『LOVE PUNCH』から考察する
大塚 愛のナチュラルな表現方法
“好き”をストレートに表現
その仮説は歌詞からも補足することができるように思う。『LOVE PUNCH』収録曲の歌詞はどれこれも分かりやすい。というか、難しさがまるでないと言ってもいい。シングル曲だけに話を絞ろう。
《どれほど 愛しいと思ったんだろう/涙が出るくらい 大切に想いつづけてる/どれほど また逢えると思ったんだろう/桃ノ花ビラ 手のひらから こぼれるたび あなたを感じるの》(M2「桃ノ花ビラ」)。
《笑顔咲ク 君とつながってたい/もしあの向こうに見えるものがあるなら/愛し合う2人 幸せの空/隣どおし あなたとあたし さくらんぼ》(M3「さくらんぼ」)。
《ずっと探してた おっきくて安らげる/愛に包まれてる あなたの腕の中/もっと強く抱きしめて もう離さないで/素直じゃないあたしは どうしようもなく 今 甘えんぼ》(M10「甘えんぼ」)。
必ず“愛”の文字が入っているところに若干戦略的な匂いを感じなくもないし、《愛し合う2人》を《さくらんぼ》に例えてはいるものの、その歌詞には捻った印象がない。要約するまでもないだろうが、その内容はこういうことだ。愛してる。過去も愛してた。そして、これからも愛していく。3曲ともおおよそそうだ。愁いがないとは言わないけれども、“好き”という気持ちをストレートに出しているだけに思える。意識的に出してるのではなく、無意識にあふれて出ているという表現が適切だろうか。この気持ちを表現するにはキャッチーなメロディーが必要なのだろうし、彼女にしてみれば、このあふれんばかりの愛情を歌に乗せるとなると、自然と多くの人たちに届くような分かりやすい旋律、誰にも親しみやすいメロディーが出てくるのでは…と想像した。これは完全に私見であり、その考察がお門違いである可能性も極めて高いのであるが、とりわけ大衆の間で広まっていくヒット曲というものは、斯様にあまり捻らず、素直な気持ちを一点突破で攻めた方が案外すんなりと生まれてくるのでは…と思ったのも偽らざるところだ。
TEXT:帆苅智之