ライヴアクトとして復活を遂げた
新生ローリング・ストーンズの
『ゲット・ヤー・ヤー
・ヤズ・アウト』
本作『ゲット・ヤー・ヤー
・ヤズ・アウト』について
当初、サポート・アクト(B・B・キング、アイク&ティナ・ターナーら)を含めた2枚組でのリリースがストーンズ側によって企画されたが、レコード会社側に拒否され、2009年にデラックス版(CD3枚+DVD1枚)がリリースされるまで、ずっとシングルアルバムのみであった。レコード会社の融通の利かなさに懲りたのか、次作の『スティッキー・フィンガーズ』からは彼らが設立したローリング・ストーンズ・レコードからリリースされることになる。
オリジナル盤の収録曲は10曲。サポートメンバーとしてイアン・スチュワート(Pf)が参加している。68年にリリースされ大ヒットした新曲「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」(今ではロッククラシックであるが)から始まる。モニターの調子が悪いのか、チャーリー・ワッツのドラムが数カ所でタイミングがずれるものの、それがむしろ荒削りな魅力になっているのはライヴの魔法である。3曲目の「ストレイ・キャット・ブルース」は泥臭い仕上がりで、70年代のスワンプ時代を予言するような仕上がりになっている。途中で登場するクラプトン風に決めるミック・テイラーのうねるようなギターソロが光っている。
ロバート・ジョンソンのスローブルース「ラブ・イン・ヴェイン」では、テイラーのスライドでの名演が聴けるが、アルバムのハイライトはなんと言ってもLP時代はB面にあたる「悪魔を憐れむ歌(原題:Sympathy For The Devil)」〜「リヴ・ウィズ・ミー」の流れだろう。ここでもミック・テイラーのギターワークが素晴らしく、それにつられてかキース・リチャーズのギターも渋いソロで応えている。
「ホンキー・トンク・ウィメン」はこのツアーの数カ月前にリリースされたばかりの大ヒット曲で、彼らの代表曲であるばかりかロック界を代表するナンバーといっても過言ではないだろう。テイラーは音数の少ない味わい深いソロを弾いている。アルバムの最後は、これまたストーンズを代表する「ストリート・ファイティング・マン」で、若さに満ちあふれた演奏はこの時期ならではのグルーブ感だ。
本作は半世紀以上も前にリリースされた作品であるが、まったく古くなってはおらず、本物のロックがここにある。いつ聴いても最高の鮮度が保たれているという稀有なサンプルである。まだ聴いたことがないという人は、これを機会にぜひ聴いてみてください。
TEXT:河崎直人
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