Kバレエカンパニーの栗山廉に聞く~
熊川哲也版『白鳥の湖』のロットバル
ト役を踊り、新たな挑戦へ!

熊川哲也 KバレエカンパニーSpring 2021『白鳥の湖』が2021年3月24日(水)~28日(日)Bunkamuraオーチャードホールにて上演される。芸術監督・熊川哲也が認める多士済々のダンサーたちが活躍するが、SPICEでは3月25日(木)14:00、27日(土)17:30の回でロットバルト役を踊る栗山廉(ファースト・ソリスト)に単独インタビューを実施。2021年新春から8回にわたって放映されたドラマ「カンパニー~逆転のスワン~」の出演も果たした気鋭に、ドラマ出演の印象を皮切りに『白鳥の湖』への抱負、今後の展望について語ってもらった。
■「バレエは自分にとっての武器・強み」
――2021年1月~3月に放映されたNHKBSプレミアムドラマ「カンパニー~逆転のスワン~」(原作:伊吹有喜、脚本:梅田みか、音楽:田渕夏海)において、熊川哲也・Kバレエカンパニーがバレエ監修を務めました。その際、ドラマ内に登場する敷島バレエ団の若手気鋭ダンサーである長谷山蒼太役に抜擢されました。出演が決まった経緯を教えてください。
以前から映像に興味があり、バレエが題材なのでチャンスだなと思いました。何かしらの形で参加したいという気持ちを会社に伝え、ドラマの制作チームにご挨拶する機会もあり、蒼太役に決まりました。
――ドラマはコミカルなタッチも織り交ぜて進みますが、バレエ団=カンパニーの内側をリアルに描いている面もありました。蒼太役を演じていて、実際にバレエ団で踊っている現役ダンサーであるご自身とリンクしたりした点はありましたか?
凄くありました。たとえば今まで主役をやっていた人、主役を期待され自分でもそう思っていた人のところへ思いもよらぬゲストがやって来て主役を踊る、といったことはプロのカンパニーではよくあることです。僕自身も毎回いい役をやりたいですし、悔しいという思いを抱いた経験もあるので、そういったところが凄くシンクロしました。ドラマのように、ゲストに対してあそこまで睨みをきかせることはありませんが(笑)。
栗山廉(撮影=桜井いづみ)
――2017年のミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』日本初演でオールダー・ビリー役として出演し、宮尾俊太郎さんが座長を務めるBalletGentsのメンバーとしても活躍するなど活動の幅を広げています。しかし映像での演技、台詞もある役は「カンパニー~逆転のスワン~」が初めてだそうですね。難しかったこと、発見があった点を教えてください。
台詞がないシーンでは感情を表情で伝えなければいけません。バレエの舞台と同じように表現するとやりすぎてしまいますし、やらないと伝わらない。そこが難しかったですね。
それから撮影スケジュールがバレエと全く違う点も難しかったです。バレエシーンも結構あったのですが、普段の身体の作り方・過程と違って大変でしたね。ウォームアップの時間はあるのですが、そこからすぐに普段の稽古では最後の方に踊るようなクライマックスの大きなジャンプ・シーンがあったり、急にリフトをしなければいけなかったりしました。
あと台詞を話すことに慣れていないので初めは緊張しました。声を出して何度も練習をして撮影に臨んだのですが、いざ現場でカメラリハーサルを重ねていると、自分でも何を言ってるのか分からなくなるときもありましたね。
――放送されたものご覧になり、どのような手ごたえを感じましたか?
もっと積極的に自由なお芝居ができたのかもしれないといった反省点もありましたが、バレエだけでは得られない経験ができたことが自信につながりました。視聴者の方からは「バレエシーンが素晴らしい!」「バレエダンサー独特の美しい雰囲気や立ち姿がある」といっていただき、バレエを真剣にやってきてよかったなと実感しています。『ビリー・エリオット』のときも感じましたが、バレエが自分の一番の武器・強みになるんだなと改めて思いました。
■『白鳥の湖』でロットバルト役に初挑戦!
熊川哲也 Kバレエカンパニー Spring 2021『白鳥の湖』メインビジュアル(C)Yumiko Inoue
――2021年3月のKバレエカンパニー『白鳥の湖』でロットバルトを踊ります。これまでに王子ジークフリードをはじめスペイン、パ・ド・トロワといった役柄を踊ってきましたが、今回はなんと悪の化身です。配役を知ったとき、どう思いましたか?
うれしくて、「来たな!」と思いました。これまではジークフリードを踊らせていただいてきたので、今回は新たな挑戦です。
――2003年初演の熊川哲也版『白鳥の湖』のロットバルトは物語の最初から大きな存在感を発揮します。ロットバルトという役をどのように捉えていますか?
フクロウの姿をしているシーンや人間に戻ったりする場面もありますし、見せ場もあって、いろいろな要素を見せられます。第2幕冒頭でソロを踊るところはとてもカッコいいですよね。あのシーンを広い舞台でたったひとり踊るのは、さぞかし気持ちいいだろうと今から楽しみです。実際にリハ―サルで音楽を聴くだけでもの凄く感じるものがありますし、踊ることができてうれしいです。
『白鳥の湖』舞台写真(撮影=言美歩)
――『白鳥の湖』だけでなく『くるみ割り人形』『シンデレラ』でも王子役を踊っていますが、2020年10月の『海賊』で奴隷商人ランケデム役を任されるなど、熊川芸術監督が求める役の振れ幅は大きいですね。どのように受け止めていますか?
ポジティブに捉えています。僕自身「やりたい!」という気持ちが強いので。熊川ディレクターはどんどん自分の中にあるものを引き出そうとしてくださる。Kバレエに在籍して7年経ちますが、いまだに新しい役・新しい経験ができるのは新鮮で、まだまだ成長できるという実感もあります。王子役もやらせていただいていますが、自分の幅を広げるためにいろいろな役をやらせてもらえるのはうれしいです。
――熊川版『白鳥の湖』を何度も踊ってきた立場から感じる魅力を教えてください。
振付が細かく大雑把なところがありません。大きな演出は変わりませんが、熊川ディレクターは公演ごとに細かいところを妥協せず少しずつ改変しています。ダンサーがより動き易く、より良く見えるように変わっているんです。熊川版『白鳥の湖』は踊り手からすると音楽に凄くなじむというか、自分の身体に入ってくるのが早い作品ですね。
――熊川芸術監督の振付は音楽とフィットしていて、客席で観ている側も気持ちよく感じます。
踊っていても気持ちいいですが、音に対して振付が詰まっているので難易度が高いですし、リハーサルで演出や振付を変えることになったときのスピード感も凄いです。でも、そこでダンサーたちの緊張感が高まり、リハーサルの雰囲気も締まるのでその過程は楽しくもあります。

栗山廉(撮影=桜井いづみ)

■ダンサーとしてのレベルを高めつつ、新たなチャレンジを
――Kバレエカンパニーが『白鳥の湖』を上演するのはコロナ禍の直前2020年1月~2月以来です。「カンパニー~逆転のスワン~」放映直後でもありますね。抱負をお聞かせください。
『白鳥の湖』はダンサーの皆が愛している作品ですし、ご覧になりたいお客様も多いと思うので、素晴らしいタイミングでの上演になったと思います。新たにロットバルト役を踊りますが、僕に対するイメージを余り固めずに観ていただければと思いますね。主役は王子ですが、やっている本人としてはロットバルトが主役というつもりで、しっかりと役を生きていきたいです。ロットバルトにも感情や人生があるので、そこをお見せしたい。変に目立とうというのではなく、しっかりと役に入り込んで生きると見えてくるものがあると思うので、そこをご覧いただきたいです。
――今後の活動の目標・展望をお聞かせください。
バレエを軸にしていきたいということは変わりません。ダンサーとしてのレベルをどんどん高めていきたいですね。カンパニーの中での立ち位置に関してもそうです。そのためには一つひとつの舞台で結果を残していかないと。年齢を重ね、いつまで現役で踊れるのか……といった考えがよぎることもありますが、今はまだまだもっと伸びていかなければいけないときだと思っています。バリバリ踊りまくりたいです。そして踊りまくった上で、可能性があるならばとにかく何でもやってみたいんです。映像などのオファーをいただければ、ぜひやってみたいですね。
栗山廉(撮影=桜井いづみ)
取材・文=高橋森彦

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