしたりお酒を飲んだり、演奏以外にもご一緒することが多く意気投合しました。お酒を酌み交わす中で、「一緒に室内楽をやりたいね」などと話すこともあって。ツアーの後に共演したこともありました。彼とは何度も演奏を重ねてきているので、「いま何がしたいのか」をすぐに理解することができます。リハーサルでも本番でも同じように感じられるので、すぐにやりたいことを表現することができる。やっていてとても楽しいと感じます。同じ音楽家仲間でそこまで親しくなった人が当時はいなかったので、かけがえのない存在です。プロの音楽家としてはもちろん、プライベートでは友人として話ができる。素晴らしい人です。
――ツアーでは、史上最年少で英国王立音楽大学指揮科の学科長に抜擢された指揮者のニール・トムソンさんと共演されますね。
はい。彼とはこれまでに何度も共演をさせていただいたことがあります。僕がやりたいと思うことをよく分かってくれている。素晴らしい音楽家なので、演奏していてとても楽しいです。
辻井伸行(c)Yuji Hori
――新型コロナウィルス感染防止の観点から、多くの公演が延期や中止になりました。辻井さんはコロナ禍でもオンラインでのコンサートを行うなど、活動を続けていらっしゃいましたね。届けてくださった演奏は閉じかけた心を解してくれました。配信での演奏と有観客での演奏について、どのようにとらえていらっしゃいますか。
コロナ禍で生の音楽を直接届けることができない時期がありました。でも「今だからこそ、音楽を届けなくては!」という思いが生まれYouTubeチャンネルで演奏を配信をしたり、オンラインコンサートを企画しました。生の演奏会は席によって指の動きが見えにくいこともありますが、配信は手元をアップにするなどして、誰でも指の動きを間近で見ることができる良さがありました。生の演奏は、画面越しと違って、臨場感があることが魅力だと思います。今回のツアーでは、ライブならではの迫力をぜひ味わっていただきたいです。
――今回の『究極の協奏曲コンサート』では、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏されますね。辻井さんが日本人として初優勝を飾った『第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール』で披露された曲でもあります。
2009年の『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール』のファイナルで演奏をしました。ラフマニノフの中でもとても有名な作品です。ラフマニノフは最初の交響曲(1番)で失敗をしてしまって精神的に落ち込んだ時期があったのですが、この2番が完成したことで復活したんです。2番には曲の途中や最後の方に「未来に向かって人生が始まっていくんだ」という思いが込められているように感じます。僕自身、この曲を演奏して優勝したことをきっかけに人生が変わったので、ラフマニノフと通じるものがあると感じています。「この曲で新しいスタートに立ったんだ」など、この曲を演奏すると色々なことを思い出します。とても大切にしている曲なので、みなさんに作品の魅力を音で表現することができたらと思っています。
辻井伸行(c)Yuji Hori
――ツアーは中国・四国地方~九州地方、全7カ所を巡ります。楽しみにされていることはありますか。
各地を訪れるときに楽しみにしていることは、その土地のものを食べることやお酒を飲むことです。山口はふぐ、佐賀は佐賀牛でしょうか。九州はおいしいものがたくさんあるので、食べることばかりになってしまいますが、温泉もいいですね。今年の夏に三浦さんと音楽祭でご一緒した宮崎でまた演奏できることも楽しみです。鹿児島はソロでも訪れたことがあり、フェリーに乗って桜島にも行きました。桜島には鹿児島市出身の長渕剛さんのモニュメント(コンサートを行った跡地に設置)がありました。焼酎もおいしかったなぁ。大分も大好きな街です。四国は4月にも行きましたが、松山のホールが印象に残っています。3千人ほどが入る大きい会場なのですが、その数のお客さんの前で弾くことはなかなかないことなので、拍手が上から降ってくるように感じたことを覚えています。また演奏ができることを楽しみです。うどんもとてもおいしかったです。
――最後に読者にメッセージをお願いいたします。
今回の『究極の協奏曲コンサート』では僕はラフマニノフ、三浦さんはチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏します。二人それぞれの協奏曲をぜひ楽しんでもらえたらと思います。
取材・文=Ayano Nishimura

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