アジアの秀逸な戯曲を翻訳・上演する
演劇ユニット亜細亜の骨が挑む男女7
人台北ストーリー『また今度!』配信
限定で上演

アジアの秀逸な戯曲を翻訳・上演する演劇ユニット亜細亜の骨が、トライアル企画公演(asianrib plus)として、台湾の新進気鋭の劇作家・陳弘洋(チェン・ホンヤン)の話題作、2018年台湾・台新芸術賞ノミネートの『また今度!』を2021年3月30日(火)~31日(水)配信限定で上演する。
本作は、台北の食堂に集まった男女7人の物語で、それぞれの事情が複雑に重なるブラックコメディー。台湾社会の微妙な歪みが登場人物を通して垣間見える。他のアジア諸国に先駆け同性婚が合法化された社会では、様々なセクシャリティが「日常」の中でドラマを生み出している。
自由な選択が広がったとはいえ、無意識の偏見や思い込み、不安や孤独と闘っている人も少なくなく、多様な価値観の中で生きる現代人の切なさを、若手作家独自の感性でユーモラスに描く。出演者はいずれも小劇場界のツワモノ・ベテラン役者ばかり。不条理な笑いとその奥に潜む深刻な社会問題を、軽快に自由にそしてチャーミングに演じる。
また今回は、劇場に集まることが難しい今の状況をチャンスと捉え、新しい生活様式の中で、演劇の一つの試みとして配信限定公演を実施。ソーシャルディスタンスを超えて、観る人ひとり一人の心を揺さぶる舞台を目指す。
このたび稽古場のレポートが到着したので、紹介しよう。

アジアの秀逸な戯曲を翻訳・上演する演劇ユニット“亜細亜の骨”によるトライアル企画公演(asianribplus)として3月30日(火)~31日(水)に配信上演される舞台『また今度!』。
台湾で様々な演劇賞を受賞している新進気鋭の劇作家・陳弘洋(チェン・ホンヤン)が書いた今作は2018年台湾・台新
芸術賞にノミネートされた話題作。2 月中旬、小山萌子、岩﨑大、奥田努、小野健太郎、竹田茂生ら実力派キャストが揃った稽古場に足を運んだ。
作品の舞台は現代の台湾。思い出の食堂を訪れる竹田茂生演じる高校教師のチュンユエン。彼はロマンティックな計画のために友人たちを呼び出していた。ひとりふたりとやってくる訳アリの友人たちと、そこへ現れる想定外のゲストたち。次々と問題が巻き起こり、食堂はてんやわんやの大騒ぎ。それぞれの思いが錯綜し、事態は思わぬ展開へ。果たして、チュンユエンが選んだ結末とは…
稽古場を訪れたのは、リモートでの顔合わせ・本読みを経て、初めて稽古場に一同が顔を合わせた稽古初日。はじめましての挨拶もそこそこに、「まずはやってみましょう」という演出家の言葉で、いきなり立ち、台本を持ちながらも最後まで通してみるというチャンジングな稽古が始まった。
元夫婦、同級生の友人、職場の同僚、恋人、一夜限りの愛人…様々な人間関係が複雑に交差する一夜。それぞれの関係性、お互いの立ち位置を踏まえた上でのミザンスと台詞のキャッチボール。立ち上がったり座ったり、時に歩き出したり叫んだり。それぞれが気持ちいい距離と導線を何度も試しながら、時に大胆に時に注意深く役の真髄を探す。その丁寧で繊細な作業が、登場人物たちの感情の機微を豊かに描き出す。
これは様々な現場を経験し、豊かなアイデアと適応能力を持ち合わせているツワモノ俳優ばかりのカンパニーだからこそできる高度な稽古。チュンユエンの元妻で美人だけどサバサバしたどこか男らしいホエピン(小山萌子)、そのホエピンの同僚で優雅な立ち振る舞いながらどこかミステリアスなシャオシュー(岩﨑大)、野性的で少々暴力的な色気を醸し出すユーハオ(奥田努)、登場した瞬間に何故か笑いを誘う摩訶不思議な魅力のヨンチン(小野健太郎)。主人公のチュンユエン(竹田茂生)の元にやってくる訳アリの友人たちのひとり一人が超絶個性的で魅力的だ。
劇中、思わず笑ってしまう茶番や不条理な笑いが盛り沢山で、ドタバタブラックコメディというジャンルとして括られるかもしれない芝居の中で、さりげなく、時に零れ落ちるように語られる登場人物たちの心情。「今まで生きて来て色んなことが起こったわ。最初は辛かったけど、その後は、人様がどう思おうと私とは関係ないって。アンタみたいなホモフォビアをどうすることもできないしね」「俺……ずっと自分で認められなかったんだ……自分が寂しいことを……毎日家に帰って、一人で酒飲んで、で……世界はこんなに大きいのに、俺はなんで何者でもないんだろうって」そして、劇中でヨンチンが歌う1992 年に中華圏全域で大ヒットしたというメロウな名曲『愛の代価』が切なく胸を打つ。
「走吧、走吧,人生難免經歷苦痛掙扎。」
―歩いて行きましょう。人は自分から成⾧するもの。歩いて行きましょう。苦しみの無い人生なんてな
い。―
くだらない茶番や不条理な笑いの裏側に見え隠れする深刻な社会問題。無意識の偏見や差別意識、根強い思い込みや硬直した世界。登場人物たちの癒えることのない深い傷。自由で多様な価値観の中で生きているように見える私たちの中にある深い哀しみと絶望。しかし、私たちは生きなければいけない。この荒唐無稽な世界の中で。歩いていかなければいけない。苦しみのない人生なんてどこにもないのだから。血を流しながら、傷つけ合いながら、それでも私たちは生きていかなければいけない。もうどこにも行けないのだから……
実力派の俳優陣の卓越した演技とブラックユーモア。現代台湾で交わされる男女7 人の一夜の物語が、海を越えて、今の日本で暮らす私たち日本人の心をも揺らす。新型コロナウィルスの恐怖に襲われている現在の社会。でも、いつの時代にも人は恐れ、悩み、考え、絶望し、微かな希望にすがって生きていく。情けなくて切ない生き物。そんな弱い人間は一人では生きていけない。笑いながら、泣きながら、明日も私たちは誰かと生きていくのだ。この荒唐無稽な世界を。
劇中で交わされる「また今度!」という言葉が見ている者を救うだろう。また今度会える世界がこれからも続くことを願わずにはいられない。企画者の揖斐圭子が “演劇を止めない”という思いで始めたこの配信公演。明日を信じて「また今度!」と交わされる言葉が、演劇の明日をも明るく照らし出す。上演がいまから楽しみでならない。
『また今度!』は、2021 年3 月30 日(火)と31 日(水)に配信限定公演として、ライブ生配信と1週間のアーカイブ配信を予定。詳細は公演特設サイト参照。
取材・文/麻場優美

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