Little Parade

Little Parade

【Little Parade インタビュー】
底や端っこにはいたくなかったけど、
だからこそ見えた情緒があった

人間は記憶を積み重ねるために
生きていると思う

サウンドアレンジの多彩さも今作の大きな聴きどころですね。

実験的なことも挑戦させてもらいました。例えば「501 with oneself」は臼井ミトンくんにアレンジしてもらったんですけど、すごかったですね。渋みがあるというか。今までに経験してきたことのない音の中で歌わせてもらいました。

サウンドにはジャズ的な要素も入っていて。

はい。コード進行がそういう感じのものができたから、“こういうサウンドの本物の人にお願いしよう!”って考えたんです。でも、歌っているのは自分なのでそっちに寄っていないっていうのが、いいミクスチャーになったと思います。いろんなアレンジャーの方にお願いするのは楽しいですね。

アレンジは長谷川大介さんも大活躍していますね。

彼はずっと一緒にやってきたっていうのもありますし、僕のやりたいことのニュアンスをすぐに分かってくれる人なんです。彼のアレンジを卒業しなければいけないという強迫観念を持たないようにしています。まったく新しいことをしようとするのは不自然すぎるし、彼が出してくれる音は、やっぱり僕の中の一部なので。

「風の斬り方」のアレンジも素晴らしいです。

こういうゴリッとしたものも作りたいんですよ。僕の中にAqua Timezがまだあるというのを、自分自身もこの曲から感じました。

「風の斬り方」は不安や閉塞感が漂う世の中で、音楽を作って鳴らすことへの強い気持ちを歌っていますよね?

やっぱりこういう社会状況なので、タイムリーなことは出てきますね。サブスクやYouTubeとかによって聴き方は変化しているけど、音楽自体がなくなることは絶対にないと思います。作り続ける意志さえ失わなければ音楽はなくならない。僕は続けていくことを選んだので、必ず成長していかなければいけないと思っています。

“キアリク”や“ケアルガ”とか、RPG用語が出てくるのも太志さんらしいなと。

『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』の世代なので。“発売日におばあちゃんに並んでもらってドラクエ買ったなぁ”って、今思い出しました(笑)。でも、人生ってRPGに例えられる感じがあるんですよね。スライムを最初に倒して経験値を積まなきゃいけないし、最初から大ボスと戦っても何もできないので。

人生経験を積む中で仲間が増えていくのもRPGみたいな感じなのかも。

ほんとそうですよね。『ドラクエ』シリーズも最初はひとりだったけど、『II』では3人になりましたし。仲間の大切さ、ありがたみというのはバンドが解散した身としては、人一倍感じているのかもしれないです。

誰かにかけてもらった言葉が復活の呪文みたいな感じになることもありますからね。

まさに。あの頃には理解できなかったけど、ゲームにはそういうことも入っていたんですよね。そんな思い出の共有とかも大切にしたいです。全然違う場所で育ってもゲームの思い出とかを共有して、“そうだったよね”とか語り合うのも同じ時代に生きている人同士でできる楽しいことですから。

太志さんが作る曲もいろんなリスナーにとっての復活の呪文的なものになっていると思いますよ。

そうだったら嬉しいです。『ドラクエ』も『ファイナルファンタジー』も旅だし、人間は記憶を積み重ねるために生きていると思うので。今という時代は“記憶”よりも“記録”が全てになってきていて、便利になっていることの恩恵も受けているけど、人間ならではの部分とは“感情”というものを伴った“記憶”で、そういう感覚とすごくリンクしているのが音楽だと思っているから、そういうものを伝えたいです。言葉がどうしても出てこなかった体験、成長の躓きとかも音楽にしていきたいんですよね。

Little Paradeの曲を聴くと“この感覚、なんかわかるなぁ”という瞬間がたくさんあるのも、そういう想いの中で生まれている音楽だからかもしれないですね。

みんなの心当たりのあるところに触れたいと思っているので、そのためにはこっちも曝け出さないといけないんです。“どういう片思いの体験がその人の宝物になっているんだろう?”とか、知ることができないのは素敵なことだと思います。なぜならそれは人の数だけ存在するから。

「置き去りの鉛筆」はそういうものをすごく感じます。《渡り鳥の影が一瞬で 走り去ってった床》とか、太志さんと僕とでは思い浮かべている風景は異なるはずですけど、“この感じ、なんかすごく分かる”という感覚になるんですよ。

きっと人それぞれにそういうものがあって、それは誰かのものと完全に重なり合うことはないと思うんですが、重なり合わないからこそいいんでしょうね。“風景が浮かぶ歌詞を昔よりも書けるようになってきたのかもしれない”って、自分自身の成長を感じていたりもしています。

「置き去りの鉛筆」は記憶の奥底にあるものにやさしく触れてくれるというか、不思議な懐かしさを覚える曲でした。

メロディーやコードに関しても、だいぶ変った曲を作ったっていう感覚がありました。自分らしい、いい変化球を投げることができたのかもしれないですね。

OKMusic編集部

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