ACIDMANとBiSHが一期一会の夢を描く
ーー新たな2マンイベント『Dream Aw
ay,One Day』が始動

Dream Away,One Day』2021.3.6(SAT)なんばHatch
3月6日、『Dream Away,One Day』と銘打たれた新たな2マンイベントがスタートした。コンサートプロモーター・夢番地が「今、その存在感やライブパフォーマンスを必然として我々に魅せてほしい2組にオファー。この夢のような一期一会、是非体感してもらいたい」と企画されたもので、記念すべき第一回目のステージにはACIDMANBiSHが出演。いずれもライブパフォーマンスには定評があり、確固とした存在感のあるアーティストだ。フェスやイベントなどで同日出演したことはあっても、この日はロックバンドと楽器を持たないパンクバンドの対バン。しかも、今は新型コロナウイルスの感染予防対策として、ライブハウスでの鑑賞は席数を少なくしての観覧のみと、演奏する側も観る側も大きな制限がある。そんな状況下のなかでのライブはすでに「一期一会」すぎて、どんな化学反応が起こるのか想像ができないまま、開演の時間を迎えた。
モモコグミカンパニー
トップバッターはBiSH。SEのない無音状態のなか、メンバーがステージに登場すると、「MONSTERS」からトップギアで突っ込んでいく。「熱い夜にしよう!」と観客に声をかけると、さっそく会場はヘドバンの嵐に。いつもなら清掃員(BiSHファンの名称)も共に声をあげて吠えるが、今はまだそれは叶わないので手を高く掲げ、ヘドバンやジャンピングで彼女らの声に応える。この日のステージはバンドセットなしの6人だけのステージ。
シンプルな広いステージをいかに大きく見せるかが気になるところだが、そんな心配もよそにアイナ・ジ・エンドのシャウトが大きく響き、セントチヒロ・チッチとのコンビネーションも雄々しく、疾走感あるサウンドが観客の心を一気に引っ張り上げていく。
続いて披露されたのは「遂に死」。中指をおっ立てながら、歪みまくりのノイジーなサウンドにカオスなリリックを矢継ぎ早にぶっ込んでいく様はめちゃくちゃにカッコイイ! 手をこまねきながら幽霊みたくフラフラとした振付も毒っ気たっぷりで、無我夢中で魅入ってしまう。続く「Help!!」も個々の個性が際立ちまくりだし、リンリンのシャウトも狂気じみているし、たった3曲で早くも彼女たちは観客の心をしっかりと奪っている。
セントチヒロ・チッチ
MCではセントチヒロ・チッチが「BiSHらしく、ACIDMANと飽和できるライブになれば。全力でライブを届けていきます」と、意気込みを語る。ステージ中盤は「VOMiT SONG」「My distinction」と、リンリンが作詞を担当した楽曲が続く。心の奥に抱えたモヤっとした思い、誰にも言えない言葉を綴った楽曲が胸を締め付ける。
アユニ・Dの柔らかいけど主張の強い歌声、ハシヤスメ・アツコの凛々しい歌声、モモコグミカンパニーの小さい体からは想像できない男前な歌声……、バンドなら最後の一音まで鳴らすところを6人は最後の音が鳴り終わるまで歌声とパフォーマンスで思いを届けていく。ステージはその後も「SMACK baby SMACK」「NON TiE-UP」とBiSHの楽器を持たないパンクバンドたる姿を写した名曲が続く。壮大なサウンドに掛け合わせる緩急組み合わせたパフォーマンス、6人の姿はより大きく見えて、観客を次々に圧倒していく。
ハシヤスメ・アツコ
ステージ終盤、セントチヒロ・チッチは「ここでライブができたことに意味がある」と、改めて2マンイベントへの思いを語る。そして、この日のセットリストはリンリンがセレクトしたと語りつつ、「(ACIDMANは)人と宇宙の繋がりを歌っている。何かで繋げられたら……。人と星を繋いで、約束の先へ歩んでいく曲を大切に届けられたら」と、「プロミスザスター」へと繋げていく。アイナ・ジ・エンドのハスキーな歌声はもちろん、セントチヒロ・チッチの儚さを含んだ歌声も、全力で歌い上げる6人の姿には美しさすら感じられる。そして「また当たり前に笑い合える日が来ますように」と、多幸感たっぷりの「beautifulさ」へ。BiSHの賛歌ともいえるこの楽曲、メンバー6人の晴れやかな笑顔につられ、清掃員みんなが満面の笑顔で飛び跳ねる。ステージはあっという間にラスト曲「BiSH-星が瞬く夜に-」へ。心のモヤがぱっと晴れたような、底抜けに明るいサウンドで会場を盛り上げ全10曲のライブが終了した。
BiSH
BiSHが「激動」でオーディエンスの感情を揺さぶったところに、ACIDMANは同じ”動”でも”扇動”する音楽で観客の心を魅了していく。1曲目「造花が笑う」は彼らのメジャーデビュー曲。シンプルなロックサウンドに乗せて、ストイックにギターをかき鳴らす大木伸夫(Vo/Gt)。浦山一悟(Dr)のタイトなリズム、佐藤雅俊(Ba)のグルーヴ、3人が打ち出す音像が聴く者の心をひりつかせていく。数えきれないほど鳴らした音楽も、受け取る人間が違えばまた違った印象に変わる。
ACIDMAN
さっきまでBiSHのライブでサイリウムを振っていた清掃員も、彼らの打ち出す音楽に真剣に向き合い、徐々に体を揺らし始めていく。続く「to live」もこれまたバンド初期の楽曲だ。息もつかせぬリリック、ソリッドなビートに刻みまくりのカッティング、年月を経るほどにその切れ味は鋭くなっている。初っ端から大きな一撃を食らわせ、観客を圧倒させた……かと思えば、大木はいつもの緩いMCのなかで「BiSH大好きなんですよ……」と、溢れるBiSH愛を語りだす。
佐藤雅俊(Ba)
この日のイベントは感染症対策の都合上、客席のキャパは通常の半分程度に抑えられていたこともあり、チケットは即ソールドアウトに。大木は「チケットは争奪戦だったみたいでごめんなさい。清掃員の方になぜか大木が謝っていたと伝えてください」と、なぜか主催者の代わりに謝罪する場面も。
ACIDMAN
「今日は最高のイベントになる。すでになってる。BiSHはアイドルとかロックを越えて、エンタメ集団として素晴らしい存在。垣根を越えて共通するものがある」と、彼女たちのステージを絶賛。また、数年前に別イベントで共演が予定されていたが悪天候で中止になったとか。この日のライブでリベンジしたいと語り、「今日1日、最高のものにしましょう」と、ステージは「Rebirth」へと流れる。
浦山一悟(Dr)
嬉々としたスケールの大きなサウンドにご機嫌になったところへ、「FREE STAR」へ。名曲の連投に、観客は声の代わりに手を高く掲げて応える。ライブも中盤、十分に熱が高まったメンバーもご機嫌で、佐藤はいつものように体を大きく揺らしていく。感情をぐっと引っ張りあげる、上昇感の強いサウンドで唯一無二の世界観を作り上げていく3人。煌々と光るステージの照明も彼らの世界観をさらに屈強なものにしていく。エモーショナルだけど優しい、不思議な感覚が全身をまとっていく。
ACIDMAN
「やっぱりライブっていいですね。すごくいい!」、大木は改めてライブの楽しさを言葉にする。声は出せずとも、オーディエンスから受け取るエネルギーは何物にも代えがたく、言葉にできない素晴らしさがある。コロナ禍で失ったものも大きいが、少なからず得たものもある。かけがえのない人生、生命、1分1秒を大事に過ごす生き方をしてほしいと語り、ライブは後半戦へ。
大木伸夫(Vo)
「灰色の街」、まさに今の世を映したような楽曲は心を大いに震わせ、少しずつ色彩が生まれ、希望に満ちていくような音の風景に思わず目頭が熱くなる。そしてラストは「ある証明」に。イントロを聞いた瞬間に、観客が掲げる拳はより高くなる。いつもなら共に歌い、さらなる高みへと進むけれど、それが叶わない今はバンドが音で全てを背負い、超克するしかない。3人はひと際キレのある音を打ち鳴らし、声を上げ、盛大なラストスパートを駆け抜けた。
ACIDMAN
全力を出し切ったばかりの3人だが、ステージをはけることなくそのままアンコールへと流れる。満足にライブができない今、バンドとばかりステージに立っていることもあり、BiSHと共にステージに立てたら……と、再びBiSHを呼び込む。アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人が揃うと、大木は「イイ匂いがする!!」と、コメントしてで会場を沸かす。
『Dream Away, One Day』
そして「大好きな曲がある。BiSHとACIDMANで“BiSHDMAN(ビシュッドマン)”で演れたら。一生懸命覚えてきました」と、BiSHの「BiSH-星が瞬く夜に-」をセッション。この日のBiSHのステージとは違ったバンド編成、しかもACIDMANが演奏&大木がコーラスで参加するという贅沢なセッションに観客も大喜び。ACIDMANらしいソリッドなプレイに、BiSHメンバーもご機嫌なパフォーマンスで魅せていく。
『Dream Away, One Day』
最後は大木もやりたかったという、BiSHのお馴染みの挨拶をBiSHDMANなメンバー6人+3人全員でポーズ。大団円でイベントは終幕を迎えた。
『Dream Away, One Day』
新たに始まった2マンイベント「Dream Away,One Day」が提示したかった「夢のような「一期一会」」は間違いないものだった。次に魅せてくれるステージはどんな組み合わせか。次なる情報に期待したい。
取材・文=黒田奈保子 撮影=ハヤシマコ

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