J・ガイルズ・バンドの
リードボーカリストとして知られる
ピーター・ウルフの
渾身のソロアルバム
『ミッドナイト・スーベニア』
本作
『ミッドナイト・スーベニア』について
収録曲は全部で14曲。捨て曲は1曲もなく、初めから終わりまでいぶし銀のような味わい深い曲が並んでいる。楽曲はジェニングス=ウルフの他、アラン・トゥーサン作が1曲、エアロ・スミスのソングライターとして知られるテイラー・ローズとウルフの共作やチャック・プロフェットとの共作なども収録されている。
サウンド面は、70年代のストーンズやチャック・プロフェット的なテイストも感じられる泥臭いアメリカーナになっていて、特にギターとハモンドB3のプレイは全編にわたって素晴らしい仕上がりを見せている。
バックを務めるのは、前作に引き続き名手ラリー・キャンベル(ギター、ペダルスティール、フィドル)をはじめ、デューク・レヴィン(ソロアルバムを数枚リリースしている敏腕ギタリスト。本作ではマンドラとバンジョーも弾いている)、多くのセッションに参加しているポール・ブライアン(Ba)、ショーン・ペルトン(Dr)、そしてケニー・ホワイトはキーボードの他、ギターやパーカッションも披露している。バックヴォーカルにはジェームス・Dトレイン・ウィリアムス(大物!)を筆頭に、ソウル、ブルース界で活躍する黒人シンガーが数人参加しており、コーラスはかなりの厚みがある。
ゲストヴォーカリストにはシェルビー・リン、ニーコ・ケイス、マール・ハガード(ベイカーズフィールド・カントリーの大物で、ウルフのアイドルのひとり)といったアメリカーナやカントリーのシンガーが参加し、ウルフとデュエットしているのも聴きもの。
なお、本作は全米トップロックアルバム・チャート(ビルボード)で12位まで上昇した。
これだけ出来の良いアルバムが日本盤でリリースされていないのが不思議でならないが、今はスマホやパソコンで簡単に入手できるので興味のある人はぜひ聴いてみてください。
TEXT:河崎直人