70’sロックの
方向性のひとつを提示した
ジム・クウェスキン・
ジャグ・バンドの
『ガーデン・オブ・ジョイ』

ジム・クウェスキン
&ザ・ジャグ・バンド結成

ボストン大学に通っていたジム・クウェスキンはラグタイム・ギターを習得し、後輩でブルースを研究していたジェフ・マルダーと出会う。当時はフォークリバイバル真っ只中で、ブルーグラス音楽と並んでジャグ・バンド音楽が流行しつつあった。クウェスキンとマルダーは自分たちの得意な資質を生かすことのできるジャグ・バンド音楽のグループを組もうと、チャールズ・リバー・バレー・ボーイズに在籍していた同じ大学のボブ・シギンス(バンジョー)に声を掛ける。シギンスは同じくチャールズ・リバー・バレー・ボーイズやキース&ルーニーで活躍していたフリッツ・リッチモンド(ウォッシュタブベース&ジャグ)を誘い入れる。そしてカズーとマウスハープのブルーノ・ウルフを加えた5人組でグループはスタート、1stアルバム『アンブラッシング・ブラシネス』でデビューする。

2ndアルバム『ジャグ・バンド・ミュージック』(’65)ではボブ・シギンスが脱退、代わりに元ビル・モンロー&ザ・ブルーグラス・ボーイズ〜キース&ルーニーの革命的なバンジョー奏者であるビル・キースとイーブン・ダズン・ジャグ・バンドにいたマリア・ダマート(のちのマリア・マルダー)が加入し、グループの強化が図られている。また、グループ解散後にクウェスキンのパートナーとなるメル・ライマンがマウスハープで参加。3rdアルバム『シー・リバース・サイド・フォー・タイトル』(’66)ではブルーノ・ウルフが脱退し、再び5人組となる。

本作
『ガーデン・オブ・ジョイ』について

本作ではビル・キースと同じくビル・モンローのバックを務めたフィドラーのリチャード・グリーンが加入、その圧倒的なテクニックとドライブで他のメンバーを煽りまくっている。

以前の3作と比べ、本作はボーカルにしても演奏にしてもまとまりのある端正さが特徴だ。それは初めてプロデューサー(ジョン・コート)を迎えたことや、大手のリプリーズレコードに移籍したことも関係してか、まさにプロフェッショナルな演奏になっているのだ。荒削りの手作り感がジャグ・バンド音楽の良さであることは間違いないが、これだけの完成度の高い音楽だからこそ彼らに追随しようとするグループが増えたのも事実なのである。ビル・キースがブルーグラス・スタイルのプレイをしていても違和感を感じさせないのも、このグループが模倣ではなくすでに自分たちのジャグ・バンド・サウンドを完成させたからだと言える。

選曲はガス・キャノン等のジャグ・バンド関連をはじめ、デューク・エリントンの有名な「ムード・インディゴ」のほか、「マイ・オールド・マン」「アイム・コンフェッシン」「シェイク・オブ・アラビー」「ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」など古いジャズナンバーが多く、グリーンの加入がこれらの選曲を可能にさせたのかもしれない。アルバムジャケットはサイケデリックロック時代ならではの60’s的デザインだが、中身は時代を感じさせないグッドタイム・ミュージックが詰まっている。

OKMusic編集部

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