【INORAN インタビュー】
前作と2枚でひとつの作品として
仕上げたいという気持ちがあった
前作よりもきっちりと
ベッドメイキングした感じかな?
『Libertine Dreams』を自分にとってのブルースアルバムなのかもしれないと評されていましたが、今作を表すと何でしょうか?
ブルースというのは変わらないですね。同じぐらいの時期に作っていて、ふたつでひとつだととらえているから。9月と2月のリリースに引き裂いてしまったのが申し訳ないぐらい(笑)。
“Between The World And Me”の“World”という言葉の示すものとして、INORANさんは何を想定されていますか? 自分以外の全てを世界ととらえるイメージでしょうか?
うん、僕はそうですね。ROLANDくんじゃないけど、“俺か、俺以外か”ですね。
なるほど(笑)。その世界はINORANさんに対してやさしい時もあれば、冷たい時もあるわけですよね?
いや、常にやさしいとは思いますよ? だって生かしてくれてるんだから。
勝手な深読みかもしれませんが、この世界に居心地の悪さを覚えていたり、疎外感を味わっていたりする主人公が描かれているように感じまして。そういう人に寄り添うような温かさを歌詞から感じ取ったのですが、INORANさんご自身は“世界”に対してどう向き合っていらっしゃるでしょうか?
“居心地悪い”っていうのは何なんでしょうね? 訴えなのかな? でも、“居心地悪いって愚痴でしょ?”って。日本の中で本当に居心地が悪い世界なんてあるのかな? ただ、揺れることはあると思うんですよ。その揺れに対して共感する部分は自分にもあるし、それが詞にも今回はすごく出てるとは思う。それは作った時期にもよるしね。詞を書いた頃は新型コロナウイルスの第二波の頃で、なんだか全てが遠くに感じていて。ワクチンも収束もね。全部をコロナに当てはめちゃうのは良くないんだけど、作った時のリアルな感覚としてはそんな感じだったから。
分けては考えられないですよね。
うん。とはいえ、コロナのアルバムでもないんだけど(笑)。『Libertine Dreams』と比べると『Between The World And Me』のほうが、サウンドのアンサンブルと歌詞のシンクロ率が上がったとは思います。それは作っている人たち同士のつながりが深まったのもあると思う。『Libertine Dreams』はサウンドとか曲という土台に、最後の段階で歌詞という布を上からバサッとかけたようなイメージ。だけど、今回はパサッとかけたところを整えて馴染ませたというか。アンサンブルもあとからちょっと足したりしたし。
より丁寧に、曲と詞をしっくりと一体化させる作業ができた?
そうですね。かかっている布に対しての美しさとか、もっと良く見えるように、きれいに感じられるように意識することができた。前作よりもきっちりとベッドメイキングした感じかな? きれいになのか、寝やすいようになのか分からないけど、使う人が気持ち良くなるようにした部分もあるかもしれない。
歌唱についてもうかがいます。ラスト2曲「Leap of Faith」と「You’re Not Alone」の女性とのツインヴォーカルは素晴らしかったです。このアレンジにはどんな意図があったのですか?
歌詞ができた時点で“自分の帯域ではない声がそこにあると、曲としてもっと素晴らしいかな?”と思って歌ってもらいました。薄々はあったんですけど、歌詞ができてはっきりとそう感じたので。
「Leap of Faith」がリード曲ですが、「You’re Not Alone」も甲乙つけがたく素晴らしくて。ラスト2曲の美しさに驚きました。INORANさんとしても会心の出来だったのではないですか?
いつも会心の出来だよ!(笑) やっぱりこういうスローな、メロウな曲を作る時は“これが最後だな”と思って作っていますね。極端な話、自分の葬式でかけてもいいような曲にしたいとは考えてますよね、ラブバラードって。
孤独に寄り添う歌詞がダブルのヴォーカルラインによって具現化されている感じもしました。
そうですね。比較の対象があることでよりそう聴こえるんじゃないかと思ったので、最後の2曲はそうしたかったんです。
「Leap of Faith」の歌詞からは力を与えてくれる前向きなメッセージが伝わってきます。
曲順も知った上で歌詞を書いてもらったので、“こういうエンディングってすごく美しいな”と思うような歌詞になっていますよね。
《信じて跳ぶんだ》という勇気がなかなか出なくて、過去にとらわれたり、周りの声が気になったりして誰しも苦しむわけですよね。
うん。だから、今の時代とのシンクロをすごく強く感じますよね。だって、あの頃には戻らないんだもん。もう前に進むしかない。
今こそ誰かにかけられたい言葉だと感じました。そんな今作のタイトルの“Between The World And Me”は、どの段階で生まれてきたんでしょうか?
『Libertine Dreams』をリリースする前に、次のアルバムタイトルはこれにしようと思っていました。たまたまこのタイトルの本を知る機会があったんですよ。この言葉はものすごく強くて、今の時代に合っていると思って。なので、歌詞も曲タイトルも決まる前に、アルバムはこのタイトルにしようと。
そうだったんですね。表題曲の歌詞には生きることの意味、生きている証拠といった根源的な模索が綴られています。ステイホーム期間中に考えていらっしゃった内容を表すのに相応しいタイトルだったということですかね?
INORANさんの中で、その模索の果てに何か“これだ!”という答えは出ましたか?
「Leap of Faith」の《信じて跳ぶんだ》というところにつながっていくんですかね?