宮野真守

宮野真守

【宮野真守 インタビュー】
“こんな自由が待ってるなんて”と
歌える日が必ず来る

自身が出演する映画主題歌であり、歌詞は坂本真綾が手がけた話題作「透明」。ピアノとストリングスの壮大な調べの中で歌われる長い旅の結末は、混迷の現代に生きる我々の状況にもシンクロし、大きな感動を与えてくれる。昨年12月に開催された初のスタジオライヴ『MAMORU MIYANO STUDIO LIVE ~STREAMING!~』もパッケージ化されて、エンターテインメントに対する彼の追求は止まらない。

救いや希望という光のある方向性で、
作品を締め括る“赦し”を歌いたかった

今回の新曲「透明」は『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-後編 Paladin; Agateram』の主題歌で、作詞は坂本真綾さんが担当されていますよね。どういった経緯で坂本さんが歌詞を書かれることになったんでしょうか?

今回タイアップをいただいた『Fate/Grand Order』というシリーズは今までたくさんアニメ化されていて、その主題歌の多くを坂本真綾さんが手がけられてきたんですね。今回は僕が声優として演じるベディヴィエールというキャラクターがメインになるお話が映画化されることになり、ありがたいことに作品側から後編の主題歌のお話をいただいたんです。

おお。それは滅多にないことじゃありません?

はい。なので、驚きましたし、すごく光栄なことだなと。どういった曲にするかという方向性はお任せしていただけることになったんですが、同時に真綾さんに作詞をしていただく選択肢もあるというお話も聞いたんです。僕自身、真綾さんには10代の頃からお世話になっていて、初めて主役を務めた作品のエンディングを歌われていましたし、音楽の面でも大きな影響を受けた方なんですよ。そんな真綾さんに作詞をしていただけることは僕の人生の中でもとても特別でありがたいことだと思い、お願いさせていただくことにしました。それで、まずはどういった楽曲の構成にしようかと考えて、改めて映画のシナリオを読んだり、物語の世界観やベディヴィエールの本質…苦しみや孤独感を深く追求して、言葉にしていったんですね。そういったことを歌に乗せていけたらいいなと、真綾さんに伝えようとしたタイミングで、この映画の前編の主題歌であり、真綾さんが担当された「独白」を聴いたんです。そしたら僕の考えていたことは、ほぼ「独白」で表現されていて、それがものすごくカッコ良くて。前編の主題歌ということで物語への想いを掻き立てるようなエモーショナルな空気感があり、スローからアップテンポへ切り替わるなどの複雑な心情を描くような組曲的構成もあって、何よりも“独白”というタイトルの通り、問題提起で終わる曲だったんです。だから、それを聴いた時に、“じゃあ、後編の主題歌はその先にある曲になればいいな”と。問題提起の先にある解決という意味で言うと、“救い”だとか“希望”だとかっていう光のある方向性で、この作品を締め括る“赦し”を歌えたらいいなと思ったんです。で、曲調はスローテンポで祝福の光が差し込むような雰囲気のものにしたいと作曲のJin Nakamuraさんにもお伝えしたら、タイトルに“祝福の光”という意味の英語がついたデモを作ってくださって。そこからイメージできたものもたくさんありました。

つまり、タイトルの“透明”とは罪が赦されて浄化された…みたいなイメージなんでしょうか?

そうですね。詳しく話すとネタバレになりますが、まさに“透明になる”っていう言い方がぴったりなストーリーなんですよ。

個人的には《一瞬の永遠》という歌詞が印象的でした。そういった瞬間ってあるよなと。

その一瞬のために生きてるんですよね、この物語のキャラクターは。そういったことを加味しつつ、真綾さんが本当にたくさんいろんなことを考えてくださって。歌詞が出来上がった際にも、“宮野くんが宮野くんとして歌った時に、ファンのみんなに届くような歌でもありたい”と強く言ってくださったんです。要は映画のストーリーと同時に、このコロナ禍で制作されるものという楽曲の立場を考え、“この先どうなるか本当に分からないけれど、諦めずに進んでいく”っていう決意と、歌詞の最後にあるように《こんな自由が待ってるなんて》と歌える日が必ず来るんだという希望を、この歌に込めてくださったんです。だから、この歌詞を初めて見て真っ先に思い浮かんだのが、自分がコンサート会場で歌っている姿でした。実際に映画の苦しい世界観と、現状の苦しさが重なるところが非常に多くて…。僕らは今、足掻きながらエンターテインメントをやっていて、そこで限られたものを届けられるものもあるとはいえ、やっぱりステージに立って満員の客席の前で歌い、大歓声を浴びて喜びを分かち合う瞬間は久しく見てないと思います。だから、それが叶ったら、まさに《こんな自由が待ってるなんて》っていう気持ちで歌えるでしょうし、今はその瞬間への想いがどんどん募っているんですよね。

なるほど! では、最後に出てくる《なりたかった私になる》というのは、宮野さんにとって観客の前で歌えるようになることですか?

…っていう想いも込められていますね。ただ、もちろんコロナ禍のことを歌った曲ではないし、未来の状態を未だに想像できない状況にあるから、“今の気持ちを真っ直ぐに表現している曲”と言ったほうが近いかな? なので、歌う上では感動に揺さぶられるのではなく、宮野真守として、アーティストとして、しっかり使命をまっとうできるように落ち着いて歌ってます。真綾さんからも“すごく良かったよ”って言葉もいただけました。

弦楽四重奏とピアノをバックに劇場で歌っているMVも、ステージで歌う瞬間をイメージしてのことだったんでしょうか?

最初に作品から導き出されたイメージは“砂漠に行きたい”ってことだったんですよ(笑)ただ、自分のスケジュールや今の状況を考えると、遠方までロケに行くのは現実的ではないので、僕がこの曲で伝えたい決意みたいなものを映像化できたらいいなという考えに転換したんです。映像監督とも打ち合わせをした結果、観客席からの目線ではなく、あえてステージ側からの目線で撮って、僕らが観客席に向かって歌っている見え方になったら新しいんじゃないかなというアイディアが出たんです。舞台側に立つ僕たちの想いを表現した今までにない作りになったと思っています。

ジャケット写真は幻想的なビジュアルになっていますが、こだわりのポイントはありますか?

このジャケット写真なのですが、これって合成じゃないんですよ! カメラマンさんがいろいろ撮り方を考えてくれて、光の屈折で透けて見えるようにしてくれたんです。実際にどう映るかは計算しきれない部分もあるので、言ってみれば奇跡の一枚ですね。
宮野真守
宮野真守
シングル「透明」
Blu-ray & DVD『MAMORU MIYANO STUDIO LIVE ~STREAMING!~』

OKMusic編集部

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