L→R 田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)、黒川侑司(Vo&Gu)、古閑翔平(Gu&Programming)

L→R 田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)、黒川侑司(Vo&Gu)、古閑翔平(Gu&Programming)

【ユアネス インタビュー】
各々のポテンシャルを
再確認させられた一枚

僕らの楽曲は
聴く人に委ねるスタイルで、
感じたことはひとつの正解

今回のアルバムの中で何回聴いても構成が分からなかったのが「Alles Liebe」でした。

古閑
ちょっと前から転調にハマっていて、ギターとかピアノのコードワークをアレンジで面白くしようと話していた時に、“じゃあ、後半は倍のテンポでとっていいじゃん”と思って。あとは、メロディーの戻し方にうまく遊び心を混ぜつつ、同じメロディーだけど同じメロディーに聴こえないようにしたいなと。僕は単調な曲も好きなんですけど、演奏していてちょっと飽きちゃうことがあるので、常に意識を張っていないと演奏できない曲にしようと思ってました。

この曲は核心には何が?

古閑
タイトルが『ES』(2019年11月発表のEP)と『BE ALL LIE』(2020年11月発表のEP)のアナグラムということもあったので、変わったことをしたかったんです。あと、バラードだけどバラードじゃない、ちょっとアップテンポな部分も混ぜながらやるっていうのも、やったことがなかったから挑戦してみようかなと。ワンコーラスだけだったら普通のバラードなんですけど、後半からアップテンポになり、さらに戻り…みたいな感じで、ちょっと抑揚をつけたくて。作曲の練習というか、そういうのも含めて遊ばせてもらいました(笑)。

演奏面はどうなんですか?

田中
曲の支配力で言ったらベースは重要なので、「Alles Liebe」に関してはリズムを掴む手がかりがたくさんあったほうがいいし、大きな道路を自分が敷くつもりで演奏しています。少々他がぶれたところで“ベースがこうなっているから、たぶん転調しているんだろう”とか、“これがリズムの真ん中だ”というのをところどころ音で知らせながら弾いている感じです。

確かに。田中さんのベースが磁石や目印の星みたいな役割ですね。

田中
だから、僕がミスると破綻してしまうので、かなり緊張感はあります。“聴いていて飽きない緊張し続ける曲”みたいなところは、最初に古閑が狙っていた通りですね。

そして、坂本真綾さんに曲提供し、演奏もした「躍動」のユアネスバージョンは、そのバンドじゃない人が書く言葉によってこんなに曲の印象が変わるのか!?と思いました。

田中
組織が変わった感じがしますね。
黒川
いつもは古閑が書いた歌詞を歌っているので違和感じゃないですけど、この曲は遠回しじゃないっていうのかな? “読んだらだいたい分かる”というのがすごく新鮮でした。他のユアネスの歌詞が分からないのではなくて、「躍動」はパッと自分に照らし合わせることもできるし、一種の歌いやすさがありましたね。ただ、坂本真綾さんの書かれた歌詞で、坂本さんの楽曲っていうのもあるので、そういった面のプレッシャーもやはりすごく大きかったです。

次の「Layer」はサビあとの小野さんのビートが面白いです。

小野
普通は叩かないようなビートがたくさん出てきます。古閑が打ち込んできたものをそのまんま叩いて、ブラッシュアップできるところは少し変えながら組み立てていきました。と言っても、ほぼ最初に打ち込みでもらった状態のものがほとんどですね。機械チックに叩きたかったから、そこを頑張りました。

バグが起こったような感じを生ドラムで聴くと迫力も出ますね。

小野
打ち込みでもらったドラムを再現するだけじゃ意味がないので、叩いた上でどう聴かせていくのかは難しかったです。

どんどんユアネスはポストジャンル化しているというか、形容しがたくなってきていて、かつアレンジが複雑になるほど、黒川さんの歌がいかに強いかが分かるんですよね。

黒川
ほー…ありがとうございます。やった!

オケを意識しすぎないようにして歌っていますか?

黒川
そうですね。キーの確認も含めてなんですけど、まずは“僕だったらこうやって歌うよ”というのを仮でメンバーに送っています。でも、細かい表現は作曲者に任せる感じで。自由に自分のポテンシャルを信じて歌っていますね。

普通、こんなに歌えると嫌味に聴こえると思うんです。“どうだ、うまいいだろう?”って聴こえる際まで攻めているんだけど、嫌味に聴こえない。

黒川
あははは。でも“うまいだろう?”と思うのも大切だから、そう思うようにしてるんですけど(笑)。曲の展開があると聴き応えが全然違うと思うので、「Layer」は歌じゃないところに意識がいくし、前半と後半でガラッと変わって楽器もテクニカルなことをしているから、そういう意味でうまい具合にバランスがとれている曲だと思います。

一曲の中に微妙な押し引きがありますよね。

田中
そこらへんは古閑にディレクションされる時、かなり神経を使っているかもしれないです。“ここは歌がこういうリズムだから”とか、最初にイメージを聞いた上で自由に埋めていくんですけど、そのあとに“ここはもっとこんな感じで”と修正される箇所は自分では気づいていなかったところなので。自分が見ていた遥か上の解像度のパズルを古閑が組もうとしているから、そこに今回もびっくりしつつ(笑)。

メンバーが毎回驚くという(笑)。ところでこれまでのEPやミニアルバムには冒頭に語りが入っていて、ラストに収録されている「私の最後の日」は“あの語りの声の子なのか?”と考えてしまうのですが、それは古閑さんからはあえて言わない?

古閑
僕らの楽曲は聴く人に委ねたいので、“ここがこうです”というよりは感じていただいたものが正解なんです。だから、そう感じていただけたのであれば、それはひとつの正解なのかなと。

了解しました。フルアルバムとしては本当に余すところなく作られたと思いますが、完成してみてどうですか?

古閑
ゲストの方やプレーヤーの方をお招きして作ることもできたので、プレーヤーとしても、作家としても、いい経験をさせてもらったというのがありつつ、今までの僕らを詰めながら、これからの僕らの名刺代わりになるような作品…“ディス・イズ・ユアネス”みたいなものを考えながら作るのも楽しかったです。僕個人としてもいろんな曲を書きたいので、ひとつに絞っていくのではなく、書きたい時に書きたい曲を書くという表現で制作させてもらえるのがありがたいですね。あとは、みんなうまくなってるなと(笑)。

取材:石角友香

アルバム『6 case』2021年12月1日発売 HIP LAND MUSIC
    • YRNS-1001
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『ONE-MAN LIVE TOUR 2022 "6 case"』
1/15(土) 福岡・BEAT STATION
1/16(日) 広島・SECOND CRUTCH
1/22(土) 宮城・MACANA
1/23(日) 新潟・CLUB RIVERST
1/29(土) 北海道・cube garden
2/11(金) 大阪・umeda TRAD
2/12(土) 愛知・Electric Lady Land
3/13(日) 東京・LINE CUBE SHIBUYA

ユアネス プロフィール

ユアネス:福岡で結成された4人組ロックバンド。琴線に触れるヴォーカルと美しいメロディーを軸に変拍子を織り交ぜるオルタナティブなバンドサウンドを構築。詞世界を含めひとつの物語を織りなすような楽曲が特徴的。重厚な音の中でもしっかり歌を聴かせることのできるライヴパフォーマンスは、エモーショナルで稀有な存在感を放っている。2024年2月に2ndミニアルバム『VII』を発表し、3月には東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にてワンマン公演を開催。ユアネス オフィシャルHP

「49/51 (feat.nemoi)」

「ヘリオトロープ」

OKMusic編集部

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