森重樹一(ZIGGY)

森重樹一(ZIGGY)

ステージに上がっても
ハイになれない時期があった

それから1984年、森重さんが21歳の時にZIGGYを結成されて、1987年にはアルバム『ZIGGY 〜IN WITH THE TIMES〜』でメジャーデビューを果たしますが、今思うとメジャーデビューはご自身にとってどういうものでしたか?

デビューすることで自分がロックだと思っていたものの幻想を壊されてしまったら嫌だなという恐怖心がありました。今は“このままやってもロックになる”っていう自分の中での仕組みが理解できているつもりだけど、当時は僕の中の“ロックじゃないもの”が今ほど明確じゃなかったから、“ちゃんとロックができるのかな?”って。でも、CDの発売日にちょうどリハーサルがあって、松尾宗仁くんとふたりで駅前の飲み屋で祝杯をあげた覚えがありますね。やっぱりすごく嬉しかったと思いますよ。不安はあったけど、デビューっていうひとつのかたちをもらえるのは。

メジャーシーンで活動していく中で、その“ロックじゃないもの”を目の当たりにすることもあったと思うんですけど、ご自身に変化があった出来事はありますか?

うん。デビューして何年かは、今の俺みたいにステージで元気にエキサイトしてやれていたんだけど、メンバーが脱退して戸城憲夫くんとふたりになった時、当時の社長に“以前のお前みたいにガーッとやってほしい”って言われたことがあって。でも、どうしていいか分からなかったんですよ。ステージに上がってもハイにならないんですよね。オーディエンスからのエネルギーも自分にインプットすることができない時期が何年かあって、それは音楽シーンに対するどうこうじゃなく、自分自身が模索してたんだと思う。でも、そこからドラムにジョー(宮脇“JOE”知史)が入ってくれたり、松尾くんが戻ってきて、ソニーに移籍して、不思議と自分の中にエキサイトする何かが戻ってきた。…何なんだろうな、あれは? 93年はテレビにも出ていたし、ZIGGYを一般の人が目にする機会も多かったはずなのに、僕は達成感が得られていなかったんですよね。ぬるま湯だったのかもしれない。必要なものが何なのか、どんなに模索しても答えが見つからなかった」

最初はテレビで観たアーティストに憧れを持っていたけど、自分がその立場になった時に、求めていたものが違ったんでしょうか?

アマチュアの時とは生活も変わっていたし、時代もあると思うんだ。ちょうどNirvanaの登場があって、それは今までのMTVで作られたアメリカのロックシーンが全部崩壊するくらい衝撃的で、いわゆるエンターテインメントとしてショーアップすることが、すごくカッコ悪いことになったんだよね。それまでのアリーナロックが完全に駆逐された。僕はエンターテインメントとしてショーアップされたものに触発されて音楽を始めたから、“自分の好きなものや、自分が触発されたものが、こんなにも時代に不必要になってしまうんだ!?”って実感したのかもしれない。だけど、Nirvanaはすごくカッコ良かったから、自分をヒリヒリさせるものにもなってたんだよ。むしろ、自分もあの隠逸なショーアップされていない剝き出しの感じに惹かれていってしまったし。だから、駆逐された側のロックに憧れてきた自分が、それを駆逐したヒーローにも憧れているっていう矛盾があった。でも、その経験は自分の中ですごく大きいんだよね。

OKMusic編集部

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