大坂4大オーケストラがお届けする、
4者4様「古典をめぐる旅」

2015年に大阪国際フェスティバルの一環として始まった「大阪4大オーケストラの響演」は、大阪の4つのプロのオーケストラが、音楽の殿堂フェスティバルホールに一堂に会し、それぞれのシェフと共に得意とする曲を演奏するという前代未聞のコンサート。
象徴的な大階段を上ってホールに向かうことをお勧めしたい。気分が上がる事間違いなし。     (c)飯島隆
「こんなの東京では絶対無理!」「発想自体がぶっ飛んでる!」「形を変えたコンクールのようなものだけど、大丈夫?」など、当時、日本中のクラシックファンの話題となったが、「大阪4大オーケストラ」のコンサートは、その後も益々進化を見せ、昨年のベートーヴェンイヤーでは、ベートーヴェンの交響曲が4曲並ぶという、規格外のコンサートになった(コロナの影響で延期となり2021年3月実施)。
今年は「4オケの4大シンフォニー2021」と題して、ついに4つのオーケストラが、特に制約など無く、自由に交響曲を4曲取り上げる事となった。
そして発表されたのが、以下のプログラム。各オーケストラと当日の指揮者は考え抜いて、自分たちの魅力が聴衆に伝わる勝負曲を選んで本番のステージに臨む。

トップバッターは、日本センチュリー交響楽団。
日本センチュリー交響楽団 (c)Masaharu Eguchi
指揮台に立つ久石譲は、日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に4月に就任。取り上げる曲は、久石が愛してやまないベートーヴェンの交響曲第8番。「ロックのようなベートーヴェン」を標榜して、フューチャー・オーケストラ・クラシックスとベートーヴェン交響曲全集をリリースしているが、そこに収録されている交響曲第8番が快速テンポで突き進む、眼から鱗のような新鮮なベートーヴェン!そのアイデアこそ、機動力に優れた日本センチュリーとの組み合わせならば、一層の期待が持てそうだ。
久石譲からのメッセージをご覧頂こう。

日本センチュリー交響楽団 首席客演指揮者 久石譲  (c)Omar Cruz
4月1日に日本センチュリー交響楽団首席客演指揮者に就任してから最初の演奏会となります。昨年は僕自身も海外を含めたほとんどのコンサートが延期になりましたが、またこうして公演が出来ることをお客様と一緒に喜びたいと思います。ベートーヴェンの交響曲の中でも一番気に入っている8番。春に相応しい溌剌とした楽曲をUp-to-dateなベートーヴェンとして、センチュリーとともにお届けします。秘策も考えています。お楽しみにしていただければと思います。
続いて登場するのは、音楽監督・尾高忠明率いる大阪フィルハーモニー交響楽団
大阪フィルハーモニー交響楽団     (c)飯島隆
選んだ曲は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番、大曲だ。尾高体制も4年目を迎え、奏でるサウンドは、アンサンブルが洗練されて、随分とスタイリッシュになったという声も聞こえるが、16型のフル編成で挑むショスタコーヴィチの交響曲第5番は、朝比奈隆、大植英次、井上道義と代々のシェフも得意としてきた曲だけに、尾高がどのように聴かせてくれるのか楽しみは尽きない。
尾高忠明のメッセージをご覧いただきたい。
大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督 尾高忠明 (c)Martin Richardson
昨年4月の演奏会は延期になり、その後3ヶ月、オーケストラの音が消えました。今年は皆様の前で音楽を奏でる喜びを胸に演奏いたします。ショスタコーヴィチは前作4番で酷評され、作曲家生命も絶たれそうな状況にありました。そのどん底の中で書いたこの第5番の成功で見事な復帰を果たしました。コロナ禍の中にいる私たちも、ショスタコーヴィチの成功にあやかり、さらなる前進、素晴らしい世界を目指したいと願っています。

3番目に登場するのが、客演指揮者・オーラ・ルードナーに代わって指揮台に立つことになった、初代ミュージックアドバイザー・首席指揮者の大山平一郎率いる大阪交響楽団。
大阪交響楽団   (c)飯島隆
曲は当初のままで変更はないが、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」と言えば、昨年の11月定期演奏会で大山自身が提案し、指揮をしたばかりの、最も得意とする曲。これも巡り合わせなのだろう。定期演奏会での演奏が素晴らしかっただけに、大山としては、他のオーケストラのファンもあっと驚くような演奏で、当日の主役の座を狙っているのではないか。実に楽しみである。
大山平一郎のメッセージをご覧頂こう。
客演指揮者 大山平一郎  (c)Tsuru
命の危険に直面して、既に一年以上の時が経つ。コロナウイルスの恐怖を乗り超える鍵となるワクチン接種の予定も、日本ではまだ定まっていない。その様な苦しい毎日が続く中、半年ほど前から万全の感染対策をとった上で、舞台芸術の上演が、縮小された規模とは言え、少しずつ再開された。舞台上の奏者や俳優達は、来場されるお客さまに少しで心の癒しを感じていただければと云う想いで、渾身の演奏・演技に励んだ。再開された催し物には、想像以上のお客様が集まって下さった。そればかりか、文化的な日常を奪われたお客さまの強烈な反応には、舞台の上の自分たちこそ勇気をいただくことになった。平穏無事な日常生活の中では、人々が想う文化に対する価値観は測りにくい。しかしながら、これだけの精神的圧迫を感じながらの生活状態において、多くの人は生活の基本が確保された次は、文化と芸術が必要なのだと痛感している。この度の演奏会の内容は、異例中の異例。関西のクラシック音楽界の才能が大結集する豪華な演奏会。そして、私が尊敬する3人の大先輩指揮者も登場される、身に余る舞台に上がらせていただくことになる。御来場いただく聴衆の皆様の期待にも、しっかりと応えたい。
そしてトリを飾るのは、桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎率いる関西フィルハーモニー管弦楽団。
関西フィルハーモニー管弦楽団 (c)s.yamamoto

曲はシベリウスの交響曲第2番。関西フィルでシベリウスと言えば、首席指揮者・藤岡幸夫の印象が強いが、飯守泰次郎もシベリウス交響曲第2番は得意とするレパートリーなのだ。ここ最近の定期演奏会では、継続中のシリーズ企画を披露する機会が多いことから、ブルックナーやワーグナー、広く宗教曲全般のイメージが強い飯守と関西フィル。飯守のシベリウスは、藤岡のアプローチとは随分違うと予想出来るだけに、非常に楽しみだ。昨年、少々体調を崩したようだが、今年1月の第58回大阪国際フェスティバル2020「ワーグナー特別演奏会」での素晴らしい演奏が忘れられない。
「4者4様!古典を巡る旅」のラストを飾るに相応しい演奏を期待したい。
飯守泰次郎のメッセージは以下。
関西フィルハーモニー管弦楽団 桂冠名誉指揮者 飯守泰次郎  (c)金子 力
独墺系の音楽をライフワークとしてきた私ですが、実は民族に深く根差している国民楽派の音楽も大好きで相性が良く、関西フィルとも機会がある毎に積み重ねてきた大きな柱の一つです。その、愛着のあるシベリウスの中から、交響曲第2番を選びました。シベリウスの熱狂的エネルギーは、大阪らしい華やかで大胆な今回の「4オケコンサート」に相応しく、関西フィルと共に素晴らしい音楽をお届けしたいと思います。
この大変興味深いコンサート、これまでなら当たり前に完売となるはずだが、チケットは今からでも購入可能というからラッキーではないか。まあ、コロナのこの時期だから仕方がないが、完璧に感染予防対策を施しているフェスティバルホールで、黙って音楽を聴く行為に、リスクがあるとは考えにくい。それならば、気分転換にコンサートに出掛けてみることをお勧めしたい。オーケストラの奏でる名曲の数々は、必ずや聴く者にパワーを与えてくれるはず。当日券でも大丈夫。ぜひこの機会にご覧いただければとおススメしたい。
取材・文=磯島浩彰

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