NHK「アナザーストーリーズ 運命の分
岐点」で唐十郎の紅テントにフォーカ

NHK BSプレミアムの「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」において、2021年2月16日(火)21:00より、「越境する紅テント〜唐十郎の大冒険〜」が放送される。「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」は、「あなたが気になる“あの事件”の裏には、かならずもう一つの物語がある」を掲げ、事件の“アナザーストーリー”に迫る、マルチアングルドキュメンタリー番組だ。
既成の劇場に頼らず、紅テントで神出鬼没に演劇空間を作る唐の芝居は、国境や時空を軽やかに越えていく。 (写真提供:井出情児)
■日常に突如出現した異空間の記録
現在は劇団唐組を率いる座長であり、現代日本演劇に大きな影響を与え続けてきた劇作家・演出家にして、小説家・俳優でもある唐十郎(1940~)。彼は、1963年に笹原茂峻らと共に劇団「シチュエーションの会」を旗揚げし、翌1964年「状況劇場」に改名、そして1967年8月には、その後の劇団の代名詞となる「紅テント」を新宿・花園神社境内に建て『腰巻お仙 -義理人情いろはにほへと篇』を上演。このテント興行は、世間を仰天させ、一躍アングラ演劇の旗手、サブカルの旗手、として大いにもてはやされた。
状況劇場を旗揚げした頃の唐十郎。さまざまな才能を引き寄せ、唐は時代の寵児(ちょうじ)になっていく。 (写真提供:井出情児)
以降も唐は劇場に頼らず、神社の境内や河原にテントを張り、全国各地で芝居を上演。それは日常に突如出現した異空間だった。まだ独裁政権下だった韓国や中東パレスチナの難民キャンプでも芝居を敢行、その天衣無縫な活躍ぶりは時空を超えて人々の記憶に刻まれた。故・中村勘三郎も衝撃を受け、これこそ歌舞伎の原点だと「平成中村座」を旗揚げした。
歌舞伎の中村勘三郎は、紅テントの芝居を観て「これが歌舞伎の原点だ」と衝撃を受ける。それが平成中村座を旗揚げする原点となった。 (写真提供:NHK)
今回の番組では、そんな「紅テント」に焦点を当て、時代の常識に抗い演じることに命を賭けた男の冒険が貴重な映像と共に克明に紹介される。状況劇場出身俳優の小林薫や、故・勘三郎の長男で歌舞伎俳優の中村勘九郎も出演する。司会は松嶋菜々子、語りは濱田岳。現代日本演劇ファンにとって、決して見逃すべからざる番組といえるだろう。
状況劇場出身の俳優・小林薫。表現者として、核になる部分はすべて唐から学んだ」という。 (写真提供:NHK)
■大河ドラマ「黄金の日日」、2021年4月よりアンコール再放送
唐十郎および状況劇場ファンにとって、朗報がもうひとつ。同じNHK BSプレミアムで、2021年4月4日(日)より毎週日曜日、大河ドラマ「黄金の日日」が再放送される。1978年に全51話が放送されたこの番組、主役は、安土桃山時代の貿易商・呂宋助左衛門を演じた松本白鸚(当時=市川染五郎)だが、状況劇場から、故・根津甚八が石川五右衛門役、李麗仙(当時=李礼仙)がお仙役、そして唐十郎が悪徳貿易商の原田喜右衛門役をそれぞれ演じ、伝説的な名場面を多く残した(同じ年の状況劇場『ユニコン物語』に客演した常田富士男も、唐の番頭役として同ドラマに出演していることも印象深い)。当時、圧倒的な人気を誇った状況劇場の一端を垣間見れるという点でも、この再放送は大変貴重だが、もちろん、歌舞伎、新国劇、新劇、宝塚、四季、小劇場など多彩な演劇カテゴリーを出自とする俳優たちが入り乱れて活躍する壮大なドラマを鑑賞することは、池辺晋一郎作曲のテーマ音楽と共に、深い感銘を覚えるに違いない。
状況劇場の公演写真 (写真提供:菱木一美)

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