ナノ

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【ナノ インタビュー】
制作期間中は
毎日ワクワクしていたし、
本当に濃厚な8カ月を過ごせた

海外からの支持も厚いバイリンガルシンガー・ナノが初のセルフプロデュースによるアルバム『ANTHESIS』をリリースした。先行配信曲「AUTOBIOGRAPHY」のMVではスカート姿で微笑む等、従来のパブリックイメージを覆す作品を満載にした本作は、まさに“新・ナノ”と呼ぶべきもの。“ANTHESIS”というタイトル通り、色鮮やかな“開花”を高らかに告げている。

自分にとっての歌手活動、
音楽って何だろう?

今回の『ANTHESIS』は、とにかく“自分”をテーマにされたそうですね。

だいぶ前からアルバムを作ろうという話は出ていたんですけど、コロナ禍で方向性が一気に変わったんですよ。昨年1年間、自分と向き合う時間がものすごく増えたこともあり、9年前のデビューから昨年1年間ですごく変化した自分、そして未来まで、ナノの過去・現在・未来を濃縮した作品にできたらいいなって。

自分と向き合う時間が増えて、一番考えたことって何でした?

やっぱり“自分にとっての歌手活動、音楽って何だろう?”ってことですね。ここまでの8年や9年の間に“何が売れるのか?”とか“何がカッコ良いのか?”っていう、いわゆる数字を気にしたこともあったんですけど、コロナ禍を経験してみて一番の目的は、まず自分が楽しむこと。そして、その上で聴く人が楽しむことだって確認できたんです。それが音楽の醍醐味だと痛感できたから、その想いだけでアルバムを作ってみようと。他人が何を聴きたいかとか数字がどうこうではなく、全てにおいて“自分がドキドキワクワクできるか?”を判断基準に置いたんです。

結果、初めてのセルフプロデュースになったと。

はい。なので、従来だと作家さんに曲をお願いする場合、デモの段階で歌詞以外の部分はほぼ全部制作してもらうところ、今回は頭の3曲に関しては、中西航介さんと一緒に何もない白紙の状態から作り始めました。メロディーと歌詞はナノ、トラックとアレンジは中西さんという分担で、一曲に対して2カ月くらいかけてじっくり作っていったんですけど、やっぱり自分でメロディーを作ると自分の好きな歌い回しや音のハメ方を活かせるから、歌っていても気持ち良いんですよ! 今までは誰かに作ってもらう曲で、普段自分がやらないことに挑戦してきたから、今回は逆の挑戦ができた気がします。

中でもリード曲の「LINE OF FIRE」は和と洋を融合させたエキゾチックなロックチューンで、その曲調自体も新しいのでは?

まさに“新・ナノ”ですね。今まで“勢いだったり激しさがナノの売り”みたいなところがあったんですけど、そこだけじゃないよと。例えるなら、空を飛んでいるようなスピード感ではなく、地を這うような重さを表現したかったので、まずは洋楽のズシンとくるロックをベースに、メロディーや音作りで和を表現してみました。和も洋も自分のルーツであり、今の自分を形成してくれた大切な要素だから、そのふたつをうまく響かせることで、聴いていて自分の心もエモくなるような曲を作りたかったんですよ。加えて目指していたのが、ひと言では語れないような不思議な曲っていうところ。だから、ちょっとでも聴き流してしまう箇所があると“もっと不思議にしよう”って中西さんとも話したり、とにかく聴く人をアッと言わせたかったので、“不思議さ”っていうのはひとつのキーワードでした。

だから、ストリングスが若干不協和音的なハーモニーを奏でていたりするんですね。

そこは自分の我儘ですね。本当にストリングスが大好きなので、一度レコーディングを見てみたかったんですよ! リード曲ということで贅沢三昧したかったから、生のストリングスはマストで入れたかったし、あとはリズム隊がめちゃくちゃ重要な曲なので、ドラムも生で録っていただいて。実際、レコーディングに立ち会ってみたらすごく良くて、本当にトライして正解でした。

ちなみに、MVはどんな感じに?

山中湖近くの大自然の中で、夜中12時過ぎまで雨に打たれながら撮ってきたんですけど、これも最高にワクワクするMVになってます。自分が育ったのもアメリカのド田舎だったので、現場に到着した時に思わず“ただいま”って言っちゃったくらい。そこでも懐かしさだったり、自分のルーツという“過去”を感じられたんですよね。でも、“LINE OF FIRE”というタイトルには“自分の進むべき道”っていう、未来の意味合いも込められているんですよ。もともと自分は火の属性の人間だと思っていて、常にアツく燃えているから、この『ANTHESIS』も今後の自分にとっての燃料だったり原動力になってほしいという気持ちがあったんです。で、この“LINE OF FIRE”という言い回しには撃った弾の道筋…“弾道”っていう意味もあって、つまりは自分で撃った銃弾のように勢い良く前に進んでいきたいっていうことですね。

そう聞くと非常に攻撃的で怖いもの知らずな印象を受けますが、歌詞を見るとリード曲に限らず、アルバムを通して一種のギリギリ感がありますよね。何かに追い込まれた窮地で“いかに状況を打開するか? 自分の足で新たな道を見つけるか?”と葛藤しているような切迫感を感じるんです。

なんかね、昨年1年コロナ禍を経て思ったのが、人生って決してキラキラしてるものではなく、いい意味で苦しいことが8割。そんな中でみんな必死に生きていて、すごく生々しいものなんだなってことなんです。自分もデビューして以降、いろんな人に支えてもらって、わりと順風満帆にCDを出したり、ライヴをやったりしてきましたけど、これから先の音楽活動は別に煌びやかであってほしいわけじゃない。本当の音楽は全然キラキラしたものじゃないからこそ、人を助けたり救う力があるって感じられたので、このアルバムでもリアルさや泥臭い人間っぽさを重視したかったんです。今までアニメタイアップだったり、結構ファンタジーな世界観の歌詞を書いてきて、それはそれで楽しいんですけど、今回はタイアップ曲もなく、もう本当にリアルな三次元の要素しかないですからね。そこで、よりナノの人間性というか、強さを感じてもらえたらいいなと。
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ミニアルバム『ANTHESIS』

OKMusic編集部

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