【Angelo インタビュー】
最後のアルバムを
最高のものにしようという
意識で向き合った
ポップで入り込みやすい曲に
裏がある歌詞を乗せるのが好き
話を『CIRCLE』に戻しますが、陰りを帯びた世界の中で唯一明るさを放つ「PURELAND」は、このアルバムのいいフックになっていますね。
自分の好みのひとつとして、すごくポップで入り込みやすい曲に裏がある歌詞を乗せるのが好きなんです。「PURELAND」は明るい曲だし、“PURELAND”というタイトルも“純粋な楽園”というイメージだけど、英語圏では“極楽浄土”を表す言葉なんですよ。つまり、この曲もアルバムのテーマの“生と死”に沿った曲で、むしろ“死”のほうに寄っている。ただ、ネガティブなことを歌っているわけじゃない。死んでしまって極楽浄土に行ったとしてもそれは悲しいことではなくて、極楽浄土はそれまで持っていた全ての苦しみから魂が解放される場所なんだということを歌っています。仏教的な思想で言うと極楽浄土に行くことは終末ではなくて、そこから輪廻転生があって、また違う命になるわけだし。つまり、“死=新たな誕生”なんですよ。今生でのいろんな喜びや苦しみを通して魂がいろいろなものを得て、そこで一度記憶を消して、また新しい生に向かうという。ただ、輪廻転生をモチーフにしたけど、僕自身は輪廻転生を信じているわけではないです。いろんな宗教や神話を持ってくるけど、そういう中で僕自身が明確に信じていることは少なくて、死んだらどうなるのかということに関しても僕の中には確信的なものはないんです。生まれ変わるのか、魂は永遠なのか。“もしかしたらそうなんじゃないかな?”と思う部分もあるけど、同時に人間は死んだらただの肉の塊で、魂もそこで消えると思っている部分もある。そこはひとつに突き詰めていかないといけないものではないと思っているんですよね。曖昧なままというほうが、むしろ理性があると思うから。
宗教に対してフラットでいながら、宗教的な生き方をされていることが分かります。それに、パワフルなロックチューンやキャッチーなナンバーの裏側に、キリトさんの深い思想や思いが息づいているのは大きな魅力と言えますね。
PIERROTの頃からそういう言われ方はしています。ただ、音楽を聴く人にはあまり強制したくない。聴く人はそこまで深く考えずに、それぞれの楽しみ方をしてくれればいいんです。冒頭に話したように、美しい朝焼けの景色を見た人が単純に“きれいだな”と感じるようなとらえ方をしてもらえればいい。宗教的にどうだとか、物理的にどうだとか、神の意志がどうだというようなことを土台に、いろいろ意味づけをしたら重みは出てくるかもしれないけど、朝焼けが美しいということには変わりはないから。そこの解釈の仕方は重くても、軽くても構わない。きれいと感じるならそれでいいじゃないかと。僕はそういう意識で音楽を作っています。
キリトさんが作る音楽は哲学的だったり、深遠さがありながらも押しつけがましくなくて、そこも多くのリスナーから支持を得ている要因のひとつになっていることを感じます。さて、『CIRCLE』はAngeloの締め括りに相応しい、充実した作品になりました。アルバムを完成させて、今はどんなことを感じていますか?
バンドはひとつの終わりを迎えるけれども、絶対に何か次のストーリーは始まるはずで、少なくとも僕自身はAngeloが終わっても音楽を辞める気はない。バンドとはまたちょっと離れたところで自分が紡いできたストーリーというのは、PIERROTが終わっても、Angeloが終わっても続くんですよ。『CIRCLE』は僕が生きている限り、僕のストーリーは続いていくという意思表示みたいなアルバムでもあるのかなと思いますね。もちろん僕以外のメンバーも新しいことを始めていった時に、新たな“CIRCLE=波紋”を生んでいくだろうし。だから、“悲しむな”というのは無理かもしれないけど、“そうそう悲しいことではないよ”と伝えたい想いがあって、『CIRCLE』はそれを感じ取ってもらえるアルバムにはなったと思います。そうなったのはメンバー全員が、そこに向かっていったからこそですよね。誰ひとり投げやりになるようなことはなくて、Angeloの最後のアルバムを最高のものにしようと向き合った結果、とても納得のいく作品が作れたと思っています。
『CIRCLE』を聴くと、メンバーのみなさんの前向きな気持ちが伝わってきます。では、『CIRCLE』を携えて11月から来年の1月にかけて行なうラストツアーは、どんなものにしたいと思っていますか?
『CIRCLE』というアルバムが持っているAngeloにとっての役割をライヴに変換して、それをきっちりとパフォーマンスで表現する場にしたいですね。音源というのはライヴで“こういうことを言いたかったんだ”とか“こういう感情を表現したかったんだ”といったことがより明確に伝わるように互換することで完成すると思っているんです。だから、そういうライヴをしたいし、同時に15年間やってきたAngeloというバンドの集大成を観せる意味合いもあるので、すごく重要なツアーになりますよね。ツアーに来てくれた人は、ライヴを観ながらいろんな感情が湧いてくると思うんですよ。それこそ泣いてしまう人もいるかもしれない。だけど、最後はみんなが笑顔で帰れるようなライヴになるといいなと思っています。
取材:村上孝之
「SIGHT」MV
「CIRCLE」全曲ダイジェスト
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