日本初の公共ホール専属声楽家集団 
びわ湖ホール声楽アンサンブルの魅力
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コロナの影響で日本中から、ナマの音楽が消えた。
そして数か月の自粛期間を経て、厳しいガイダンスに沿った感染防止策を講じた上で、そろーりと音楽が戻って来た。
ナマの音楽の素晴らしさを実感したのが、7月に訪れたびわ湖ホールで行われていた、『沼尻竜典 日本合唱音楽セレクション』という名の、びわ湖ホール声楽アンサンブルによるコンサートだった。
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 
十分過ぎるほどのディスタンスを取って歌う、日本の合唱音楽の名作に心が熱くなったが、本編最後の曲「怪獣のバラード」を、アンコールでもう一度、今度は歌手たちが喜びを爆発させて、踊りながら歌っている姿を見て、涙が溢れた。
この、びわ湖ホール声楽アンサンブルという団体、随分と上手い合唱団だなぁと思い、いろいろ調べて行くと、合唱団ではなく、びわ湖ホール専属の声楽家集団で、全国から厳しいオーディションで選ばれた声楽家によって構成されていることが分かった。そして、びわ湖ホールが制作するクオリティの高いオペラの数々は、この団体の存在とは無縁では無いことも判明。なるほど、上手いはずだ。
びわこホール芸術監督 沼尻竜典は「びわ湖ホール声楽アンサンブルは、びわ湖ホールに命を吹き込む歌手たちの集まりです。たくさんの経験を積める場として、またその経験自体が仕事であり、生活として成り立つ場として、機能しています」と語る。
びわ湖ホール芸術監督 沼尻竜典   (c)RYOICHI ARATANI
日本初の公共ホール専属声楽家集団「びわ湖ホール声楽アンサンブル」とはいかなる集団で、どのようなシステムで機能しているのだろうか。それを知るには、そのメンバーと話すことが一番手っ取り早い。びわ湖ホールの広報に問い合わせて、メンバーと話す機会をセッティングしていただいた。
「あの日の演奏会は、私たちにとっても特別でした。お客様の拍手に、私たちが元気を貰いました!」 後日、あのコンサートのことを振り返って語る、びわ湖ホール声楽アンサンブルのソプラノ船越亜弥。しかし彼女は取材当時、別の問題に直面していた。コロナ明け最初のオペラとなる、モーツァルトの歌劇『魔笛』のパミーナ役に選ばれたのはいいが、声域的にもぎりぎりで不安も多く、断ろうにも、演出家や指揮者が「大丈夫、出来る」の一点張りで、「一緒に頑張ろう!」と降ろさせてくれないのだと(笑)。「かくなる上は、客観的な視点が自分の可能性を広げてくれる、と信じて最後までやり切りたい!」と語っていた彼女。
船越亜弥(ソプラノ)
コトの顛末を知りたいと思い、足を運んだびわ湖ホールの歌劇『魔笛』で、船越亜弥が演じるパミーナの歌う立派な歌唱に感動した。そして同時に、びわ湖ホールの作るオペラのクオリティと、出演する声楽アンサンブルのスキルの高さに驚いた。
―― 船越さん、お疲れさまでした。パミーナ、拝見しました。素晴らしかったですよ。随分、苦労されていましたが、終わってみて如何でしたか?
船越亜弥 毎日悩み続けて必死でしたが、終わってみるとあっという間だったように思います。周囲は頑張ったねって言ってくださいますし、中村敬一先生もパミーナに見えたよって(笑)。しかし、もう『魔笛』のことは忘れました。今は、『ローエングリン』で頭の中はいっぱいです。この、次から次への迅速な展開こそが、びわ湖ホール声楽アンサンブルの魅力だと思います。
船越亜弥(ソプラノ)     (c)H.isojima
―― 自分では選ばないパミーナ役を、周囲の説得で何とか続けていると仰っていましたね。客観的な視点が可能性を広げてくれるはずだとも言われていました。
船越 確かにこんな引き出しもあるんだなぁという事は気付かせてもらいましたし、達成感もありました。でも、正直しんどかったです(笑)。
オペラへの招待 歌劇「魔笛」 船越亜弥(パミーナ)と3人の童子
―― 可愛いパミーナ、しかし、しっかりとした歌唱に好感が持てました。ひとつ、壁を突き破られましたね。お疲れさまでした。脇坂さんは、念願のびわ湖声楽アンサンブルに入団されました。何回目のチャレンジでの入団ですか。
脇坂法子 4回目で合格しました。もちろん、全国から受験生は集まりますが、やはり滋賀県民(長浜市出身)としては、特別なポジションです。本当に嬉しかったです。
脇坂法子(ソプラノ)     (c)H.isojima
―― それは凄い!憧れのびわ湖ホール声楽アンサンブル、入団してみていかがですか。
脇坂 何が何でも合格するつもりで、1年がかりで周囲の環境を整えて臨みました。おかげさまで入団すると、全てが変わりました。これまでは、アルバイトをして、お金を払って学んでいたのが、いろいろな事を教わりながら、非常勤嘱託員として報酬を頂ける。ありがたいことです。そして何より、昨年は私の友人たちもコロナでほとんど活動出来ていない人が多いなか、合唱も宗教曲もオペラもできたことに感謝しています。
―― お披露目となった、自粛明けの「日本合唱音楽セレクション」の「怪獣のバラード」では、ソロもありました。その後、バッハの「マタイ受難曲」をやって「ジルヴェスター・コンサート」を経て、モーツァルトの「魔笛」ですか。そして、「魔笛」ではいきなりの“夜の女王”役。
脇坂 私がやらせて頂いて良い役なのか、戸惑いました。確かに高い声は出る方ですが、声質的にどうなのかと。実際、それまで避けて来た役でしたし、アリアも歌った事はありませんでした。急遽、勧められるままにオーディションを受けて決まったのですが、中村敬一先生や阪哲朗マエストロにご指導を頂きながらやりました。
脇坂法子(ソプラノ)
―― その”夜の女王”、ダブルキャストのお相手が、森谷真理さん!メトロポリタン歌劇場をはじめ、欧米でも活躍をされた、“夜の女王”のスペシャリストのような方です。緊張されましたか。
脇坂 あまり考えないようにしました。稽古が始まっても暫くの間は、森谷さんは持ち役なので来られず、ずっと一人で孤独でした。この役、超絶技巧はもちろんですが、年齢的なことや所作など役作りも大変で…。森谷さんが来られるようになると、本当に気さくで素敵な方で、「この苦労、やった人にしか判らないわよね!」などと話しながら、いろんなことを教えていただきました。
オペラへの招待 歌劇「魔笛」 脇坂法子(夜の女王) 
―― そう言えば、船越さんも昨年のJ.シュトラウス2世『こうもり』のロザリンデ役では、ダブルキャストの相手が森谷さんだったんですよね。
船越 はい。脇坂さんには「気持ち、よく分かるよ。でも、逆にチャンスだと思って、森谷さんからいっぱい吸収して!」って伝えていました。森谷さんは本当に素敵な方です。壁を作らず、何でも気さくに話してくださるので、私はたいへん勉強になりました。今回、脇坂さんとは同じ組で、親子役(笑)。まるで役とは逆のような二人で一緒に練習して、二人で悩んで、何とか最後までやり切りました。
オペラへの招待 歌劇「魔笛」 船越亜弥(パミーナ)と脇坂法子(夜の女王)
―― そんな船越先輩が3月で団を卒業されます。寂しくなりますね。
脇坂 5年在籍されて、団をとてもフレンドリーにまとめて来られました。また、船越さんの課題に対しての取り組み方を模範にしてきた人も、団にはたくさんおられます。卒業後のことは心配ですが、『ローエングリン』もありますし、そのあとには定期公演もあります。まだまだお世話になると思いますので、今はそこまで考えが及んでいないのが本当のところです。
―― まずは『ローエングリン』ですね。
船越 私と脇坂さんは小姓役で出演させていただきますし、男声の4人もブラバントの貴族として出演します。圧倒的に合唱の比重が大きなオペラですが、コロナの事もあって少数で臨みます。びわ湖ホール声楽アンサンブルの専属メンバーに加え、OBの方々の活躍にもご声援をお願いします。
―― 船越さん、脇坂さん、ありがとうございました。『ローエングリン』の客席から応援しています。
船越・脇坂 ありがとうございます。頑張ります!
「魔笛」では親子役を演じた二人 船越亜弥(右)、脇坂法子     (c)H.isojima
(そして入れ替わりに、バスの平欣史)
―― パパゲーノ、お疲れさまでした。ライブ配信で拝見しましたが、大健闘でした。
平欣史 ありがとうございました。ダブルキャストのパパゲーノが大先輩のOB迎肇聡さんという事で、嬉しさの反面、プレッシャーも相当ありました。歌も演技も素晴らしい尊敬する先輩と同じ役をさせて頂けて、たいへん勉強になりました。
平欣史(バス)     (c)H.isojima
―― 平さんはびわ湖ホール声楽アンサンブルに入団されたのが昨年の4月とお聞きしました。コロナ明け、最初のオペラで大抜擢でしたね。簡単にこれまでの音楽経験と、どうしてびわ湖声楽アンサンブルに入団されたのかを聞かせてください。
平 小学校の頃は地元和歌山の児童合唱団に入っていましたが、中学、高校の時は、陸上や水泳などスポーツをメインでやっていました。メインでというのは、片手間で合唱部の助っ人なんかもやっていましたので。高校2年から本格的に合唱に専念したのですが、高3の夏前に音楽をもっときちんとやりたいと思い、大阪芸術大学に入学。大学院まで進み、歌を中心にやってきました。
―― びわ湖ホール声楽アンサンブルを受験しようと思われたのは何故ですか。
平 もちろん以前から注目していましたが、将来のコトを考えるタイミングで、オペラ、合唱曲、宗教曲とトータルに経験を積むには、びわ湖ホール声楽アンサンブルに進むしかないと思いました。大学の先輩が入っておられて、色々な話を伺っていましたし、何と言っても日本で唯一、公共ホールの専属声楽家集団。憧れますよ。本当にラッキーなことに一発合格を果たせ、喜び勇んで入ってみたところ、いきなりプロのレベルに驚き、戸惑いました。「ここまで出来て当然」の、「ここまで」の位置がものすごく高い。どうやって周囲の声と自分の声をなじませるか、自分に足らない部分がハッキリと見えました。
平欣史(バス)
(話をしている間に、OBの清水徹太郎も到着)
―― 清水さん、先日の『魔笛』、お疲れさまでした。清水さんの出演されていた組は、ホールで拝見しました。タミーノ役、素晴らしかったです。そして、その前、11月の『マタイ受難曲』のエヴァンゲリストには感動しました。
清水徹太郎 色々見て頂いているのですね。ありがとうございます。
本山秀毅×びわ湖ホール声楽アンサンブル「マタイ受難曲」(2020.11.14)
―― 今回、びわ湖ホール声楽アンサンブルの取材をさせて頂いています。清水さんの入団当時のお話を聞かせてください。
清水 私が専属1年目の時に、ちょうど沼尻さんが芸術監督に就任されました。それまでの声楽アンサンブルは、文字通りアンサンブル、大ホールのオペラでは合唱のメンバーとして参加していましたが、沼尻さんは声楽アンサンブルのメンバーも大ホールのオペラのソリストとして使っていこうという方針に変えて頂きました。沼尻さんがよく仰る「舞台に立たなきゃ始まらない」を地で行くような方針変更です。メンバーが声楽家として成長していけるように、あらゆるサポートを受けられるように配慮されたシステムは素晴らしいですし、本当に有難いことです。
清水徹太郎(テノール)     (c)H.isojima
―― 先ほど平さんも、声楽アンサンブルのOBの存在について話をされていました。清水さんが専属団員だった頃、やはりOBの方との関係などで刺激を受けられましたか。
清水 声楽アンサンブルのOB、OGは、ソロ登録メンバーとなります。びわ湖ホールの自主事業に必要に応じて客演として呼ばれる制度ですが、専属メンバーにとっては常にOBや客演の方と接している状態で、たいへん刺激を受けます。私が当時を振り返っても、やはりそうでした。コロナで活動は随分制限されましたが、それでも私は今シーズン、コロナ明け最初の公演『沼尻竜典 日本合唱音楽セレクション』『マタイ受難曲』『ジルヴェスター・コンサート』『魔笛』と、びわ湖ホールのステージに、声楽アンサンブルの専属メンバーと一緒に立っています。
オペラへの招待 歌劇「魔笛」清水徹太郎(タミーノ)
びわ湖ホールジルヴェスター・コンサート2020ー2021(2020.12.31) 撮影:栗山主悦
―― 平さんからすると、清水さんとこれほど顔を合わすことについて、どう思われていますか。
平 清水さんの舞台はずっと見て来ました。まだ入って1年目ですので、話をする時は緊張しますが、随分気さくに話をしてくださいます。最初のうちは、「あ、清水さんだ!」という感じでしたが、同じ公演に乗せてもらい、合唱やオペラの機会が増える事で、聞いてみたい事が増えていき、少しずつプライベートな話に変わっていく。あの清水さんが、こんなことを考えておられるんだと判って来て、徐々に楽しく話が出来るようになって来ました。これも声楽アンサンブルに入ったからこそですよね。
オペラへの招待 歌劇「魔笛」 平欣史(パパゲーノ)と熊谷綾乃(パパゲーナ)
清水 それは私も同じです。稽古場であの森谷真理さんが、普通に話しかけて来られて、初めの頃はびっくりしましたから。
―― なるほど、それが福井敬さんだったりもする訳ですね。福井敬さんというと、もちろん現在稽古中のびわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー作曲 歌劇「ローエングリン」ですが、その後には「びわ湖ホール四大テノール・フォーエバー」というコンサートにゲスト出演されます。どうしても二塚直紀さんの件(昨年4月に心筋梗塞により急逝)に触れないわけには参りません。
清水 二塚さんは先輩ですが、当時の声楽アンサンブルは、最長8年間所属できた時代でした。5年先に入っておられて、最後の3年間を一緒に過ごしました。私がいた3年間、テナーは全く同じ不動のメンバーでした。そのメンバーが「びわ湖ホール四大テノール」です。
びわ湖ホール四大テノール(山本康寛、清水徹太郎、二塚直紀、竹内直紀、左から)
―― そうだったんですか。声の質や、性格などを考えて、OB、専属メンバーの中から選ばれた4人のメンバーだと思っていました。
清水 私と山本康寛さんは同期ですが、竹内直紀さんも二塚直紀さんも入った時期はそれぞれ別です。声のタイプも全く違うメンバーですし、得意な分野もまちまちで、コンサートの面白い内容を考えるのはリーダーの竹内さん。私は、以前はコンサートで歌う曲を作ったり、編曲なんかもやっていましたが、最近はピアニストで作曲も出来る植松さやかさんにお任せしている状況です。テノールの明るい響きで「日本を元気に!」というスローガンの下、一緒に歌い、学んできた仲間が抜けた穴は、正直まだ癒えません。自分たちだけでは難しかったと思いますが、全員が尊敬する福井敬さんにご出演頂くことで、このような形でコンサートを行う事にしました。このことで、少しは、前に進めるようになればと思っています。
びわ湖ホール四大テノール(山本康寛、清水徹太郎、二塚直紀、竹内直紀、左から)
―― 先日、山本康寛さんと話す機会があったのですが、こんなことを言われていました。「今回、『魔笛』のタミーノ役を自分が演じる事で、専属メンバーの役がひとつ減る。本番を経験する事がどれだけ大切かを知っているだけに、その機会を奪っているという意識も、正直有る。複雑な思いだが、逆に専属メンバーから見られていると思うと、下手な演技は出来ない。そういう刺激は互いに大切だと思う」それを聞いて、なるほどなぁと感心しました。そのような意識、清水さんもお持ちでしょうか。
清水 私の考え方は少し違います。私は、ご縁があってその役を頂いたのであれば、精一杯務めるだけだと思っています。自分よりふさわしい人が居れば、その方がやればいいですし、役のオーディションもあります。私は、そういう事って、ご縁のモノだと思っています。ご縁があってお話を頂けるものは何でも喜んでやろうと思っています。申し訳ない気持ちも、悔しい、残念だという気持ちも、持つ必要は無いように思います。この辺りの考え方は、人によって全然違うと思います。それに『ローエングリン』は合唱で出演します。合唱で声をかけて頂いたからですが、周囲の方の中には、清水さんがキャストではなく、合唱で出演するなんて…という声も有りました。言われている意味も、何となく分かります。しかし、今回は私に合唱をしっかりやって欲しい!という事なんだな。と受け取り、有難くやらせて頂こうと思って出演させて頂いています。
―― なるほど。本当に人それぞれですね。しかし、ここに集まっておられる皆さんは基本的なポテンシャルが高く、どの様な受け取り方でも、それぞれに自分の糧にし、全てをプラスに持って行かれるのが凄いと思います。平さんは、こんな話を聞いていていかがですか。
平 いやぁ、凄いと思います。清水さんは気さくな方で、普通に会話はして頂いていますが、もちろんこんな話は聞けないので、勉強になります。
―― こんな経験も、自分にプラスに変えていってくださいね(笑)。清水さんはここまでやって来られて、自分自身にどんな評価をされていますか。予定通り、順調に来ている感じですか?あと、目標にしている歌手などおられますか。
清水 現在41歳ですが、この歳でこうなっていたいなぁという意味では、思っていた以上に順調に来ていますし、皆さんに支えて頂き、ここまで続けて来れたことに感謝しています。この先も、このペースで成長していければいいのですが…。目標ですか、きっとこの先いろんな事があるかもしれませんが、自分の楽器(身体)と向き合って、乗り越えられた5年後の自分が目標ですね。
清水徹太郎(テノール)
―― ありがとうございます。清水さん、平さん、『ローエングリン』頑張ってくださいね。では最後に、2ショットの写真を撮らせて下さい。
平 わあ、この2ショット初めてです。緊張するなぁ。
平欣史(右)と清水徹太郎     (c)H.isojima
―― びわ湖ホール声楽アンサンブルの専属メンバー3名、そしてソロ登録メンバーの清水徹太郎さんにお話をお聞きしましたが、少し補足的にびわ湖ホール広報の井上美佳子さんにもお聞きします。びわ湖ホール声楽アンサンブルは、ホールにとってどのような存在ですか。
井上美佳子 びわ湖ホール創造活動の中心的な存在です。声楽アンサンブルの活動がホールの顔だと思っていますので、多くの方にその活動を知っていただけるよう、広報に努めています。例えばロビーには彼らの写真を並べていますし、ファンの皆さんはこの時期になると、新しいメンバーはどんな人なのか、気にしていただいています。コロナの事もあり2020年には出来なかったのですが、七夕やクリスマスには、ロビーコンサートなどを開催し、声楽アンサンブルと身近に接していただく機会も作っています。メンバーも大津市内に住んでいる者も多く、町でもファンの方に、声をかけられたりするようですよ。
学校巡回公演 (東近江市立能登川東小学校)
学校鑑賞事業「びわ湖ホール 音楽会へ出かけよう!」
松井和彦作曲ファンタジックオペラ「泣いた赤鬼」(過去の公演より)
―― 四大テノールは、そんな中から誕生した人気のユニット。それだけに二塚直紀さんの件は残念ですが、3月に行われる『びわ湖ホール四大テノール フォーエバー』には、テノールの福井敬さんもご出演で、楽しみですね。
井上 たくさんの笑顔と感動を与えてくれた「四大テノール」。3月28日もきっと楽しいコンサートになると思います。今までの公演を振り返り、ロビーではパネル展示も行います。
IL DEVU&びわ湖ホール四大テノール新春スペシャルコンサート(2020.1.5) 撮影:栗山主悦
―― びわ湖ホールと言えば、やはりオペラですが、年間通していくつかの取り組みがあると聞いています。「プロデュースオペラ」と「沼尻竜典オペラセレクション」、そして「オペラへの招待」がそうですね。
井上 「プロデュースオペラ」がいちばん規模の大きなオペラで、昨年3月、コロナの影響で中止になりかかったワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』の最終章『神々の黄昏』を、劇場側の判断により、無観客上演という形で行い、その模様を配信したところ、約30か国、延べ41万人が視聴しました。
びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー「神々の黄昏」無観客上演/無料ライブストリーミング配信(3月7日)
―― コロナ禍における「無観客動画配信」のモデルケースとして、大きな話題なりましたね。
井上 その試みが評価され、第68回菊池寛賞を受賞しました。そのプロデュースオペラが、今年は先ほどから話に出ているワーグナーの歌劇『ローエングリン』です。これは毎年3月に行われており、来シーズンはワーグナーの『パルジファル』に決まっています。
そして、沼尻竜典オペラセレクションは、新国立劇場との提携公演としてビゼーの歌劇『カルメン』を7月、8月に実施。オペラへの招待は、プッチーニ作曲の歌劇『つばめ』を10月に、沼尻芸術監督作曲の歌劇『竹取物語』をセミステージ形式で、1月に実施。オペラへの招待につきましては、声楽アンサンブルのメンバーが主要なキャストを務めます。
―― びわ湖ホール制作のオペラ全てにかかわれる声楽アンサンブルは、上記の公演以外にも、「定期公演」や「近江の春びわ湖クラシック音楽祭」や「ジルヴェスター・コンサート」、宗教音楽や合唱を歌ったり、県内の子どもたちへ、音楽の普及を目的に学校巡回公演などの出演もあり、とても充実した活動です。メンバーの皆さんは、文字通り音楽漬けの日々ですね。
第69回定期公演 合唱劇「かなしみはちからに、~宮澤賢治未来への手紙~(2019.9.14)
びわ湖ホール声楽アンサンブル第71回定期公演(2020.9.12)
「近江の春びわ湖クラシック音楽祭2019」かがり火コンサート モーツァルト「レクイエム」(2019.4.28)
びわ湖ホールジルヴェスター・コンサート2020ー2021(2020.12.31) 撮影:栗山主悦
井上 はい。2週間後に開催されるワーグナーの歌劇『ローエングリン』から定期公演までメンバーは大忙しで、定期公演終了後、ソプラノ船越亜弥、テノール蔦谷明夫、坂東達也が卒業し、4月から新しくソプラノ山岸裕梨、アルト坂田日生、テノール有本康人を迎えます。
―― 厳しい審査を経て、また新人が入団されるのですね。これからもびわ湖ホール声楽アンサンブルは素晴らしいパフォーマンスを発表し続け、歌手を志す者にとって最高のステイタスであり続けて頂きたいです。益々のご発展を祈っています。
井上 ありがとうございます。引き続き、びわ湖ホール声楽アンサンブルをよろしくお願い申し上げます。
びわ湖ホール声楽アンサンブルをよろしくお願いいたします!
取材・文=磯島浩彰

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