情感豊かなギタープレイが味わえる
アルバート・キングの
『アイル・プレイ・ザ・
ブルース・フォー・ユー』

ブッカー・T&ザ・MG’sから
バーケイズへ

アルバート・キングが南部のソウルレーベル、スタックスと契約するのは1966年、当初はブッカー・T&ザ・MG’sをバックにしていた。クリームが「悪い星のもとに生まれて」を取り上げることで一気に名前が知られるようになるアルバートの出世アルバム『悪い星のもとに生まれて(原題:Born Under A Bad Sign)』(’67)は、シングル作を集めたコンピレーションアルバムである。この頃すでにアルバート・キングのサウンドはサザンソウル風味のあるブルースとして完成されていたと言えるだろう。

ところが、MG’sは71年に活動停止してしまう。その前後、スタックスは第2のMG’sとしてアイザック・ヘイズが育てたバーケイズをスタックスのハウスバンドとして起用している。バーケイズはオーティス・レディングのツアーバンドを務めていたが、不幸なことに67年に不慮の飛行機事故でオーティスとメンバー6人中4人を失い、残ったふたりが立て直しを図るという過去があった。ヘイズの尽力もあって、バーケイズは後継メンバーと新たなスタートを切っていた。

本作『アイル・プレイ・ザ・
ブルース・フォー・ユー』について

そのバーケイズやメンフィスホーンズらをバックに迎えて72年にリリースされたのが本作『アイル・プレイ・ザ・ブルース・フォー・ユー』で、マイナーブルースのタイトルトラックは7分以上にわたり(シングルリリース時はパート1とパート2に分割されていたため、正式タイトルは「アイル・プレイ・ザ・ブルース・フォー・ユー(パート1&2)」となっている)、アルバートの哀愁あるギタープレイと枯れたヴォーカルが見事にはまり、彼の筆頭代表曲になった。この曲は全米ブルースチャートで1位を獲得し、のちの2017年にこの曲はブルースの殿堂入りも果たしている。

アルバム収録曲は全部で8曲、アン・ピーブルズでお馴染みの「ブレイキング・アップ・サムバディズ・ホーム」も7分以上の熱演で、バーケイズのファンキーでタイトなリズムセクションをはじめ、アルバートのギターもエモーショナルなプレイを聴かせている。マービン・ゲイで知られる「アイル・ビー・ドッゴーン」は完全にファンクスタイルで演奏されており、この曲でのメンフィスホーンズのプレイはアヴェレージ・ホワイト・バンドのようなキレの良さだ。

70年代に入ってスタックスのサウンドは徐々にソフトになっていくのだが、本作でのバーケイズとメンフィスホーンズのサポートはMG’sのようなタイトさがあり、そこに情感たっぷりのアルバート・キングのギターワークが加わることで素晴らしい相乗効果が生まれている。

なお、現在のCDはボーナストラックが4曲入っており、タイトルトラックの別テイク(9分近い)や、オリジナルよりロック的なアレンジの「ドント・バーン・ダウン・ザ・ブリッジ」の別テイクなどが収録されており、4曲とも充実度は文句なし!

このアルバムを気に入ったら、ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」のカバーを収録した前作『ラブジョイ』(’70)や、よりファンクの要素が濃くなった次作『アイ・ワナ・ゲット・ファンキー』(’74)も良いので、ぜひ聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

アルバム『I’ll Play the Blues for You』1972年発表作品
    • <収録曲>
    • 1. I'll Play The Blues For You (Pts 1 & 2)
    • 2. Little Brother (Make A Way)
    • 3. Breaking Up Somebody's Home
    • 4. High Cost Of Loving
    • 5. I'll Be Doggone
    • 6. Answer To The Laundromat Blues
    • 7. Don't Burn Down The Bridge ('Cause You Might Wanna Come Back Across)
    • 8. Angel Of Mercy
    • 9. I'll Play The Blues For You (Alternate Version)
    • 10. Don't Burn Down The Bridge ('Cause You Might Wanna Come Back Across) (Alternate Version)
    • 11. I Need A Love
    • 12. Albert's Stomp
『I’ll Play the Blues for You』(’72)/Albert King

OKMusic編集部

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