【reGretGirl ライヴレポート】
『reGretGirl spring tour 2021
"curtain call"』
2021年3月26日
at 渋谷TSUTAYA O-EAST
冒頭、ニューアルバムの曲順通りに「ルート26」からスタート。ギターロックであることに変わりはないが、一瞬にしてアンサンブルがグッとタフになったことに驚いた。それはドライブ感は続く「インスタント」でも明らか。1曲目で男性、2曲目で女性双方からの本音を隠しつつ、確かな関係になりたいと願う歌が対照的に披露されるのが彼ららしい。フロントの平部も十九川宗裕(Ba)も序盤からステージ前方へ歩み出て、ペース配分を無視したようなフルスイング。前田将司(Dr)の安定したドラミングが頼もしく映った。
新曲をコンスタントに披露していく中でもアンサンブルの新鮮さを感じたのが「AJAX」。2番のバースでのミクスチャー感のあるアレンジの重心の低さや、平部の古今のロック名言や歌詞を想起させるトーキングヴォーカルのパートも耳を引かれる。大袈裟なほどの愛の濃さを歌いながら、遊び心のある新曲群の中で、馴染みのインディーズ時代の曲が挟まれると、その痛々しいほどの青さが際立つことも発見で、別れてしまった事実を受け入れがたい主人公が、彼女同じようにピアスを開ける痛みで、かろうじてつながっている気持ちを保とうとする、その名も“ピアス”は今もヒリヒリする感覚をもたらし、ファンにとっても大切な曲であることがリアクションのアツさに見た想いだ。
中盤以降は鍵盤とギターのサポートメンバーが加わり、その意味が際立つ16ビートの小気味いい「グッドバイ」をプレイ。十九川がスラップを披露するなど、明らかに今までにないアレンジも。いわゆるオシャレな曲調で歌われるのが、幸せじゃないわけではないのに終わりの気配を感じる女性の一人称の歌詞で、固有名詞に生活感が漂うのが平部らしい。徐にステージ中央にエレピが運ばれ、アルバムのあの曲を披露するのだなという気配が漂う中、“コロナで引きこもっていたおかげでピアノが弾けるようになりました”と平部。彼の弾き語りから始まる「約束」。この曲ではThe Beatlesのオーセンティックな曲を想起させるドラムやピアノアレンジが聴けたのだが、どことなくUKロックの雰囲気を感知。そこで歌われるのは特定の時代や情景を伴ったものではなく、名残惜しさはありながらも、別れる他ない状態の少し大人の恋の終わり。自己憐憫に耽る恋から何歩も進んでいることで、切なさの質が変化していることに気づく。切なさの変化がアレンジを呼んでいるとも言えるだろう。
90年代UKロックばりのグルーブ、平たく言えばOasisを想起させるメロディーラインやコード感を持つ「Longdays」では間奏もしっかりアンサンブルの厚みを堪能させ、5人編成のダイナミズムが内側からどんどん増していく凄みすら見せた。新作のタイトルチューンも堂々たるミディアムチューン。まだまだこのサポートメンバーを加えた可能性の伸び代を予感させて本編17曲が終了。
さらにアンコールでの3曲を含め、全身全霊の20曲を完遂。人を好きになることで自分の内面が掻き乱されたり、転じて強くなることを正直すぎるほど正直な言葉で刻んでいく平部の姿勢はここにきて、より腹が据わってきた印象。とかくベタになりがちな恋愛というテーマを濁さず伝えていく今のreGretGirlを確認できた2時間だった。
撮影:白石達也 /取材:石角友香
関連ニュース