Blu-BiLLioNが解散、「今日ここで歌
えていて、マジで幸せです」 ラスト
ライブ公式レポート

Blu-BiLLioNのラストライブとなる4月17日(土) TSUTAYA O-EAST公演のオフィシャルレポートが到着した。

2010年に始動し、以降独自の道を歩んできたBlu-BiLLioN。暗いバンドや激しいバンドが多いヴィジュアル系シーンにあって、スタイリッシュかつ柔らかみのある音楽性や爽やかなバンドイメージなどを打ち出した彼らは異端視されることも多かった。だが、そんな状況に左右されることなく彼らは自分達のスタイルを貫き、大胆に音楽性の幅を広げ、ダンサーを交えた独自のライブのあり方を提示するなど、強い存在感を発していく。その結果Blu-BiLLioNはヴィジュアル系フリークにとどまらず、幅広い層のリスナーから支持されるバンドになった。
Blu-BiLLioNは独自の魅力を持ったバンドだけに、マイペースで長く活動していくだろうと思っていたが、Seikaがジストニアを患い、思うようにドラムが叩けないという苦境に陥ってしまう。彼は闘病しつつバンド活動を続けていたが、症状が悪化したことを受けて2018年に最後の手だてとして手術を受けることを決意。手術は成功したが、Seikaの症状が改善することはなく、彼はBlu-BiLLioNを脱退したいという意向をメンバーに伝えた。その後、全員で話し合いを重ねた結果、2020年に彼らは解散することを決めた。
コロナ禍の影響で1年先送りになったBlu-BiLLioNの解散ライブは春先のラストツアーを経て、2021年4月17日にTSUTAYA O-EASTで行なわれることが決定。当日の会場には入場制限の限界となる多数のオーディエンスが集まり、さらにリアルタイム配信で多くのファンが見守る中でのライブとなった。
オープニングSEが流れ、オーディエンス全員が手にしたペンライトの光で場内が青く染まる中、メンバー達がステージに姿を表した。客席から熱い拍手が湧き起こり、Blu-BiLLioNのラスト・ライブはエモーショナルな「reason」で幕を開け、パワフル&キャッチーな「Believer’ s High」「GARDEN」へと続く流れで始まった。淡いブルーカラーで統一した衣装に身を包んだメンバー6人が並び立った華やかなステージと心を駆り立てるサウンドに客席の熱気は一気に高まり、ライブは上々の滑り出しとなった。
「Blu-BiLLioNラストライブ【蒼】へようこそ。今日は声が出せないし、スペースも限られているけど、今までで一番のライブをするから最後まで着いてきてください!」というミケのMCを挟んだ後、セカンドブロックでは「S.O.S.」や「Miss Mermaid」「この手に在るもの」といったダンサブルなナンバーが続けて演奏された。全身を使って内面の感情を表しつつ情熱的な歌声を聴かせるミケ。引き締まった表情で、テクニックと歌心を絶妙にブレンドしたギターソロを奏でる宗弥。クールな立ち居振る舞いとシュアなギターワークのマッチングが印象的なmag。透明感を湛えたピアノの音色で楽曲を彩りつつホットなラップも聴かせるteru。激しいステージングを展開しながらグルーヴィな重低音を響かせる珀。手数の多い凝ったドラミングを渾身の力で叩ききるSeika。貫禄を漂わせてパフォームするメンバー達を見ていると、学生服のような衣装に身を包み、少年っぽさを放っていたデビュー当時のBlu-BiLLioNが10年を経て、大人の色気を感じさせるバンドになったなと思わずにいられなかった。
ダンスミュージックの応酬で場内をフィジカルに盛り上がりを見せた後、珀と宗弥が解散を迎えた心境を語ってくれた。
「最後ですね、今日は。淋しくなる、本当に。今日までみんなが応援してきてくれた分だけ淋しくなる気持ちが沢山あるけど、でもそのお陰で、この先の俺は絶対に強く生きていけると思う。Blu-BiLLioNとcolours(ファンの名称)が一緒に過ごした時間を忘れないでいてください。僕も絶対に忘れません。このすごく楽しいメンバーと一緒にやってこれたという事実と、みんなが応援してくれたという事実は本当に力になりました。ありがとうございます」(珀)
「最後ですけど、どう捉えるかだなということを個人的には思っています。“悲しい、淋しいお別れ”と捉えるのか、“新たな旅立ち”というように捉えるかで変わってくるなと。僕らはポジティブなメッセージを伝えてきたバンドだと思っているので、今日は“旅立ち”のほうでいきたいと思います。この個性豊かなメンバー5人とBlu-BiLLioNをやってすごく思ったけど、人と関わるってすごく素敵なことですね。人を信じたり、夢をぶつけてみたり、預かってみたりとか、そういうことってすごく大事だということを実感できました。そう思わせてくれたのはメンバー6人を温かく受け止めてくれた、みんなのお陰です。ありがとう」(宗弥)
ライブ中盤では翳りを帯びながら疾走する「Resonance-共鳴-」やアダルト&ジャジーな「キミコレクション」、どこか異国情緒を感じさせる「群青」などを披露。こういったナンバーを聴くとBlu-BiLLioNの音楽性の幅広さをあらためて感じるし、すべての楽曲の完成度が高いのもさすがといえる。異なる要素を巧みにハイブリッドさせて独自のエモーションを生み出す彼らの手腕は実に見事で、曲を追うごとに深みを増していく世界観に強く惹き込まれた。
その後は、Seikaとteru、mag、そしてミケが挨拶。「ジストニアという病気になって、ドラムが思うように叩けなくて。振り返ると正直ツラいことのほうが多かったかなと思ったけど、ツアーを再開して、みんなが楽しんでくれていることがわかったんです、すごく。自分はバンドやっていて良かったなって思いました。ドラムやっていて良かったなと思いました。長いバンド人生を、本当にいい思い出で締め括ることができます。みんなのお陰です。本当に、ありがとう。この最高の仲間とcoloursがいてくれたから……本当に、10年間ありがとうございました」(Seika)
「10年間Blu-BiLLioNというバンドをやってきて、今こうやってこのステージに自分が立っているのは沢山のcoloursのみんなや関係者の人達と出会えたからです。Blu-BiLLioNというバンドと一緒に過ごしてきた時間というのはかけがえのないものだったし、それを誇りに思って、未来に向かってこれからも走り続けていきたいと思います。Blu-BiLLioNと一緒に過ごしてくれて、ありがとうございました」(teru)
「みんなにも夢というものがあると思いますけど、僕にも夢があって。音楽をやって飯を食いたいなとか、自分が憧れるアーティストみたいになりたいなと思って音楽を始めて。今日がその夢の終わりなんだなと思うと……すごく悲しいです。でも、後悔とかは全然ない。今日までやれて幸せだったし、自分が夢見たものに少しでも近づけたんじゃないかなと今日は自信を持って思います。今日来てくれたみんなと、この場にいなくても応援してくれたみんながいたからがんばれました。僕にとってみんなは自分の誇りであり、宝物です。本当に、ありがとうございました」(mag)
「こうやって俺らのためだけに集まってくれる人が沢山いる状況で歌えるということは何回も夢に見ていました。だから、今日ここで歌えていて、マジで幸せです。ありがとうございます。夢にくじけそうな人も、仕事にくじけそうな人もいると思うけど、そういうことも向き合える力さえあれば乗り越えられると思う。俺らの曲だったり、ライブだったりが、そういう力の元になれればいいなと思います。自分は自分のために歌うし、ここまでがんばってきた。だから、よかったらみんな俺の姿を見て、メンバーの姿を見て、また明日からがんばろうと思って人生と向きあってください。よろしくお願いします!」(ミケ)
Seikaを皮切りに思わず涙ぐみながら話す彼らの姿に、客席からは温かみに溢れた拍手が湧き起こった。みんな、本当はメンバーに声をかけたいだろうなと思う。だが、声を出すことができなくても、ファンのBlu-BiLLioNに対する深い愛情をしっかりと感じることができる瞬間だった。
ライブ後半では「ハートフラクタル」や「H&H」「To Blue」といったメロディアスかつ爽快感に溢れたナンバーが相次いで届けられた。笑顔を浮かべながらフィジカルなパフォーマンスを展開するメンバー達と華やかな盛り上がりを見せるオーディエンス。TSUTAYA O-EASTの場内が楽園を思わせる空間へと化す中、Blu-BiLLioNはラストソングとして「HOME」をプレイ。心に強く響くミケの歌声と躍動感に溢れたサウンドで場内を完全にひとつにした後、「多分もうこの言葉を叫ぶことはないから忘れないように聞いてくれ! Seika! 珀! teru! 宗弥! mag! 俺達がBlu-BiLLioNだ!」というミケの言葉でライブを締め括り、メンバー達はステージから去っていった。
Blu-BiLLioNという唯一無二の存在が終焉を迎えることになったのは本当に残念だ。10年に及ぶ活動を通して“自分らしくあることの尊さ”を示し続けた彼らには大きな拍手を贈りたい。今後もBlu-BiLLioNのようなバンドは表れるかもしれないが、Blu-BiLLioNと同じ方法論で彼らのクオリティーを超えることは至難の業といえるだろう。それを強く感じさせる、素晴らしいライブだった。
もうひとつ、今回のBlu-BiLLioNのラストライブはDVD化されることが決定となった。最後のステージでメンバーが見せた表情や、ここには書ききれなかった言葉の数々は必見といえる。ライブの内容が非常に良かったことも含めて、ぜひ多くのリスナーにチェックしてほしいと思う。
文=村上孝之
撮影=青木早霞(PROGRESS-M)

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着