三浦一馬(バンドネオン)×角野隼斗
(ピアノ)初共演&初対談! トップ
プレイヤーが一堂に会する『ピアソラ
・フェス』を語る

アストル・ピアソラの生誕100周年を祝して、バンドネオンの三浦一馬が『ピアソラ・フェス“リベルタンゴ”』を開催する。ゲスト出演するピアノの角野隼斗とは初共演となる。二人で話をするのもこの対談が初めてだという。
――お二人が会うのは?
三浦:一度廊下で会ったくらいで、ちゃんとお会いするのは初めてなんです。ピアニストの角野隼斗さん、YouTuberのCateenさん、と幅広く取り組まれていて、あれだけ人を楽しませるエンタテイナーとして、爽やかでフレッシュなアーティストだというイメージです。
角野:うれしいです。僕からすると、三浦さんはバンドネオンの第一人者であり、アグレッシブにいろいろなことをされている方だなという印象を持っています。
三浦一馬
――今回のフェスについてお話ししていただけますか?
三浦:偉大なアストラ・ピアソラの生誕100周年という、なかなか立ち会うことのできない節目に、みんなでお祝いをしましょうということで企画しました。音楽界のトップを走るビッグ・ネームたちが一堂に会するのは滅多にない機会です。当然、このメンバーの組み合わせはピアソラのオリジナル編成ではないので、皆さんの魅力が発揮できるように私が編曲します。そして新たなピアソラ、ピアソライズムを感じながらお祝いする。今年じゃなければできないコンサートです。音楽の殿堂サントリーホールでの演奏も楽しみです。
角野:ほんとうに、錚々たる方々ですよね。僕自身は、ピアソラをコンサートでちゃんと演奏するのは今回が初めてです。その“初めて”を、このようなメモリアルで、大きなコンサートで迎えられる。純粋に楽しみですし、うれしいです。
――角野さんはピアソラにどんなイメージを持っていますか?
角野:もともとタンゴで、いろいろなジャンルの音楽を取り入れて、新しいものをやるというイメージ。それは僕のやりたいことに近いです。ピアソラのそういう部分に対して畏敬の念を持っています。
――角野さんは今回のコンサートでは何を弾いてくださいますか?
角野:「リベルタンゴ」ともう1曲、弾く予定です。
三浦:できれば、みんなで「リベルタンゴ」が演奏したいと思っています。私の編曲次第ですが。
角野:「リベルタンゴ」は、ピアニストの間では、ジャズでいうスタンダード・ナンバー的な曲になっていて、僕もYouTubeで弾きました。
三浦:「リベルタンゴ」にはピアソラがいろいろな音楽のエッセンスを取り入れていています。「リベルタ(自由)」と「タンゴ」を合わせた造語ですが、この言葉にはピアソラが音楽家として生きた姿勢が象徴されていて、ピアソラ自身の決意表明が込められていると思います。
角野隼斗
――共演者には、チェロの宮田大さん、ギターの大萩康司さん、サクソフォンの上野耕平さん、ピアノの山中惇史さんら、それぞれの楽器のトップ・ランナーが参加されますね。
三浦:特に交流の深い方々、心から尊敬する方々ばかりです。宮田さんや大萩さんとは共演歴も長く、上野さんと山中さんとはトリオを演奏しました。上野さんは僕の室内オーケストラにソリストして出ていただいたこともあります。この方たちは、とことん音を突き詰めて、僕の理想のサウンドを一番実現してくださいます。つまり共通の言語をともにしている人たちです。いわゆる“本家本元の”ピアソラとは違いますが、それは自分が求めた部分でもあります。
みなさん、現代において音楽に突き進んでいる方たち。今日を生きているわけですから、50年、100年前とは違うものであるべきなんですね。みなさんいろんなアンテナを広げて、自分なりの音楽されているところが、共通しているといえるでしょう。
角野:僕自身にとっては、全員が初共演なので、単純にご一緒できるのが楽しみです。それから、三浦さんの編曲も。
僕も、ほかの楽器の曲をピアノ編曲することがあるのですが、ピアノの場合、音響的にオリジナルの音に近づけるようにアレンジするだけでは、あまり映えないこともあって。オリジナルの良さを活かすアプローチと、例えば、パーカッシブな音が出る、コードをたくさん抑えられるといったピアノという楽器が持つ特性を活かすアプローチ、この2つの兼ね合いを考えています。きっと三浦さんも、様々なことを考えながら(編曲を)されていると思うので、どのようなアレンジになるのか、楽しみですね。
角野隼斗
三浦:ピアソラにはバンドネオン以外にもいろいろな楽器編成の曲があり、チェロの曲、ギターのソロ曲、サクソフォンのための曲もあります。このメンバーの楽器編成でのピアソラはなかなかないですが、自分のなかには完成したサウンドのイメージがあります。編曲には、オリジナルを尊重するものと、作り変えてしまうものがありますが、僕は原曲をたどってそれぞれの人をフィーチャーするように編曲したいと思います。ただ全員が出てきて弾くだけでなく、みんなが輝くような編曲に挑戦したいです。
――角野さんにとってのピアソラの音楽の魅力は?
角野:そんなにピアソラに詳しいわけではないのであまり言えることもないのですが、いろいろなジャンルの音楽のエッセンスを感じ取れるのがすごくいいですね。
三浦:あまりピアソラに詳しくないとおっしゃるのですけど、実はそれはあまり重要じゃないと思います。ピアソラは厳密にはタンゴに分類されますが、むしろ、僕は違うジャンルの方から刺激を受けることが多いです。「ピアソラをあまり知らないんだけど」という方から新鮮なアプローチに気づかされたり、ハッとさせられたりします。今回、そのようなことも楽しみにしています。
――ピアソラの音楽の楽しみ方を教えていただけますか?
三浦:生誕100周年ということで、いろいろなところでピアソラに関するコンサートがあるでしょう。すごくマニアックに、こういうピアソラでないと、という話をする人もいますが、僕は、乱暴な言い方かもしれませんが、まずはどれでもいいから聴いてみてほしいと思います。ピアソラの入り口がどれでもいいと思っています。角野さんのような新しいスタイルのピアソラでもいいですし、フィギュア・スケートの音楽から入ってもいい。いろんな入口があるので、いいなと思ったら、本家本元のところに行けばいいし、僕のところに来てもらってもいい。
三浦一馬
――最後にメッセージをいただけますか?
三浦:これだけのメンバーが一堂に会するというのは滅多にありません。しかも、オール・ピアソラ・プログラム。ここでしか聴けないコンサートに是非いらしてください。
角野:このコンサートでは、ちょっと別のフィールドから、どういう風に自分の持っているもの、新しいピアソラをつけ加えるのか考えていきたいです。僕が、クラシックだけでなく、いろいろなフィールドにいることで、僕をきっかけにピアソラに出会う人がいるかもというのが、もう一つの僕のいる意義だと思っています。その上で自分の表現したいピアソラをここで演奏できたらいいなと思います。
三浦:心強いです。
左から 角野隼斗、三浦一馬
取材・文=山田治生 撮影=池上夢貢

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